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閉じた眼

40年以上愛好するフィギュアスケートに関する自己流観戦コラムです。
(趣味で集めた情報を提供することがありますが、最新の情報でなかったり正確でないこともあります。あらかじめご了承ください)

2025/2026シーズンのGPシリーズも最終戦となりました。

 

ヨーロッパの試合だとライブ観戦は難しいものがあり、先にスケジュールされていたペアと男子だけ可能な限りライブ、女子とアイスダンスは完全に後追いとなりました。

 

フィンランドというと観戦に行った2017年の世界選手権を思い出しますが、観客席の様子からして会場は違うところで行われているようでした。

 

私のような古狸フィギュア観戦者からすると、「フィギュアスケートってやっぱりヨーロッパのスポーツだよね」と思います。ヨーロッパの中でのドイツより北が本場という気がします。何となくこういう地域のスケーターは、ISUが目まぐるしくルールを変えていく中、スケーターもコーチもそれを第一に演技を組み立てトレーニングしていく中、「フィギュアスケートとはこうだ」という伝統の中から生み出された価値観に従って演技しているような気がするんですが、気のせいでしょうか(今の現役トップスケーターの中でそれを感じるのは、今回は残念ながら棄権してしまったルナ・ヘンドリックスとかそのお兄さんのヨルクとか)。

 

今回の大会で目についたといえば、キスクラ、家のリビングルームのようなソファとテーブルとクッションのセットで、撮影を斜めから撮るというのも変わった演出でした。

 

さて、それでは試合の感想を印象に残った演技です。

 

やしの木ペア

世界選手権メダリストで昨年のファイナル優勝ペアのドイツハーゼ&ボロディン組の圧勝と思われましたが、ショートでデススパイラルが抜ける珍しいミスもあり、僅差で辛くも優勝という形になりました。

 

ショートは、タンゴらしさがカナダ大会よりもあった感じはして、ハーゼのお色気も倍増な感じでプログラム全体としては良くなっている気はしました。フリーもヨーロッパのペアらしい芸術性を感じるプログラムで、ボロディンのジャンプのミスはありましたが、こちらも全体の印象はカナダ大会よりいいかなと思いました。

 

2位となった、アメリカエフィモワ&ミトロファノフ組の演技は、ショートが気迫溢れる演技で印象に残りました。フリー「ある愛の詩」でもほぼノーミスの演技で、一番気をはいた演技をしていたという印象です。

 

アメリカは実力伯仲のペアが多くいて、みんなオリンピック出場2枠を狙っているので、ここでNHK杯5位から巻き返しを図りたかったのかもしれません。

 

そして、日本長岡&森口組は、メダルは逃しましたが、フリーでは何とサイドバイサイドジャンプとリフトでは出場組中トップの成績。すごくないですか?このメンバーの中でトップですよ。

 

NHK杯に続いて、フリーのスロージャンプに課題があるみたいですが、それを克服すればオリンピックでいいところに行けそうに思います。

 

イルカ男子

NHK杯に続いて、日本鍵山優真選手がミスがありつつも優勝。

 

フリーでは、今シーズン初めて鍵山選手らしいジャンプが前半見れて良かったと思います。

 

今シーズンのプログラムはショートもフリーも私には、選曲から???しかないのですが、

 

唯一フリーの衣装はトゥーランドットらしくいていいなと思いました。トゥーランドットは元々中国を舞台にしたオペラであるので、皇帝がいた頃の昔の中国人が着ていそうな衣装でいいと思いました。

 

そういえば、オーケストラとコーラスの大音楽なので、原作のオペラから編集した音源かと思いきや、改めてチェックするとクリストファー・ティンという中国系アメリカ人作曲家によるコンサート・スィートバージョンなのだそうです。そう言われれば、プッチーニの作品にしては、オルフの「カルミナ・ブラーナ」を思い起こさせるようなおどろおどろしさを感じるサウンドだなとは思っていましたが、そういうことだったのかと納得しました。

 

それだったら、カルミナ・ブラーナにしてくれた方がまだマシと私は思うが。個人的感想。

 

鍵山選手もかつては羽生選手も宇野選手も陥ったジレンマに入っている感じですかね。

 

(「ネイサンに勝つためにはもう1種類2種類の4回転が必要だが、3種類目4種類目の4回転を試合で安定して決めるのに苦労」、ネイサンが今はマリニンに)

 

あまり無理せず、鍵山選手らしい演技をしてくれればいいんじゃないですか?とにかく怪我がないように頑張って欲しいです。

 

さて、今大会男子のハイライトといえば、

 

カナダスティーブン・ゴゴレフ ですね。

 

オルサーコーチの元で天才少年と持ち上げられてから10年くらい?

