中国語対応司法書士のブログ

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不動産登記、会社・法人の登記に、
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司法書士になったばかりの頃、

日本の不動産登記や商業登記で必要な、

外国の公正証書(Notary Certification)や領事館が認証した書面などを手にして

登記申請のための日本語訳文を作っていた際、

非常に違和感を感じた記憶があります。

 

公証人が認証をするのは、

登記に必要なさまざまな事実関係を記載した書面(宣誓供述書/affidavit)、つまり

「事実はこうです」と当事者が言っているだけの書面に、

当事者が「公証人の面前で署名をした事実」だけ

であったりします。

「当該記載内容が真実であることを証明する」などとは、通常は書いていないものです。

 

ときには、「この証書は当事者の署名が真正であることを認証するものであり、前記書面の記載内容が真実であることを保証するものではない」といった具合の、

日本側の登記手続の申請代理人としては書いてほしくない一言が書かれているケースもあったりします。

 

それでも、当該公正証書につき偽造の疑いはなく、宣誓供述書/affidavitの記載内容が虚偽であるような積極的な否定文言がなければ、

添付書面として通常は受理されるのが現在の日本の登記実務ではあります。

ではあるものの、なんとも不安な思いで執務にあたっていた駆け出しのころが懐かしく思える今日この頃です。

 

外国の公正証書のこのような、公証人において真実性を確認できない事項については「少なくとも積極的に真実であることの証明はしない」という書面の形式を何度も見るうち、

我が日本国の行政庁で取得する様々な公文書の証明文言にも、自然と着目するようになりました。

 

たとえば、

市区役所・町村役場で取得する住民票(住民票記載事項証明書、住民票の写し)には、

「記載内容が真実であることを証明する」であるとか、

「何某の氏名、住所、生年月日、前住所地などが上記のとおりであることを証明する」などとは、

おそらく日本中どこの役所で取得する物にも、書いていないと思われます。

せいぜい、「(役所で原本を保管している)住民票の写しに相違ないことを証明する」程度のことしか書かれません。

 

戸籍謄本もそうです。

「記載内容が真実であることを証明する」であるとか、

「何某の氏名、本籍、生年月日、親族関係が上記のとおりであることを証明する」などとは、

おそらく日本中どこの役所で取得する物にも、書いていないと思われます。

「何某には、ここに書いてある以外に子はない」とも書いてありません。

せいぜい、「(役所で原本を保管している)戸籍の写しに相違ないことを証明する」程度のことしか書かれません。

 

会社の履歴事項全部証明書(会社の登記簿謄本)も、そうです。

「記載内容が真実であることを証明する」であるようなことは、書かれていません。

登記されている事項が書いてある旨の証明文言はあるものの、記載内容が真実であることまで踏み込んではいません。

 

住民票、戸籍、会社の登記は、いずれも主に当事者(親族)の届出や申請により記録・登記されます。

当事者の届出・申請から、管轄官庁の担当者によるPC入力まで、一連の過程の中で、

どこかで何らかのヒューマンエラーがあると、誤った内容が記録・登記されることが、たまにはあります。

 

そのような過誤が客観的にはあり得ることを想定していることもあり、また、残念ながら最初から内容虚偽の登記を故意に申請される例も(刑法犯になりますが)あり得るため、

証明書を発行する行政機関としては、積極的に内容が真実であることまで踏み込んだ証明文言は書けない性質の証明書が、各種あるわけです。

他方で、営業許可証(行政機関自らが認可した)や、判決確定証明書(裁判所自らが言い渡した判決が確定していることの証明書)などであれば、当該許可証等の記載内容が真実であることは、当該機関が内部の保管書類を確認すれば明らかとなるため、

 

「上記の者が●●の免許を有することを証明する」

「令和X年(●)第XXXX号■■請求事件の年月日付判決が確定していることを証明する」

のように、

記載内容の真実性を積極的に書ける場合もあります。

 

公的証明書を発行する機関の調査権限の有無や責任問題、

証明書を受け取って別の審査をする登記所として如何なる記述に基づき事実を認定するべきか、

これら総合的なバランスの上で、

不動産や会社の登記実務は動いている、

ということを学ぶきっかけになったのが、

外国の公正証書や、領事館が認証した領事館所在国で成立した文書でした。