勇者
やや混んだ電車に乗った。
横に立つくせ毛を七三になでつけた眼鏡のおじさんが携帯でドラクエっぽいのをやっている。
視界に入る度についちらちら見てしまう。
戦闘が始まり主人公の勇者の名前が見えた。
「とうさん」
電車が止まり乗客が降りた。とうさんと僕は向かい合わせに席を確保した。
横に立つくせ毛を七三になでつけた眼鏡のおじさんが携帯でドラクエっぽいのをやっている。
視界に入る度についちらちら見てしまう。
戦闘が始まり主人公の勇者の名前が見えた。
「とうさん」
電車が止まり乗客が降りた。とうさんと僕は向かい合わせに席を確保した。
宅配顧客台帳 完
今日は最後の宅配の仕事だった。
夜の冷たい雨が降る中事故で傷付いたバイクを走らせて配達先に向かった。
角を曲がり地図で目的地がある住宅街の通りに入ると、暗闇の先にクリスマスの電飾の光できらきらと飾りつけられた家が見えてきた。
その手前の飾りのない家が配達先だった。
宅配で人の家にお邪魔すると短時間のやりとりでもその人の生活が感じられた。
今日で何度かお邪魔したお客さんの生活ともう一切切り離されて立ち会えないのだと思うとちょっと淋しい。
あえて今会いたいとかいうわけじゃないし、会いたいのに会えないというのとは違うけど、淋しい気がする。
お客さんはともかく、僕は人との接点が変わったり離れたりするときにはやっぱり戸惑ってしまう。
最後の言葉や態度だと思ってしまうと、うまくやるのって難しい。
少なくともうまくやろうとしてできたって思う事はほとんどない。
まだ長く営業時間が残っていたのでその時は予感しなかった。
僕はすき焼き弁当をお渡しして今までと同じようにドアを閉めた。
それが最後の配達になった。
夜の冷たい雨が降る中事故で傷付いたバイクを走らせて配達先に向かった。
角を曲がり地図で目的地がある住宅街の通りに入ると、暗闇の先にクリスマスの電飾の光できらきらと飾りつけられた家が見えてきた。
その手前の飾りのない家が配達先だった。
宅配で人の家にお邪魔すると短時間のやりとりでもその人の生活が感じられた。
今日で何度かお邪魔したお客さんの生活ともう一切切り離されて立ち会えないのだと思うとちょっと淋しい。
あえて今会いたいとかいうわけじゃないし、会いたいのに会えないというのとは違うけど、淋しい気がする。
お客さんはともかく、僕は人との接点が変わったり離れたりするときにはやっぱり戸惑ってしまう。
最後の言葉や態度だと思ってしまうと、うまくやるのって難しい。
少なくともうまくやろうとしてできたって思う事はほとんどない。
まだ長く営業時間が残っていたのでその時は予感しなかった。
僕はすき焼き弁当をお渡しして今までと同じようにドアを閉めた。
それが最後の配達になった。