 

嫌そうに競技を続けている姿が、何とも見る側にも嫌な気分にさせられる選手になっていましたが、

 

今シーズンはやっと覚醒?どうやら仕掛け人はブノワ・リショーのようですね。昨シーズンからブノワ・リショーを振り付けだけでなくコーチ陣に加えたようです。その成果が今年やっと現れた感じです。

 

とにかく、スケートを少しは楽しんでいる様子が見れるようになったのが、大きな変化ですよね。そしてメダル獲得で彼には大きな自信となったことでしょう。

 

カナダ大会では、良かったのはショートだけでしたが、今回はフリーも良かった。今時ラフマニノフのピアノ協奏曲という気もしましたが、、、彼の演技は集中していて良かったです。

 

一方、長年リショーと組んでいる、フランスアダム・シャオ・イム・ファは、波に乗れなかったということでしょうかね。今シーズンの彼のプログラムは、フリーのThe Creation if Adam (ミケランジェロの絵画がモチーフ?)とか、発想は面白いと思うけれど、私には何だかピンときません。ジャンプが決まった、失敗したという印象しかた残らない演技でした。

 

他に印象に残った演技といえば、

アメリカジェイソン・ブラウンのショート、アメリカ大会に続いて素晴らしい演技。今回はジャンプも決めました。一つ残念なのは配信にトラブルがあって、2回画像が乱れてしまったこと。本当に残念です。今回も音楽との調和性が素晴らしいものがありました。

 

アンドレアス・ノルデバックのフリー、この選手はジュニアの頃にフィリップ・グラスの曲を使ったり、どちらかというとクールな印象の演技をする選手ですが、今回はフリーにニーノ・ロータバージョンのロミオをジュリエットを使い、情熱的な演技を見せてくれて、驚きました。

 

他にも、腰痛を抱える中懸命の演技をした日本山本草太選手はスケーティングでは見せてくれましたし、アメリカジミー・マもYMCAで盛り上げてくれました。

 

さて、今大会でもコーチ帯同なしだったようなデニス・ヴァシリエフスは調べたところ10月にランビエール氏との姉弟関係を解消したそうで、現在はコーチは不在とISUのバイオグラフィーにも記載されていました。そのせいか、ジャンプは不安定な様子でしたね。オリンピックまでに誰か見つかるといいですが。

 

ところで、前回のブログで最後に倒れ込む振り付けで最初に印象に残ったのは誰だったかと書きましたが、ヴァシリエフスのフリー、バヤデールかもしれないとこの大会で見ていて思いました。

 

赤薔薇女子

日本千葉百音選手がGPシリーズ2勝!

 

ショートでは少しミスがありましたが、フリーは完全に彼女の世界でした。前回は、「戦うジュリエット」という印象でしたが、今回は、「乙女らしさ」も垣間見えた演技だったかなと思いました。

 

GPシリーズ4連勝とはならなかったアメリカアンバー・グレンも、千葉選手の演技を絶賛。でも、彼女も悪くはなかった。トリプルアクセルは安定しているし、彼女らしい独特の世界を展開する演技も見応え十分でした。

 

そして、フリーでヒットを飛ばしたのは、日本松池理乃選手。くるみ割り人形の金平糖のパ・ド・ドゥの華やかで幸せムード満載、彼女の演技を見ると蒼空の下のお花畑を連想してとても幸せな気持ちになれます。全日本での演技も楽しみにしたいです。

 

他に印象に残った選手というと、

イーダ・カルーネン、今回初めて見る選手で、今シーズンからシニアに上がったようです。ショートではテクノな感じの音楽に振り付けで、それに合わせたキレのあるスピンが印象的でした。フリーでは一点、バレエ白鳥の湖からの音楽を使い、衣装もバレのチュチュという出立ちで登場。よく使われる情景や黒鳥のパ・ドゥ・ドゥなどではない曲を使っていて、白鳥の湖というよりは雪が舞い落ちる北国のイメージがしました。いかにもヨーロッパのフィギュアスケートという、伝統を感じさせる演技で私は気に入りました。はオリンピック枠1ですが、彼女が代表に選ばれてオリンピックで演技が観れるといいなと思います。

