昼食に蕎麦を

一人で笊蕎麦とかけ蕎麦を食べていた

老夫婦が相席に

狭い店だからそれはいつものことで

軽く会釈して引き続き食べる

するとおじいさんがやたらと距離をつめてくる

そして煙草に火を付けながら

若いといっぱい食べれていいな

と、こちらに煙を吐き出しながら

そうですね、自分はこれで丁度良い量です

と返すと

昔は自分もそれぐらいは食べてた。今はほんの少ししか食べれない

と、また煙を吐き出し、さらに続ける

いくつだと思う?かぞえで80歳だ

と自己完結

お若いですね

と返すと

俺はもういつ死んでもおかしくないから

今度孫が結婚するんだ

嫁は仙台の某大学を出ていて

と続いた

まだまだお若いから大丈夫ですよ

それはおめでとうございます

お孫さん、良いお嫁さんを見つけてきましたね

と蕎麦湯をすすりながら返した

自分の事を話せば

老夫婦の幸せに水を差しそうで

では、ごゆっくりと伝え席をたった

いつも美味しいそこの蕎麦を

今日はあまり美味しく感じなかった

その自分にがっかりした

人の幸せを羨んでいると

自分の味覚に見透かされたようで

楊枝くわえて空を見上げたら

ずいぶんと穏やかな天気だってことに気付く

間もなくカミさんの月命日

今日の空のように穏やかに

その日を迎えようと思った