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ふたり女子会は蜜の味…? 〜 その① 〜





パリを旅行中の、類くんとつくしちゃん。
今夜は静さん宅でのディナーに、お呼ばれをしました。
しかし、類くんと静さんの旦那様が交わす難しいお話は、どうもつくしちゃんには、チンプンカンプン。
内容についていけず、退屈隠れアクビなどもしてしまったりして。
すると、そんなつくしちゃんに気づいた静さんが、女だけの話をしましょうと、自室に招いてくれました。
ベッドに並んで座り、サイドテーブルにワインとちょっとのおつまみを置いて。
さあ、2人だけの女子会が始まります


そうね改めて昔を思い返してみると、私が類を異性としてきちんと意識したのは、牧野さん… 貴女と出会ってからだわ。 

本当よ?     
それまでの幼馴染みとしての付き合いの中では、彼をオトコの人として意識したことは、本当に一度も無かったの。
だけど、一番仲のいいそして、一番気になる弟ではあった。    
司や総二郎、あきらとは違う思いで、私を慕ってくれているのも知って居たから。
なおのコト、可愛い愛おしいと思っていたわ。

類と初めて会った時のことは、今でもはっきりと覚えている。
私のピアノの演奏会に、お母様に連れられ来てくれたのよ。
私の幼稚舎卒園記念の会だったから、彼は4歳になったばかりの頃ね。
演奏会といっても、お客様100名程のサロンパーティだったから、会場内は何処と無く自由で、少々騒ついてもいたのだけど。
その会で類は、私が演奏している最中に突然、ヴァイオリンを弾き始めて。
私のピアノに合わせ、客席から。    
前触れもなく、本当突然に。
ええとても驚いたわ。    
突発性というだけではなく、その演奏にも。
彼の年齢を忘れる程に、とても素晴らしいものだったから。
一瞬にして周囲の騒めきが消え、皆の視聴が、類と私に集中したのが解った。
その中でも類は、曲を完璧に弾きこなして。
私に感嘆の思いを懐かせたわ。

それからよ。   
我が家へ頻繁に、あの子達が遊びに来るようになったのは。
ひとりっ子である私に、両親の期待はとても大きくてね。
幼い頃から、ピアノ、ヴァイオリン、生け花、舞踊と、沢山の習い事を受けていたから。
普段、お友達と遊ぶ機会など、私には全然無かったの。
だから彼らと触れ合う時間は、とても楽しくそして、新鮮だったわ。
大人ばかりに囲まれている生活に慣れしてしまって居た私にとって、普通の子供らしくいられる唯一の時間であったから。
とても大切だった。   
あの子達も、あの時間も。

牧野さんは知っているわよね?    
幼い時の類のこと。
4人の中で一番、線が細くて病弱で。
ううん。    
病弱と云うより、ココロの病ね。
少しでも無理をしたり、追い詰められたりすると、直ぐに体調に出てしまうの。    
発熱や嘔吐… 倒れてしまったりって。
だから尚のこと、他人と接するコトを怖がって。
何時も誰かの後ろに隠れているような、そんな控えめな感じの子になっていたわ。

でもね、私類って。
あの子達の中で一番「自分」を持っている一番、芯がしっかりしている子だと、昔から思っているの。
その自分の「世界」を保とうとして… それで、現実との狭間で苦しんで。
結果、他人との間に壁を作り、自分の世界に閉じこもる様になってしまったけれど。
だけど、ヴァイオリン音楽を奏で始めると、とても雄弁で、感情豊かで。    
聴く者全てを、惹きつけていく。
彼だけが醸し出せる魅力を、無意識に放ちながらね。
総二郎やあきらが、類を救ったのは私だなんて言っていたけれど、それは違うわ。
私は、彼が求める世界に寄り添っただけ。
彼の「世界」を、私という人間を通して、他の人に肯定しただけなの。
具体的に言えば、彼のヴァイオリンの声に合わせてピアノを奏で、会話をする。
感受性に合わせ、自然に触れたり物を作ったりそういった行動を、共にする。
たったそれだけの事しか、私はしていない。
今魅せる、類の強かさ、柔らかさそしてあの子が纏う独特の空気は、あの子天性のモノ。
逆に私の方こそが、此れまでずっと、その空気に癒され、また、彼の強さに助けられて来たの。

事実、私が藤堂を出るコトを決心するに当たって、最終的な決め手となったのは、類から受けた一言だった。
ほら道明寺様のクルーザーに乗って、皆で熱海に行ったでしょう?
あの時に言われたのよ…「偽善者」って。
言われた瞬間は、とてもショックだった。    
誰よりも自分を慕ってくれていると信じていた子に、突き放された気がして。
本当動転したわ。
でも、目醒めさせられた気もしたの。
あの一言に、私がずっと懐いていた「自分の存在に対する不安感」全てが、凝縮されているって気付いたから。
私は幼い頃から「自由になりたい」と、いつも口にしていた。   
いつか藤堂の家を出るという思いも、漠然ではあるけれど、ずっと懐いていた。
でも何処か、それを諦めている自分も居たの。
でもね、類の言葉を受けて、私は口先だけで何もしていないのだと気付かされた。
偽善者だなんてそんな事を思われたままの人間で居ていいの?
周囲の人間の顔色を見ながら、ただ愛想を振りまくだけの人生
本当にそんな生き方で、私は満足なの?って。
そして、思ったわ。    
誰にも恥じる事のない自分になりたいって。
私は私として藤堂静では無く、ただの静として、皆に認めてもらいたいって。
だけど、藤堂という家に庇護されている限り、
私という人間は「藤堂の娘」としか見てもらえない。
何をしても、金持ち娘の我儘道楽だとしか、思われない。
だから、藤堂というハイソサエティを、まず捨てなければいけなかった。
藤堂という鎧を脱いで、身ひとつの私で。
ただの「藤堂静」として、生きていかなくてはって。
そして、そうしなければ、類にも一生認めてもらえないと。
あの子には、嫌われたくないずっと私の傍にいて欲しいって。
そう、思ったの。

その後はご存知の通りよ。
決心が鈍らないうちにと、すぐに行動を起こしたわ。
大学転学やモデル業の契約などの細かい手続きも、全部自分で行なって。
パリの空港に降り立って、改めて決心したの。
此れからは自分の力で、幸せを掴むんだって。
そして、牧野さんや類司、総二郎、あきら。
私を支えてくれた方達に、恥ずかしくない生き方をしようって。
実際、不安の方が大きかったのだけれど。
それでも私は、自分の力で、一歩を踏み出した





※  此のお話、アメブロさんでは再UPせず封印しようかなと思っていたのですが… やはり green 、静さん好きなので照れ 語って頂きましたあせる 静さん苦手という方、多いと思うのですが… ごめんなさいあせる どうかお付き合いくださいねおねがい