(あらすじ):金田一語り
逃亡した殺人犯を追って、日本酒の蔵で知られる「白蛇村」にやってきた俺達は、
ここで二か月前、蔵にふらりと戻ってきたという白蛇酒造の次男、
「白い頭巾」で顔を隠した「白神蓮月」が怪しいと睨んでいた。
ところがその日の夜、
「一番蔵見回りツアー」中に、醸造タンクの底で、まるで白蛇に絡みつかれているかのように死んでいる白神蓮月が発見された。
しかも二つしかない一番蔵の鍵の一つを持っている白神左紺は、
事件の後、行方不明。
左紺が管理する道具部屋からは、蓮月を殴ったと思われる血のついた櫂棒が見つかった。
果たして、次男の蓮月を殺したのは、長男の左紺なのか!?
<失踪前の蓮月と左紺のトラブル>
左紺が管理する道具部屋から蓮月を殴ったと思われる血のついた櫂棒が見つかり、すぐに左紺を探すことに。
しかしここで白蛇酒造の社長・音松が待ったをかけた。
「ちょっと待ってくれ!刑事さん。
あんた、うちの左紺を犯人扱いしてたじゃないか!」と言うが、
「蔵の鍵を持ってたのは左紺さんだし、
こうして彼の部屋で血のついた櫂棒も見つかってますからな。」と、剣持警部は左紺犯人説を取り下げはしない。
音松は「自分も蔵の鍵を持ってるし、そんなことで・・・」と言った直後に持病のせいか、苦しみはじめ、白蛇旅館の女将・鏡花さんに「あまり無理をなさらないで。少し休みましょう。」と言われ、2人は部屋から離れた。
その様子を見ていた女将の娘・蒼葉は、
「音松さんラブのお母さんには申し訳ないけど、蒼葉やっぱり左紺さんが怪しいと思うな!」と言った。
剣持警部が「なぜ君はそう思うんだい?」と聞くと、
「だって蒼葉聞いちゃったんだもの。
火事で失踪する前の蓮月さんと左紺さんのこと・・・!」
と蒼葉が言った。
一方、鷺森さんは一般の方に酒造りの道具の説明をしていた。
黒鷹さんが言うには、
「人によっては、半年も前から予約を入れて来る人もいるわけで、
そんな客の為にもなるべく通常通りにしておきたいんですよ。」
らしい。
「で、私に話とは?」と聞かれ、
剣持警部は「失踪前の蓮月さんと左紺さんのトラブルについて・・・」と言ったところで、
黒鷹さんは「・・・こっち来い。」と言われ、場所を移動した。
「そんな話、一体誰から聞いたんだ?」と聞かれ、蒼葉の名を言うと、
「まったくあのおしゃべり娘が!」と言って左腕を捲った。
すると、黒鷹さんの左腕に蛇の入れ墨があり、金田一と美雪はそれを見てビックリ。
腕の入れ墨を見られたと思った黒鷹さんは、すぐに捲っていた左腕の袖を下ろした。
黒鷹さんが言うには、確かに失踪前の蓮月と左紺は仲が良いとはいえなかったらしい。
「白蛇酒造は代々、長男が杜氏の役を継いで、蔵の運営を全て任されてきた。
だが、次男の蓮月には天性の酒造りの才能が長男の左紺と比べ物にならないくらいあった。
音松さんは悩んだ末、蔵の全てを蓮月に譲ると言い出したんだ。
それが母親違いのあの兄弟に決定的な確執を生んじまった!」
<三男・黄介の存在>
黒鷹さんが言うには、長男・左紺と次男・蓮月の確執の火に油を注いだのは、三男:黄介だというのだ。
三男の存在を知らなかった金田一達は驚いた。
三男・黄介のことについては、黒鷹さん曰く、
「次男と同じく音松さんの2人目の女房の子供でな。
3人兄弟の中で母親は違ってても、長男の左紺と三男の黄介は若い頃の音松さんにそっくりで、それもあってか、この2人はなかなかに仲が良かったんだ。」とのこと。
金田一が、三男・黄介が今どこにいるのかと黒鷹さんに聞くと、
「5年前、蓮月が杜氏を継ぐ為に白蛇神社にこもって三日三晩断食の行をしていた時のことだった。
蓮月以外いないはずの神社になぜか火が出てな、
その櫂は白蛇山に広がって、山全体を焼き尽くすことになった。
神社で行をしていた蓮月はそれっきり行方不明。
当然死んだと思われた。
ところがどういうわけか、黄介までもがその日を境に失踪してな、
警察が彼が持ち歩いていたスマホというのか、あれの形跡を調べると、
なんと火事の起こる直前に白蛇神社に訪ねていたことがわかった。」
そのことに金田一と美雪はビックリした。
さらに黒鷹さんは、
「しかもその後、警察が調べていくと、どうも黄介が左紺にメールを送っていることがわかった。警察が左紺に問い詰めると・・・」
左紺『・・・・身内の恥を晒したくなかったんですが、
実はあの時、弟からこんなメールが・・・』
(黄介からのメール文)
やったよ、左紺兄さん
蓮月を火あぶりにしてやった
俺はこのまま逃げるけど
左紺兄さんは白蛇酒造を頼む
蓮月ばかり父さんは可愛がるけど
あんな奴じゃ蔵はダメになる
だから俺が処刑してやったんだ
金田一「三男の黄介が次男を!?」
と、金田一も驚く。
黒鷹「まあそんなことがあった上での次男蓮月の帰宅だったから、
左紺の思いが複雑になるのは無理もないが、
今回の事件もイザコザの延長で起きたのかもしれんな。」
黒鷹の言葉に、金田一と美雪は何も言うことはできなかった。
<3人の見解>
金田一、美雪、剣持警部の3人は部屋に戻り、黒鷹さんが話してくれたことについて話し合った。
金田一は、美雪と剣持警部の2人に「さっきの黒鷹さんの話、どう思う?」と聞き、
剣持警部は、
「俺の勘だと、どうも三男の黄介とやらが、事件の鍵を握っているように思えるな。」といった。
ここで美雪が、
「殺された白頭巾の人が三男の黄介さんだったとか・・・!!」と言った。
美雪の見解としては、
「遺伝子検査って言っても、親の遺伝子が入っているか入ってないかはわかっても、
いつ生まれたとか、何番目に生まれたまではわからないでしょ?
