相変わらず仕事に身が入らず



ある程度こなして来客も途切れて



フラッと本屋へ



そこにはドトールも入っているのでコーヒーでも飲もうと店に入った



何か読もうかと店内をまわる



カミさんが入院しているとき



いつも本屋に寄ってカミさんが読みそうなものを探すのが日課になっていた



薬の影響で集中すると疲れるので雑誌やマンガが多かったけど



そして自分も結構な数の本を読んだ



カミさんがいない自分の部屋で



カミさんが目を閉じているとなりで



最後となった入院のときにはずっと病院に寝泊まりしていたのでその時もカミさんのとなりで読んでいた



夜カミさんが寝てから、眠れない夜を本を読んで過ごした



夜勤で巡回してくる看護師さんには朝の交代まですべて会うような中で



そんな眠れない夜はやたらと長くて村上春樹の新刊を上下巻二日で読み終えるペースだった



そんな事を思い出しながら店内をまわってた



平積みの新刊コーナーである本が目に入った



そのタイトルから一瞬目を逸らしたのち目を離せなくなってしばらく立ち尽くしてしまった



妻に最後のキスをした



自分がついこの前カミさんにしたことだった



その時の感触がよみがえってきた



とても買う気にはならなかったがそこで思わず手にとりページをめくった



想像通りの内容だった



あまりにも同じ境遇に足が震えた



泣きそうになった



その場にしばらく立ちすくみ



気を落ち着けるように踏ん張った



そして気を落ち着けるようにドトールにむかいエスプレッソを注文した



Mサイズをえみゅと言ってしまい



勝手に苦笑いした



車に戻り濃いエスプレッソを飲みタバコに火を付けた


数回煙りを吐き出して



えみゅって何だよ



と再び一人苦笑いした



テレビをつけても本屋に行っても誰かと話していても


何だか死が身近すぎる気がする



それとも今まで目を逸らし続けてきただけなのか



辛いのは自分だけではない


心からそう思える日が来るまで



こういう気持ちを感じ続けるのだろうか



自分の弱さだけが毎日確認出来る気がする