びっくりした。そして合点がいった。
4月の中旬、彼から連絡がなくなった。最初の1週間は、最近いそがしいのかなと思った。次の1週間は、ひょっとして何かあったのかなと心配になって、3週間目にはジタバタし始めた。そこから彼にメールをしたが開封した様子もない。彼の電話に誰か知らない人が出て、「彼は死にました」と言われるのが怖くて電話もできなかったが、意を決してかけてみると、誰も出ない。本当に彼はどうしているのだろう。昼間仕事中や、周りに誰かがいれば普通にしていられるが、一人になると息をするのも辛いほど精神的に参った。そんなタイミングで、私より少し年上の女友達の部屋に泊まりに行くことになって、ふたりでテーブルを挟みながら、今まで誰にも言えなかったこの苦しさを打ち明けてみた。
「あなたにはきついけど、それ、彼は自然消滅しようとしてるわ」彼女の言葉。一瞬その意味が飲み込めなかった。つきあって4年。ついこの前まで普通に話していた。何の言葉もなく終わらせてしまうほど、絆が弱いなんて想像つかなかった。第一、彼がそんなことをする人間だなんて、思いも寄らなかった。本当にびっくりした。それでも、しばらくその言葉をかみしめてみて、徐々にいろいろなことに思いが至る。そう言えば、最近ほとんどまともな会話をしていなかった。話題も、どうでも良いようなことばかり。3月から会う約束が延期されたまま。それまで、彼が電話に出られない理由ばかりを考えては心配で胸が張り裂けそうだったが、瞬時にして、鳴り続ける電話を眺める彼の顔、私からのメールを読まずに迷惑メールボックスに移動させる時の目が見えた。背筋にじんわりと冷たい汗がにじみ、そしてからだの中にストンと落ちた。ああ、そうなんだ。分かってみれば単純なことだ。そう考えれば、いろいろなことにつじつまが合うではないか。それが自然だ。
家に帰ってすぐ、携帯の彼の番号やアドレス、これまで保存し続けてきた長い長いチャットの数々、いつも連絡に使っていたメールボックス、全部捨てた。これ以上引きずっていたらだめだと思ったからだ。他に捨てるものもなかった。気づけば、彼とのつながりなんて、こんなものだ。4年間つきあったとは言っても、彼は海の向こうの人で、実際に会うのは年に1度、彼がどんなところに住んでいて、何という会社で働いていて、役職は何なのか、普段どんな生活をしているのかも、何も知らない。それでも私は、そんな形のものではない、彼という人間そのものを知っているつもりだった。私はいったい、どんな人間を見ていたのだろう。一生信頼して支え合える相手だと思い込んでいたけれど、それは、そういう幻想を私が勝手に描いていただけのことだったと、結局彼は血の通った人間としてではなく、何かのゲーム相手として私を見ていてのだと、そう理解するしかないだろう。今はまだ、それを全部納得することはむずかしいけど、これが受け入れなければならない現実だ。コツコツとひとつずつ自分の感情を整理して、消化していくしかない。
その手始めに、インターネットで、いきなり何も言わず音信不通になってしまう男性心理について、検索をしてみた。「男+音信不通+心理」。おどろいた。世の中には、なんとこの手の話が多いことか。別れを告げずに消える男って、あちこちに転がってるのだ。今日までそんなことがあることも想像できず、自分に起こった出来事にただただ愕然としてしまったが、世間にはざらにある話だったのだ。まったく世間知らずな自分を思い知ることとなった。そして、自分が悪かったと悟った。彼に何かをしたということではない。薄氷のようなまやかしの関係を現実だと勘違いし、まともな人生を歩んでいると思い込んでいた自分を反省する。4年もかかってしまったが、ひとつ勉強にはなっただろう。そんなふうに、今は自分に言い聞かせて慰めてやるしかないだろう。いつか、良いことがあることを信じつつ。
4月の中旬、彼から連絡がなくなった。最初の1週間は、最近いそがしいのかなと思った。次の1週間は、ひょっとして何かあったのかなと心配になって、3週間目にはジタバタし始めた。そこから彼にメールをしたが開封した様子もない。彼の電話に誰か知らない人が出て、「彼は死にました」と言われるのが怖くて電話もできなかったが、意を決してかけてみると、誰も出ない。本当に彼はどうしているのだろう。昼間仕事中や、周りに誰かがいれば普通にしていられるが、一人になると息をするのも辛いほど精神的に参った。そんなタイミングで、私より少し年上の女友達の部屋に泊まりに行くことになって、ふたりでテーブルを挟みながら、今まで誰にも言えなかったこの苦しさを打ち明けてみた。
「あなたにはきついけど、それ、彼は自然消滅しようとしてるわ」彼女の言葉。一瞬その意味が飲み込めなかった。つきあって4年。ついこの前まで普通に話していた。何の言葉もなく終わらせてしまうほど、絆が弱いなんて想像つかなかった。第一、彼がそんなことをする人間だなんて、思いも寄らなかった。本当にびっくりした。それでも、しばらくその言葉をかみしめてみて、徐々にいろいろなことに思いが至る。そう言えば、最近ほとんどまともな会話をしていなかった。話題も、どうでも良いようなことばかり。3月から会う約束が延期されたまま。それまで、彼が電話に出られない理由ばかりを考えては心配で胸が張り裂けそうだったが、瞬時にして、鳴り続ける電話を眺める彼の顔、私からのメールを読まずに迷惑メールボックスに移動させる時の目が見えた。背筋にじんわりと冷たい汗がにじみ、そしてからだの中にストンと落ちた。ああ、そうなんだ。分かってみれば単純なことだ。そう考えれば、いろいろなことにつじつまが合うではないか。それが自然だ。
家に帰ってすぐ、携帯の彼の番号やアドレス、これまで保存し続けてきた長い長いチャットの数々、いつも連絡に使っていたメールボックス、全部捨てた。これ以上引きずっていたらだめだと思ったからだ。他に捨てるものもなかった。気づけば、彼とのつながりなんて、こんなものだ。4年間つきあったとは言っても、彼は海の向こうの人で、実際に会うのは年に1度、彼がどんなところに住んでいて、何という会社で働いていて、役職は何なのか、普段どんな生活をしているのかも、何も知らない。それでも私は、そんな形のものではない、彼という人間そのものを知っているつもりだった。私はいったい、どんな人間を見ていたのだろう。一生信頼して支え合える相手だと思い込んでいたけれど、それは、そういう幻想を私が勝手に描いていただけのことだったと、結局彼は血の通った人間としてではなく、何かのゲーム相手として私を見ていてのだと、そう理解するしかないだろう。今はまだ、それを全部納得することはむずかしいけど、これが受け入れなければならない現実だ。コツコツとひとつずつ自分の感情を整理して、消化していくしかない。
その手始めに、インターネットで、いきなり何も言わず音信不通になってしまう男性心理について、検索をしてみた。「男+音信不通+心理」。おどろいた。世の中には、なんとこの手の話が多いことか。別れを告げずに消える男って、あちこちに転がってるのだ。今日までそんなことがあることも想像できず、自分に起こった出来事にただただ愕然としてしまったが、世間にはざらにある話だったのだ。まったく世間知らずな自分を思い知ることとなった。そして、自分が悪かったと悟った。彼に何かをしたということではない。薄氷のようなまやかしの関係を現実だと勘違いし、まともな人生を歩んでいると思い込んでいた自分を反省する。4年もかかってしまったが、ひとつ勉強にはなっただろう。そんなふうに、今は自分に言い聞かせて慰めてやるしかないだろう。いつか、良いことがあることを信じつつ。