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Rain 6
 
 
 
 
 
【 つくし 】
 
 
不思議だな… って、思うの。
他人に触れられるコト… あんなに怖いって、思ってたのに。
 
何でかな… 西門さんの掌からは。
全くそんな気持ち… 起こらなくて。
 
逆に…。
 
… もっと、触れて。
もっと、抱き締めて… って。
 
そう… 思う。
 
 
西門さんは、その発言の通り。
あたしの 「なか」 に、無理矢理踏み込んで来ることは、無くて。
 
軽やかな、キスの雨。
額 (ひたい)に… 頬に。  … 唇…に。
たくさん… たくさん。  … 降らせた、後。
 
緩やかな曲線を描く、首筋。
微かに突き出した、舌先… ゆっくりと、伝わせ。
 
なだらかな丘の、麓。
 
… 「チクリ」 …と。
 
あたしの肌… 甘噛みして。
 
『… ひゃ…っ。  … くすぐったい』
 
瞬間。
あたしはこそばゆさから… 小さく肩を竦ませるのだけど。
 
すると、彼は。

 
『バカ… 擽ってんじゃねぇぞ?
 …… 「愛して」 んだ』
 
『……。  「愛して」 …?』
 
『そう… カラダを、通して。  お前を 「愛する」 … そういう 「行為」。
 …… だから。  お前も感じ取れ。
 この… 触れる唇、掌… 肌の熱から。
 俺の 「想い」 …』
 
『……』
 
… 再び重なる、暖かな唇。
混じりあう… 互いの吐息。
 
あたしは神経を研ぎ澄まし… 彼の 「愛情」 を感じようとする。
 
… 「こそばゆさ」 は、徐々に。
… 「甘美な刺激」 へと、変わり。

 初めて感じる… 陶酔。
胎内に蓄積し、気管を圧迫していく… 昂揚。
 
『……。  … ん… んっ…!
 … あぁ… っ…!』
 
あたし、無意識のうちに。
… 甘い嬌声… 溜め息、迸らせ。
 
西門さんに… 縋り付いて。
 
……。

… 結ばれる。

初めて迎え入れる… 異なる 「モノ」。
カラダの中心に、留まる 「熱」。

痛みの 「涙」 は、幸福の現れ。

待ち焦がれた 「彼」 …。
… 「それ」 を、享受出来る喜びの方が。

気持ち… 勝るから。
 

……。

密着する肌… 絡み合う汗。
まるで、ふたり… ひとつに、融け合うような。

……。

 
その夜、あたしは。
今まで溜めていた、不安や憂い… 全てを、心中から忘却し。
彼の胸元から聴こえる、心地好い音韻に包まれながら。
 
… 穏やかな微睡みの世界に、浸った。
 
至福の想いを… ココロに抱いて。