顧問弁護士(法律顧問)
がよく問い合わせを受けるテーマをまとめます。
今日扱うテーマは、労災保険と損害賠償の調整についてです。
この論点について、最高裁は、労災による損害賠償につき、将来支給される長期傷病補償給付金を逸失利益から控除すべきではないと判断しました。以下、判決文の引用です。
一 労働者災害補償保険法に基づく保険給付の実質は、使用者の労働基準法上の災害補償義務を政府が保険給付の形式で行うものであつて、厚生年金保険法に基づく保険給付と同様、受給権者に対する損害の填補の性質をも有するから、事故が使用者の行為によつて生じた場合において、受給権者に対し、政府が労働者災害補償保険法に基づく保険給付をしたときは労働基準法八四条二項の規定を類推適用し、また、政府が厚生年金保険法に基づく保険給付をしたときは衡平の理念に照らし、使用者は、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れると解するのが、相当である。そして、右のように政府が保険給付をしたことによつて、受給権者の使用者に対する損害賠償請求権が失われるのは、右保険給付が損害の填補の性質をも有する以上、政府が現実に保険金を給付して損害を補填したときに限られ、いまだ現実の給付がない以上、たとえ将来にわたり継続して給付されることが確定していても、受給権者は使用者に対し損害賠償の請求をするにあたり、このような将来の給付額を損害賠償債権額から控除することを要しないと解するのが、相当である(最高裁昭和五〇年(オ)第四三一号同五二年五月二七日第三小法廷判決(民集三一巻三号四二七頁登載予定)参照)。
二 ところが,原審は、将来給付を受けるべき労働者災害補償保険法に基づく長期傷病補償給付と厚生年金保険法に基づく障害年金について、その現在価額をそれぞれ四七五万九一三二円、四六五万六一六七円と算出して右の合計九四一万五二九九円を上告人の逸失利益から控除し、上告人の被上告人に対する右請求を棄却したのである。ところで、原審の適法に確定したところによると、上告人は、長期傷病補償給付として昭和四六年二月から同四八年一〇月まで年額二〇万八〇五〇円の割合による金員を、昭和四八年一一月から同四九年一〇月まで年額二三万〇八八一円を、障害年金として昭和四六年一一月から同四八年一〇月まで年額一一万八二五六円を、同年一一月から同四九年一〇月まで年額二四万一四四七円を現実に支給されているのであつて、その合計が一二八万〇九七七円となることは計算上明らかである。
したがつて、原審の判断のうち、右九四一万五二九九円から上告人が現実に給付を受けた右一二八万〇九七七円を控除した八一三万四三二二円を上告人の逸失利益から控除した部分は、法令の解釈を誤つており、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください 。
個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。
なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代の未払い問題 、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。
今日扱うテーマは、労災保険と損害賠償の調整についてです。
この論点について、最高裁は、労災による損害賠償につき、将来支給される長期傷病補償給付金を逸失利益から控除すべきではないと判断しました。以下、判決文の引用です。
一 労働者災害補償保険法に基づく保険給付の実質は、使用者の労働基準法上の災害補償義務を政府が保険給付の形式で行うものであつて、厚生年金保険法に基づく保険給付と同様、受給権者に対する損害の填補の性質をも有するから、事故が使用者の行為によつて生じた場合において、受給権者に対し、政府が労働者災害補償保険法に基づく保険給付をしたときは労働基準法八四条二項の規定を類推適用し、また、政府が厚生年金保険法に基づく保険給付をしたときは衡平の理念に照らし、使用者は、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れると解するのが、相当である。そして、右のように政府が保険給付をしたことによつて、受給権者の使用者に対する損害賠償請求権が失われるのは、右保険給付が損害の填補の性質をも有する以上、政府が現実に保険金を給付して損害を補填したときに限られ、いまだ現実の給付がない以上、たとえ将来にわたり継続して給付されることが確定していても、受給権者は使用者に対し損害賠償の請求をするにあたり、このような将来の給付額を損害賠償債権額から控除することを要しないと解するのが、相当である(最高裁昭和五〇年(オ)第四三一号同五二年五月二七日第三小法廷判決(民集三一巻三号四二七頁登載予定)参照)。
二 ところが,原審は、将来給付を受けるべき労働者災害補償保険法に基づく長期傷病補償給付と厚生年金保険法に基づく障害年金について、その現在価額をそれぞれ四七五万九一三二円、四六五万六一六七円と算出して右の合計九四一万五二九九円を上告人の逸失利益から控除し、上告人の被上告人に対する右請求を棄却したのである。ところで、原審の適法に確定したところによると、上告人は、長期傷病補償給付として昭和四六年二月から同四八年一〇月まで年額二〇万八〇五〇円の割合による金員を、昭和四八年一一月から同四九年一〇月まで年額二三万〇八八一円を、障害年金として昭和四六年一一月から同四八年一〇月まで年額一一万八二五六円を、同年一一月から同四九年一〇月まで年額二四万一四四七円を現実に支給されているのであつて、その合計が一二八万〇九七七円となることは計算上明らかである。
したがつて、原審の判断のうち、右九四一万五二九九円から上告人が現実に給付を受けた右一二八万〇九七七円を控除した八一三万四三二二円を上告人の逸失利益から控除した部分は、法令の解釈を誤つており、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
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なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代の未払い問題 、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。