【 Rui 】
『つくし』
『類! … ん? えーっ!?』
露天風呂で再会したつくしは、俺を見止めた途端、突如、顔色を豹変させて。
慌てた様子で、俺の元へ走って来る。
『?』
「どうした?」… そんな疑問より、俺はつくしが滑ったりしないか… そちらの方が気になって。
思わず両腕を広げ、彼女が来るのを待ち構えた。
『ひゃうっ!』
案の定つくしは俺の目の前で石に滑り、胸元にぶつかるようにして倒れ込んで来る。
『何やってんの?』
彼女の動揺の意味が解らず、呆れ気味に呟く俺に、つくしは顔を紅らめ、興奮の様相を魅せながら言葉を返してきた。
『何やってんの?… じゃ無いよ、類!
みんなに丸見えじゃん!』
『え?』
『はだか!
そんな堂々と見せてちゃダメだってば。
お湯に入って居る時以外は、隠すの!
周りの人も… 恥ずかしいでしょ?』
『??? 何で?
湯の中では隠さないのに?』
『お湯の中では見えにくくなるから、いいの。
… ともかく早く! タオルで隠して!』
『……』
そう言われてみると、つくしと入ってきた女性ふたりも、先に入っている男性も、目のやり場に困っている様子。
不自然な動作で、俺達から視線をそらしている。
… 変なの。
それじゃ、何で「大浴場」やら「混浴」なんて作って入るんだろ?
水着で入る、スパみたいなモノでいいじゃん。
… そして、ふと気付く。
『後ろ… 丸見えじゃん、つくしだって』
『ひゃっ!』
慌てる彼女に掌を取られ、露天の湯へと浸かった。
先程の内湯の湯船も充分に広いと感じたが、混浴露天風呂の湯船は、更に大きなモノだった。
桧原湖の浜辺から見て、高台の位置に作られている「湯処」。
露天風呂からは、ホテルのサービスアトラクションか、美しい色彩でライトアップされた桧原湖が一望出来る。
湯船の材木として使用された桐の木のモノと思われる香りが辺りに漂い、また、内湯よりも少し温めになっているお湯は、長時間湯船に浸かるのに適した絶妙な温度であるように感じた。
… ふ、わぁ。
やっぱ温泉って、気持ちいい。
此れで冷たいビール… つまみにきゅうりでもあれば、最高なのに。
… あれ?
それって何時も夕食に、つくしが出す「庶民のツマミ」。
弁当といい、ツマミといい… 俺の舌は、完璧「つくし色」に浸食されてる。
弁当といい、ツマミといい… 俺の舌は、完璧「つくし色」に浸食されてる。
『洋子さん… また持って来たの?』
俺とつくしの近くに身体を沈めた女性ふたりが、風呂に「何か」を持ち込んで、何やら始めようとしている。
年格好から言って「洋子さん」と呼ばれている方の女性が、昨夜のあきらの相手らしい?
『1日の疲れを癒やしてるのよ、いいじゃない?
昨日は「此れ」がご縁で、あの人達とも親しくなれたんだから』
… うん、間違いないみたい。
それに、確かに強そ。
そういうコトが「久しぶり」な理由も、分かる気がする。
しかし流石「ストロベリートーク」「玄人キラー」の、あきら。
下はあの妹達の年齢から、上はこんな50代近いお姉さんまで… どんな年代でも「イケる」ってコトか。
… 俺には絶対、真似出来ないけど。
… 俺には絶対、真似出来ないけど。
『そりゃそうですけど。
支配人に見つかったら大目玉ですよ』
そうなると、こっちが総二郎の相手?
… あれ? 此の子?
あきらを俺達の部屋に、連れて来た子じゃん。
なる程… 流石、総二郎。
先に若い方を、チョイスしちゃったってワケか。
なる程… 流石、総二郎。
先に若い方を、チョイスしちゃったってワケか。
『大丈夫よ。 見つからないって。
皆さんもよろしければ、ご一緒にいかがですか。
そちらの男の方も、是非…』
そう言って「洋子さん」が桶に入れて、俺達に提示してきたモノは。
…「冷酒」と「キュウリ」…
『え? いいんですか? うわぁ、月見酒だぁ!』
真っ先に食いついたのは、つくしだった。
… え? 飲むの?
妊娠中だってコト… こいつ完璧、忘れてるな?
