15章はいわゆる「バリュー投資」の手法について
7章で述べたことを再度検証している。

この章でも当ブログでは本書の引用を踏まえながら
現在の日本市場でのケースを挙げていきたい。

グレアムは本章のテーマである積極的投資家について
その成功する可能性についてこう述べている。

これを成功させる見込みはどれくらいあるのだろうか?その勝算が低いことは初めにはっきりと断っておかなければならない。(p318)


なかなか初めから重たい意見だ。
投資で人一倍成功しようなんて
軽々しく言えるものではない。

 

 

さまざまな理由から、自ら銘柄選択を行って株式投資をする一般の人々は、ほとんどがファンド以下のパフォーマンスしかあげられない。しかし客観的にみれば、ファンドが市場平均を上回ることができない事実こそが、それを達成するのが容易どころかきわめて困難であるということの決定的証拠といえるのである(p320)

まぁ、そういうことなのだ。
例えばバリュー投資で成功しようものなら、
バリュー投資で儲かる相場の時期が来るまで
何年も待たなければならないこともあるだろう。

あなたはそこまでじっと待つことはできますか?
その間、株価はじりじり下がったりするし、
リーマンやら震災やらで暴落の波に煽られるし、
業績も低空飛行が何年も続いたり・・・。

はっきり言って精神的にはなかなかタフだと思う。

しかも、下手に安全域の無い株価で買ってしまったら…
平均以下の成績に終わるのも仕方のないことなのかもしれない。

ファンドに関しても、そのスタイルにも因るのだろうけど、
個人投資家のお金が集まったものなのだから、
たとえマネージャーが優秀であったとしても
成績としては苦しいのかもしれない。

その上で、グレアムは積極的投資家に対して
どのような銘柄選択を推奨しているのだろうか?

 

 

 

もし彼らがわれわれの投資哲学に従うのなら、不利な経済情勢にあり、近い将来に明るい兆しが見えず、また世の悲観論が株安となって表れているようなときには、おそらく鉄鋼株のような景気循環型の企業の株を買うことになるであろう。(p326)

リーマンショックの後や、この度の震災直後に
このような企業を買い集めた人も多いのではなかろうか?

普段ならこんな高PBRでは買えない!
というエクセレントカンパニーを
妥当な株価で株主になるチャンスも
こういった機会を利用するしかない。

(バフェットもこの手法ではないかとよく言われてますね)

 

 

 

次の購入の可能性を検討するのは、経営状況が良く、過去の十分な業績をあげながら、一般的には魅力の無い銘柄と思われている二流企業である。(p327)

実はこの文の直後にケースとして
13章で本書が挙げている
エルトラ社とエムハルト社が書かれている。

当ブログでも13章で紹介した4企業もこの範疇に入る企業とも言えよう。

バリュー投資では投資先が既に有している資産価値と
株価(時価総額)との価格差に注目する。

そこで問題となる点の一つとして
赤字企業の扱い方があるだろう。

赤字というのは投資先の総資産額の減少を表す。
つまり、資産価値が減少するということなのだ。
どんなに安い株価でも赤字を垂れ流しされては
バリュー投資ではなくなってしまう。


そういった意味では派手さは無くとも
健全な財務・堅実なビジネスであることは
投資先候補にふさわしいとおもわれる。

 

 

 

 

それ以外で心に留めるべきことは、企業規模については下限を設けていないことだ。分散投資の一部として慎重に買い付けるのであれば、小さな会社でも十分に安全な投資対象となり得るのである。(p331)

小さい会社=危ない
と、一括りにするのはあまりにも大雑把だ。

日本にもすばらしい中小企業があると
メディアでも紹介されることが多いが、
財務諸表という切り口で見ても
「堅いな」という中小企業が結構見られる。

もう少し突っ込んだ私見を言うと
中小企業の財務諸表のほうが個人でも分析しやすいのが多い。
ビジネスモデルも多岐にわたっていないことが多いので
定性的な理解も比較的やりやすい。


それから
単元株の購入額も比較的安いものが多いので、
分散させて買い足していくこともやりやすい。

まさに、バリュー投資入門で紹介されている
シュロス親子やポール・ソンキンの投資スタイルが
この引用から浮かび上がってくる。

 

 

 

 

正味流動資産の適切な見積もり額―前期までの全損失を差し引き、固定資産およびその他資産もゼロとみなす―以下の価格で、さまざまな銘柄に分散投資することができれば、極めて満足のいく投資結果を得られるというのは、昔も今も極めて当然のことであろう。(p339)

ここで出てきました。
いわゆるネット・ネット株というものだ。

少し想像してもらえれば理解できるのだが、
この基準を満たす企業の多くは
全資産の中でも流動資産の比率が高くなる。

つまり、固定資産の比率が低くなるのだ。

そして、そのような財務を実現させるには
長期の不況の備えられるだけの十分な現金を持っているとか、
重厚な設備投資の頻度が少ないとか、
固定資産の減価償却のスピードが早いとか、

健全な経営のお手本をする必要があるのだ。

ここで、日本企業の紹介
第15章分析シート
いずれの企業も、成長産業でもないし
利益も目を見張るものは無い。
中にはリーマンショック後に赤字を計上したところもある。

しかし、4社とも全負債を清算した後でも
たっぷりと流動資産が残っている。
※しかも固定資産がおまけで残っているのだ。

もちろん、いくら安い株価だからといって
これら4社のうちの1社だけに全額投資
というのはあまりにも無謀な話だ。


だが、このような会社は現時点でも他にも見られるので、
基準に見合った企業全てに分散して投資をすれば
十分な投資性かが得られるだろうということに
私も合理的だと思うのである。

ここで、こんな引用を

 

 

 

大きなリスクを負うことなく、割安銘柄でカネを儲けることはできるのだろうか?そう、できますとも。ただし、十分な銘柄数を見つけて投資を分散することができ、なおかつ買ってすぐに値が上がらなくても我慢できる忍耐力があれば、という条件がつく。時には相当の忍耐力が求められる場面もあろう。(341)

そう、十分な利益が見込まれるというのだ。

しかし条件にある忍耐力と分散可能な銘柄検索・管理能力は
両方を兼ね備えられる人間はそれほど多くは無いと思う。

分散可能な資金を拠出できない、しようとしない人も多いだろうし
財務諸表をしっかりと学習していない、しようとしない人も多いだろう。
その上に、株価を揺るがす相場の波にさらわれないだけの忍耐力など
そう簡単にできるものではない。

しかし、
個人がその人なりの使命や危機感を持って
資産形成の目標を立て、バリュー投資に挑戦するのであれば、
それに応えられるだけの忍耐力も身に付くのではないかと思うのだ。