ガラス細工のように繊細・・ヴェルデ | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~
オーレリアン・ヴェルデ ニュイ・サン・ジョルジュ 2004
購入日    2006年10月
開栓日    2010年1月26日
購入先    Alcoholic Armadillo
インポーター ラシーヌ
購入価格   6800円

1日3000kcal摂取しながら、自分は粗食だと言い張る肥満患者から
「どうやったら痩せるのか」
と聞かれても
「食事量を減らすしかない」
という答えしかない。

これと同じように、
1日3000ml飲水しながら、自分は水分を摂っていないと言い張る頻尿患者から
「どうやったら尿回数が減るのか」
と聞かれても
「飲水量を減らすしかない」
という答えしかない。

しかしいずれも所詮言うだけ無駄である。
「食べている覚えはない」「飲んでいる覚えはない」
と言われた上に
「これ以上食事量を減らしたらフラフラになる」
「これ以上水分を減らしたら血液がドロドロになって脳梗塞になる」
と反駁されておしまい。

病院でメスを握っていた頃はある意味楽だった。
元来外科系の気短なキャラクターの人間には、心療内科みたいな診療の毎日はかえって疲れる。


仕事には気短だが、ワインの開栓に関してはそれほどではない。
毎度のことだが、3年以上寝かせておいたワインを今ごろ開栓した。
わたしは早開けが嫌いで、タンニンの芯が残る渋いワインが嫌いで、ついでに濃いワインも
嫌いである。

で、このワイン、それらのわたしが嫌いな要素をまったく持たないワインである。
タンニンはほとんど感じず、ミネラルも穏やか。
果実の酸味は強いが甘さはほとんどなく、透明感があって余韻も長い。

薄絹のようななめらかな舌触り、複雑だが軽やかなボディは、このヴィンテージの特徴
なのかも知れないが、造り手はよくそれを生かしている。
ニュイ・サン・ジョルジュらしさも上手く出ている。

このワインを開栓した翌日はアキュイールに繰り出したので、2日目の姿はよく分からない。
帰宅後深夜に1口だけ飲んでみたが、やや落ちていただけで、キレイな姿は保っていた。

翌々日は大学関連の研究会があり、クルマで出かけて休肝日にしたため酒は口にせず。
火曜日に開栓後、金曜日にエア抜きした残りを口にしてみたら、
見事なほどに香りはゼロになっていて、果実味も消え失せていた。
まあ、これはアタリマエと言えばアタリマエなのだが。

それほど古いブドウの樹からのワインでないのだろうか。
相当繊細で酒質の強いワインではなく、ばっちりのタイミングで開栓できたことを
喜ぶべきかも知れない。
現在丁度飲み頃であるのは確かだが、今後さらに期待できるかというと、ちょっと分からない。

購入時期のせいもあるが、価格は高めである。
しかしこれほどまで徹底した透明感と繊細さの代償には、決して高くないと思う向きも
あるだろう。
間違いなく少数派の飲み手に限られるが。

あと1本あると思うが、もし1年後に開けたら、この繊細さが保たれているという
保証はどこにもない。
ガラス細工のように壊れやすい、ナーバスだが美しいピノ・ノワールであった。