「この世には不思議な事など何もないのだよ」(京極夏彦の小説 京極堂のセリフ)

そう、昨年、日本でも放映され、来年の3月に続編が放映予定されている、
あの「シャーロック ホームズ」が、最近とても気になり、
DVDを何度も観ている。

ホームズをロバート・ダウニーJr、ワトソンをジュード・ロウが演じていて、
役柄にうまく合致している。

監督はガイ・リッチー。

ストーリーの流れは、割合に単純だ。

ブラックウッド卿が、謎というクラウドの中心にある。
魔術師だという設定になっている。

プロローグで、いけにえの女性殺害の手前で、ホームズ達に
阻止され、逮捕される。

そして、絞首刑台で、ブラックウッド卿は死亡する。
ワトソン博士が死亡診断をおこない、見届ける。

ところが、数日後、墓から蘇り、
代わりに別の男が棺の中で死体になっていた。

その男は、ホームズがアイリーンから捜索依頼を受けた、
当人だったりする。

ブラックウッド卿の敵(政治上の的)は、父親も含めて、次々に怪死を遂げてゆく。

父親は風呂の中で、外傷もなく、死んでしまう。

別の政敵は、ブラックウッド卿を、銃で撃とうとしたら、銃が暴発して、全身に
火が移り、窓から外へ落ちて、あえなく死亡。

政治家達を先導し、自分にさからう者はすべて死にいたることを証明しようと、
国会議事堂で、大量殺戮を企てる。

青酸ガスというおそるべき手段で。

それをホームズが阻止するという流れ。

この映画の面白さは、ストーリーよりも、むしろストーリーの流れとともに、
ホームズの人物像、ワトソンとその婚約者、そして、ホームズの恋人ともいう
べきアイリーン(レイチェル・マクアダムス)らの枝葉の部分にある。

続編は謎の人物、モリアティ教授との対決が期待されるように、
モリアティ教授が随所に現れる。

アイリーンは大泥棒で、2組の暴漢が金を脅して取ろうとしても、逆にナイフで
撃退し、二人組のひとりのふところにあった財布をもち帰るほどのツワモノ!

冒頭の設定では、ワトソンが婚約し、ホームズとの共同生活から離れるところ
から話が始まる。

ホームズは部屋にこもって、なにやら得たいの知れない実験をおこなっている。

銃の消音効果を実験するために、部屋の中で銃を撃ったり、
ワトソンの飼っていた犬で、睡眠薬の効果を試したり。

大量のハエを瓶に詰めて、バイオリンの弦の音で、螺旋状にハエが飛ぶ
ことを発見したと、ワトソンに見せるとか。とか。

昼はカーテンを締め切り、寝ている。
光に弱いので、昼に事件に呼び出されるときは、グラサンをするとか。

ホームズは高級レストランで、ワトソンの婚約者と初めて会うために、
早めの時刻に、ひとり、テーブルに座っている。

懐中時計を手にして、周囲の音声を聞き分けながら、観察をしている。
給仕が銀の食器を懐にしまうなどを観察しているわけだ。

そこに、ワトソンと婚約者が登場する。

婚約者がホームズの推理力を試し、彼女が家庭教師をしていること、
教え子がやんちゃであることなどを、当てるところまではよかった。

ところが、元婚約者がいて(指輪の跡)、玉の輿狙いで、ワトソンへ
乗り換えたといったところで、ワトソンの婚約者は、ワインを
ホームズの顔へかける。

元婚約者は死んでいたこと、ワトソンもそのことを承知していた
ことを告げ、ふたりはホームズと食事することもなく、席を立って
レストランを出てゆく。

後に残ったホームズは、ひとり、無表情で食事を始める。

原作のシャーロック・ホームズを読むと、ホームズがボクシングを
やっていたことが書かれている。

今までのホームズ像というのは、紳士で、パイプをくわえて、
床こそ這いずり回ったり、変装して探偵するが、どちらかというと、
冷静で落ち着いた人物といった印象がある。

ところが、本編では、今までのホームズ像とはまるで違うところが
面白い。

拳闘場で、ホームズが戦っている場面が出てくる。

アイリーンのハンカチが、拳闘場のリングの壁(ロープではなく、木製の壁で
囲まれている)の桟にかかっていて、ホームズは試合の勝ちをゆずろうと
していた。

ところが、無頼漢そうな相手は、ホームズの首筋にたんを吐きつけて、まだだという!

そこを逆上することなく、感情を抑えて、戦いのプランを練るシーンへと
移る。(ホームズの思考が独白で始まる)

戦いのプランを立てている独白シーンは、冒頭でもおこなわれた。
ブラックウッド卿のアジトへ侵入するときに、
見張りの巨漢を倒す前に、プランを練ってから、実施する!

拳闘場でも、プランどおり実行し、勝者となって、リングを去ってゆく。
勿論、賭金をたっぷりいただいて!

といったように、ワイルドだが、プランを練る、ホームズという像が
面白い!

最後に、ブラックウッド卿の企てを阻止し、事件解決となる。
そのときに、ブラックウッド卿の魔術の種を、次々に明かしてゆく。

ホームズの変装については、アイリーンを尾行する場面ででてくる。

(アイリーンにはばればれだったようだが)アイリーンが
ホームズの部屋を去り、モリアティ教授の待つ馬車へ乗り込むまで、
変装したホームズが尾行する。

これも、映画の構成としては、アイリーンがモリアティ教授の馬車に
乗ったら、浮浪者がひとり、馬車の窓枠から物乞いをし、モリアティ
教授が、小型銃(腕に常時付けている)で追い払う場面が最初に
流れる。

その後で、ホームズがワトソンに尾行の顛末を説明する、という
構成になっている。

途中で、サーカスの一団が滞在している中を、ホームズがアイパッチ
を付けて、尾行する。大男が筋トレしている横で、直立不動となる
ホームズ。

また、音楽がエキゾチックだったり、アイルランド民謡?だったり、
各シーンを加速させている。

エンディングで、映画で使っていた音楽がフルで、クレジットと共に
流れてゆく。

この映画のストーリー構造は、なんとなく、日本中を恐怖に陥れたあの某カルト教団事件
に似ている。

映画では、大量殺戮を阻止するのだが、魔術師といい、神秘性と科学性の一体という構造が
とても似ている。

そして、モリアティ教授にしてやられた、ホームズ達。モリアティ教授は部品をまんまと持ち去って
しまうのだから。

続編が楽しみで、待ち遠しい。

ちなみに、ホームズを演じる、ロバート・ダウにーJrには、
様々な苦難の過去があったが、「アイアンマン」でみごと
再起を果たしたというエピソードがある。

なかなか、とぼけた表情がいい。