 

カナダマデリン・シーザス、演技というより衣装がショートもフリーも素晴らしいなと印象に残りました。ショートはライオン・キングの音楽に合わせて、アフリカの太陽を思わせるようなデザイン、フリーはバタフライ・ラバースという中国の京劇をベースにした中国人作曲家によるヴァイオリン協奏曲で、京劇の艶やかな衣装を思わせるデザイン、どちらも素敵な衣装でした。

 

そして、ファイナルを意識してしまったのか、日本住吉りをん選手は彼女らしい演技はなく残念でした。全日本では彼女らしい演技を見せて欲しいと思いました。

 

ひまわりアイスダンス

新カップルのフランスボードレー&シゼロン組が優勝!

 

リズムダンスでは、シゼロンのお茶目ぶりが目を引きました。パパダキスと組んでいた頃より地が出ている感じがしました(彼はかなり以前にゲイであることを公表)。ただ、振付は北京オリンピックのシーズンのリズムダンスに似ていて、新鮮味がないという印象です。

 

一方、フリーダンスでは、パパシゼがブレイクした2015/2016シーズンのフリー、Rain, in Your Black Eyesの進化バージョンを見ている感じがしました。特にリフトで、リフトというと男性が女性を持ち上げ支えて、女性が木や茎に支えられた花のように見せ場を作りますが、彼らのリフトの多くは支えている男性のポーズも絵になるような、二人で彫刻のポーズになっている感じがして、これは、非常に革新的だと思いました。見ていてロダンの彫刻とか思い出しました。何かの彫刻作品をインスピレーションして作ったプログラムなんでしょうかね?

 

かつて、ゴルデーワ&グリンコフがエキシビションナンバーで、ロダンの彫刻「接吻」からインスピレーションを受けてマリナ・ズエワが振り付けした素晴らしい作品があったのを思い出しました。その時に衣装は彫刻同様裸体にする案があったけれど、それではまずいということになり、無地の衣装にしたとか。今回のシゼロンがシースルーの衣装で、彫刻のような裸体をイメージして作ったのかなとか思いました。

 

リズムダンスでは、個人的にはカナダギレス&ポワイエ組の方が、お茶目度で優っていたように思います。特に、長年見ていて氷上のカメレオン俳優と思っている男性のポワイエのダンス、表情がピカイチでした(最近のシーズンではあまり役者ぶりがあまり発揮されないプログラムが多いのが個人的に残念)

 

一方、3位となったアメリカジンガス&コレスニク組は、今回も私には空振りでした。彼らの演技のファンだったので、今シーズンのプログラムはリズムダンスもフリーもバツレッドバツレッドバツレッドバツレッド。特にフリーのロミオとジュリエットは、ジュリエットが黒い衣装に大きな違和感、そして最後の二人でナイフを突き刺して前傾のポーズも??しかないし。

 

今までファンだったカップルが、私には今一つと思えるプログラムを作ってきて、それとは相反して成績は上がるというのは、これまでにもしばしばあったことではありますが、、

 

彼らは、層の厚いアメリカアイスダンスの代表になれる可能性がこれで高くなったようですが、傘傘傘

 

どこかで印象が変わることを期待します。

 

他に印象に残った演技というと、

スマート&ディーク組のフリー、砂漠ものパート2は今回も素晴らしい。競技会であることを忘れるような演技でした。名古屋で生で見れないことは大変大変残念!

