花の色は
うつりにけりな
いたづらに

我が身世にふる
眺めせし間に


昨夜、こんなことがあった。


 レンダーシアの港町ーーー。

 レンドアの酒場で目を覚ましたりょうは、討伐隊へひっきりなしに舞い込む討伐報告の喧噪を疎ましく思いながら、ボサボサのおかっぱ頭を掻きむしり、外に出た。

 チリーンチリーン・・・

 ドラキーマりょう宛に手紙が来ていることを知らせていた。

 眩しく降り注ぐ陽を細めた目で見やりながら、りょうは郵便局へ駆け出した。
 赤く大きな右手を差し出し、届いていた手紙を受けとる。
 差出人は、ヒロ
 宛先は・・・・・・・・リン

 どうやら寝ぼけているのはりょうだけではないらしい。
 内容はというと、なかなか男の子らしいもので、宛先を間違えたのがワザとでないとしたら、かなり恥ずかしいものであった。

 かいつまんで説明をすると、レンタル屋で制服を借りたリンが、その制服を着た自身の写真を撮りヒロに送ったことが発端で、そのリンの可愛さっぷりにヒロが興奮をしてしまい、このような手紙でその時の気持ちを表現したらしい。

「はずかしい手紙をありがとう」

 丁度インしていたヒロにそう伝えると、りょうはその手紙を道具カバンへ押し込んだ。
 そして一息ついたあと、目の座ったりょうはこうヒロに続けた。

ウチりんりんの持ってるで」

 完全なる勝利宣言に近い一言であったと、りょうは確信し、歩みを止めた。
 すぐさまヒロから反応があった。

「なんやと~~~~~~~~~~!」

 なんと言われようが見せぬし、やらぬ。てめぇはリンのを見てニヤニヤしてやがれ。

 それにしてもアネゴ、アネゴと後ろをついて回っていたあのヒロはどこにいってしまったのか。
 遠くを流れる白い雲を力のない目で追いながら、花の色は時間とともに移り変わっていくことを、その身をもって思い知るりょうであった。

 ただ一つりょうの脳裏をよぎったのは、この記事を読んだりんりんが、その優しさゆえに、当時のその写真をヒロへ送ってしまうのではないかということであった。

 美しさを誇るべき花は、その色が褪せてしまう前に、その美しさを人に愛でられるべきである。

 ゆっくりと歩み始めたりょうの右手には銀色に輝く練金ツボが掴まれており、腰にかかった道具カバンからは、一通の手紙がこぼれ落ちようとしていた。