ポプラの挿し木と不定根

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 挿し木をしておいたポプラの枝から芽が伸びだしてきている。鉢に挿したのが日本自生のポプラであるドロノキ、プランターに挿したのが並木によく用いられるセイヨウハコヤナギ(イタリカ)。
 
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 休日出勤の代休をとった3月10日、家の鉢植えのドロノキと職場の庭に植わっているセイヨウハコヤナギから枝を切って赤玉土に挿し木を行った。
 
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 そして翌日の3月11日、東京の地下鉄の駅構内で震災に遭遇。地上に出てからは混乱の中、翌日の夕方近くに帰宅した。地下なので大きな揺れを経験しなかった点が、皆との共通体験を欠いている。その後、毎日、テレビと新聞の報道に目を凝らしてきた。悲しい報道が多い中、普段のニュースでは到底聞けない心温まる多くの報道に接して涙した。私が小さかった頃の「3丁目の夕日」のような質素な生活を思い出したりもする。これを契機に、この日本は必ずや良い方向に変わると信じたい。
 
 平和に庭仕事をしていたあの時が遠い昔のように感じられる。
 
 そのような中、ポプラが芽生えてきた。
 
 鉢からそっと挿し木苗を抜いてみると、白い根が枝の下部に数本と上のほうに1本出ている。これらの根は、茎から新たに生じた根なので不定根と呼ばれる。茎から新たに根を形成できるのは植物の組織が分化全能性を有しているから。落葉樹の場合、普通、挿し木は春の初めに行うが、芽吹きと同時に芽が作り出すオーキシンという植物ホルモンの働きで不定根形成が誘導される。
 
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 この時期の挿し木が成功しやすいのは、葉の発達と根の形成が同時期に起こるから。葉からは根の形成を促すオーキシンやその他の促進物質、同化産物が供給されるため、なるべく多くの葉が付いていた方が発根は良いのだが、根が無い状態では葉が多いと蒸散で水分を失ってしまい発根する前に枯れてしまう。なのでツバキの様な常緑樹の場合は、葉を1枚または半枚と最小限残して梅雨時に挿し木が行われる場合が多い。
 
 このような挿し木の効率を上げるために大阪府大で開発された方法に「ボトムヒート処理」というのがある。この方法だと通常は難しい成長中の枝を用いても挿し木が可能だ。例として生長中のポプラとキョウチクトウの頂芽と葉を数枚つけた枝先を水に挿し、水温を32℃程度に暖めて発根を促しつつ、空中を10℃の低温に保って蒸散を押さえると、挿し木の成功率がほぼ100%になることが示されている。この方法は温度を制御できる装置が必要ではあるが、もし現在挿し木が不可能といわれている柿木などに応用できれば画期的だと思うのだが・・・・。