霧舎事件 | GreenCatalyst

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霧舎事件ってご存じでしょうか。
台湾総督府時代、日本人の現地警察が治安はもちろんのこと教師まで務めていたそうです。
日本人が入るまで、原住民族が乱立していた台湾では、日本人によってちょうどいい形に統合がもたらされわりと歓迎をもって迎えられたそうです。
しかし一部には原住民族との諍いも絶えない地域もあったとのこと。
当時、台湾総督府にいたという方に、現地に伝わる伝説を聞いたことがあります。
霧舎事件では、日本人学校の運動会を、原住民が襲撃しました。日頃の日本人の仕打ちに不満を募らせていた原住民の蜂起です。
その殺戮の最中、ひとり泣きながら運動会の行進曲をピアノで演奏する者がいたという話が、現地日本人に伝わっていたというのです。
彼は、優秀なのが認められて警官、教師役として就任した原住民でした。
襲撃を事前に知っていたのか知らなかったのか、それはわかりませんが、彼の心中は想像できるような気はします。
どうすることもできずただ演奏を続ける。とても無力で悲しい境遇。
わたしは日本人ですが、彼に共感して、原住民目線で物語を描いたことがあります。余裕で落選しましたけれどね。
マージナルには軋轢が集積する。価値観に引き裂かれる人々はいつも無力。
ただ全体像が見えれば、それを内包する価値観を紡ぐことができるかもしれないのに。