本物の次男を殺して、自分も大ヤケドを負った三男が、
次男のフリをして帰ってきた。
ところが、それに気付いた左紺さんが問い詰めてケンカになり、
左紺さんは、つい櫂棒で殴ってしまった。」
この美雪の見解に金田一は、「なかなかの名推理だな」と褒める。
金田一は、剣持警部に「白頭巾の顔のヤケドが本物のヤケドの痕だったんだよな?」と聞くと、剣持警部は
「監察医が調べた所によると、どうも火事で焼かれたものでもなさそうでな。」と言い、
金田一が「どういうこと?」と聞くと、
剣持警部「無理矢理、火を顔に押し付けるとか拷問みたいな方法だったと!
それこそ裏社会のヤクザの制裁か何かのやり方だよ。」
と金田一に言い、金田一は「おっさん、それって・・・・」と何かを感じた。
剣持警部「俺がここに来たのは、モグリの医者を殺して逃げている犯罪者『鬼門影臣』を追ってだが、もしあの白頭巾が鬼門だとしたら・・・」
美雪「まさか次男の蓮月さんと鬼門が同一人物とか?」
金田一「あるいは三男の黄介が鬼門とかな!」と、次男・蓮月と三男・黄介のどちらかが犯罪者『鬼門影臣』ではないかと思っていた。
しかし剣持警部が言うには、
「『鬼門影臣』は身元が判明しているらしく、
どこかで入れ替わったのか、あるいは別のやり方があるのかで、俺にはもうサッパリだ!」
と、お手上げ状態。
しかし金田一は、
「・・・ともかくこの事件には、まだ俺たちの知らない『秘密』が隠されているのは間違いなさそうだな。」と、確信していた。
剣持警部も、
「その秘密を握っているのは行方不明の左紺だ。
早いこと奴を見つけないと何かとんでもないことが起こりそうだぞ。」
と、感じていた。
しかしこの時、恐ろしい事件の第2幕が、今まさに重い幕を上げつつあったのだ。
<第2の事件・発生>
その頃、黒鷹と鷺森とその他の従業員は、いつもの仕事に取り掛かろうとしていた。
黒鷹は鷺森に「刑事に何を聞かれたんですか?」と聞かれ、
「蓮月と左紺の間にあった事」を話し、
「だが起きちまったことは、もうどうでもいい。
俺たちはただ、この蔵を守っていくだけだ!」と言った。
すると、黒鷹が一番蔵の鍵が開けっ放しであることに気づく。
「誰だ!?こんな不用心な事をしたのは!?」
一番蔵の中に入った黒鷹達。
黒鷹は鷺森達に「『い』の樽から順に回れ。わしは、いつも通り逆側の『ぬ』から回る。」と指示をした。
見回りをしていると、一人の従業員があることに気づく。
「あれ?黒鷹さん?
あのタンク、酒が入ってないんじゃないっすか?」
黒鷹が酒が入っていないと思われるタンクの中を覗くと、そこには
行方不明になっていた白神左紺が、蓮月の時と同様に、白い醪(もろみ)が白い蛇のように巻きつかれた状態で死んでいる姿が発見された。
蓮月と違うのは、喉に櫂棒の一方で深々と突き立てられた状態であったこと。
<感想>
ここにきて、まさかの三男の存在が出てくるとは・・・しかもやることが鬼畜。
あと、ここにきて美雪の名推理誕生の瞬間。
これは、『七瀬美雪の事件簿』とかありそうだな~。
あったら見てみたい。
確かに今回の金田一は、シリーズ屈指の難事件だわ。
全然犯人わかんない。
次回の金田一がどんな展開になるか、楽しみだな~。