 

タシュレロヴァ&タシュラー組のリズムダンス、彼らは音源にトラブルがあったようで、意図した音源で滑れなかったようで、演技後タシュレロヴァが困惑した表情で"Music"と言っているのが印象的でしたが(彼らの前回大会はNHK杯でビデオ確認できず)、でも演技は彼ららしいパワーとスピードを感じさせるもので、印象的でした。オリンピックでは音源の問題が解決されるといいですが。その問題のせいなのか、フリーではぎこちなさが目立ったのは残念でした。フリーのマトリックスがNHK杯で印象的で、ミスっぽい部分が解消されているのを今回期待していたのですが。

 

イギリスベッカー&フェルナンデス組のフリー、彼らのフリーダンスは「ロミオとジュリエット」、音楽はアームストロング版(1996年ディカブリオ出演映画)ですが、振り付けにはマシュー・ボーンのバレエ「ロミオとジュリエット」を思わせる部分も。最初に二人が死を遂げたポーズから始まり、バックデートして話が始まり、最後は最初のポーズに戻るという(マシュー・ボーン版は音楽はプロコフィエフ版で精神病院という舞台設定。衣装がベージュなのはそれも関係している?)。彼らは、最下位で終わりましたが、このプログラムも彼らの演技も私にはハートでした。

 

アメリカ大会で光っていたアメリカブラウン兄妹、今大会でも期待していましたが、リズムダンスでツィーズルのミスがあり、リズムに乗れなかったのか、フリーのゴッドファーザーでもなんだかぎこちなさが見れて、アメリカ大会での勢いある演技は見れませんでした。彼らもオリンピック代表を狙えるポジションにある?とかアメリカ大会で思ったのですが、アメリカのアイスダンスは日本の女子のように、枠が6つくらい欲しいくらいの激戦ですから、難しいでしょうね。

 

さて、これでグランプリファイナルのメンバーが出揃いました。ざっとファイナリスト確認&注目ポイントです。

イルカ男子

アメリカマリニン日本鍵山日本佐藤フランスアダムシャイドロフイタリアグラスル

補欠の1番手に日本友野一希選手がいます。昨年も進出したフランスアダムが欠場となって補欠1位のシャイドロフが繰り上げ出場になりました。日本のオリンピック代表争いを含めて注目されますね。アメリカマリニンは、4回転アクセルを投入してくるか注目です。おそらく彼は、オリンピックで4回転アクセル成功のレガシーを狙っていると思うので、ファイナルで試したいはずです。

 

赤薔薇女子

日本千葉日本坂本アメリカグレンアメリカリュウ日本中井日本渡辺

日本の女子オリンピック代表選考前哨戦になりそうです。日本坂本花織選手のNHK杯の時のような圧倒的な演技も見たいし、日本千葉百音選手の戦う乙女ジュリエットの演技にも期待、日本中井亜美選手と日本渡辺倫果選手のトリプルアクセルの成功も期待、皆んながベストの演技をしてくれることが一番であります。

 

やしの木ペア

日本りくりゅうイタリアコンマチドイツハゼボロメテベルカナダステデシャパブスビ

スコアで見ると日本りくりゅうが圧倒?今シーズンペアは、今まで見たことがないようなトップ選手によるミスが目立って、乱戦状況。何が起きるかわかりません。補欠の1番手に中国スイ&ハン組がいるのにも注目です。

 

ひまわりアイスダンス

アメリカチョクベイフランスボーシゼイギリスフィアギブカナダギレポワリーアンアメリカジンコレ

ここ数シーズンファイナル常連だったカナダラジョラガイタリアギニャファブに代わって、リーアンアメリカジンコレの進出が目を引きます。リーアンのリズムダンス80点台はトップ4組でもなかなか出せていないスコアで、ファイナルでの彼らの活躍が注目されます。思えば、今年の世界選手権でリズムダンスでの転倒でフリーに進めず、オリンピック代表枠を9月の選考会で獲得(前回北京オリンピックで取得できなかった国籍も昨年無事に取れたようで念願のオリンピック出場が現実に)から、ここまでの大進撃は今シーズンのアイスダンスのハイライトの一つで、ファイナルでもそれが続くことを願います。

 

ファイナルはジュニアも日本勢の活躍注目です。今週末全日本ジュニアも行われて試合は見れておらず結果だけ確認しましたが、日本ジュニアトップ、島田中田は磐石。世界ジュニアに続いて、日本ダブル優勝に大きな期待ハート

 

ジュニアでは、昨シーズンまで出ていたアダム・ハガラがシニア完全移行で出ておらず、日本中田選手と仲良しだったそうなので、中田選手にはちょっと寂しいファイナルになりそうでしょうか?

 

ジュニアは日本選手以外は、初めて見る選手がほとんどなので、新たな推し選手発掘ができることを期待しています。