『つくし』
俺の呼びかけに、ハッとしたように動作を止める。
そしてバツが悪そうに、俺を見詰めながら…。
『そうだった… あたし、飲めないんだ』
… と、小さく呟いた。
今にも泣きそうな顔をして… なんだか俺が悪者みたい。
『あら… 残念だわ。
此のお酒… 地酒なんですけど、美味しいんですよ。
是非、お味見して頂きたかったのに』
是非、お味見して頂きたかったのに』
『え~、そうなんですか? うぅ…。
類… ちょっとだけ。
類… ちょっとだけ。
お猪口… 一口だけでいいから』
『……』
… まったく。
あいつらが「落とした」相手に、ウチはつくしが「落とされてる」よ。
まぁ、飲み過ぎなければ多少の飲酒は構わないけどさ。
俺が小さく溜め息を吐きながら頷くと、つくしは満面の笑みを魅せて「洋子さん」から冷酒入りの猪口をふたつ、受けとった。
……。 … 美味い、確かに。
日本酒特有の甘み… サラリとした飲み口。
此れじゃいくらでも飲めちゃいそうだ。
つくしを見れば、幸せそうに此の「一口」を、噛み締めていて。
「もっと」… そんな物欲しそうな表情も、浮かべているけど。
『つくし、もう止めなね?』
『うん…』
俺の牽制の言葉に、素直に猪口を返した。
その後、俺達は湖畔側で。
「洋子さん」達と先に入っていた男性は、俺達とは離れた場所で、各々風呂に浸かる。
『明日には、帰らなきゃいけないんだね』
『……』
『2日目… 順平入れたら、1日目からか。
ずっと誰かしら、知り合いがそばに居て。
類とふたりっきりの旅行って感じ… あまり無かったの、残念だったけど。
… なんか色んなコト、考えさせられて。
また来たいな… 福島に』
… なんか色んなコト、考えさせられて。
また来たいな… 福島に』
『うん…』
つくしは湖を眺めながら、少し寂しげに、そう呟いた。
【 Tsukushi 】
湖面を渡り湯処に届く風は、春とはいえ未だ冷たく。
湯から上がりその空気に身を晒すと、瞬く間に身体が冷えていく。
身体の保温と冷却とを繰り返し、類とふたり、他愛も無い話をしながら湯船に浸かって居ると、何時の間にか奥で飲んでいる3人は、宴会の様相を呈していて。
… というか「洋子さん」が若いふたりに絡んでる?
昨夜、美作さんともあんな感じだったのかな… なんて思いながら、あたしは3人を眺めていた。
その時。
『ひゃっ!?』
『こら… 余所見なんてしなくていいから。
「ふたりきり」… 味わお?
未だ味わい足りないんでしょ、あんた?』
『ちょっ…』
何時の間にか背中に密着し、耳元に囁きを寄せる、類。
後ろから伸びて来た彼の掌が、あたしの胸を包み、その指先で頂きの蕾を弄る。
一瞬にして固く… 綻びそうな程に膨らむ「蕾」。
『やだ、類… みんなに見えちゃう』
『湯の中は見えないって、言ったの… つくしじゃん?
それに「混浴」なんて… その気になら無い「ワケ」… 無い』
『だからって、此処で…?
… っ! あぁっ…!』
小さな抵抗の言葉を口にした途端「蕾」を強く摘まれ、あたしは思わず身を震わせながら、声を発した。
『… っし。 声、出すな。
聴こえるよ? … みんなに』
『そんな… ムリ… お願い… 止めて?』
『ダメ… 止めない。
見せて? あんたが感じているトコ。
快楽に堪えてる表情(かお)… 全部』
『……』
耳元で囁かれる声。
それだけでも体内の昂りは、増してゆくのに… 身体の紅潮を、止められなくなるのに。
…「他人に見られてしまうかもしれない」…
そんな異常な状況… そして、あたしが感応を魅せる場所を弄り続ける、類からの愛撫に。
あたしの精神状態は、有り得ぬ程の興奮を示して。
瞬く間…。
『んっ! ふ… あぁっ!』
口元… 抑えてはいたけど、きっと声、漏れてた。
「洋子さん」以外のふたりが、訝しげにこちらを見詰める。
だけど、あたし達の様子に全く気付かない洋子さんの「乾杯」の声に、再び意識をそちらに向け。
何事も無かったかのように、あたし達から視線を逸らした。
『……』
安堵と共に脱力したあたしを、類は一度愛撫の掌を止め、抱き支える。
そして…。
そして…。
『つくし… 早すぎ。
未だ俺、あんたの「コト」全然、見れて無いよ?
続ける… いいね?』
『… え?』
耳元から頬にかけて淡いキスを降らせた後、再び胸元を、掌で包むようにして揉み始めた。
その掌は、徐々に下腹部へと伝ってゆき、遂にはあたしの「陰」の場所へと到達する。
『類…! … や!
お願い… せめて向こう… 行かせて!』
あたしは湯の中を動き、皆から死角となる場所へ、逃げようとした。
しかし類は…。
『ダメだって… みんなに魅せるんだよ、つくしが「感じる」姿を。
イヤなら… 我慢しな?』
… そう呟きながら、あたしの身体を拘束し、陰の場所に溜まる泉を、その指先で掻き乱してゆく。
彼の指に誘発され、あたしの泉からは柔らかな液体が溢れ続け、傍らの蕾は綻びも間近に、敏感な花心を剥き出しにしていた。
『類…!』
『ほら… その泣きそうな、濡れた瞳。
それ… 好き。
あんたの黒い瞳、煌めいて…。
あんたの黒い瞳、煌めいて…。
… 惹かれる…』
『!!』
類から与えられる刺激と、官能を擽る言葉に、あたしは昂りを抑えられなくて。
『いやぁ…! だめ…!』
彼の指先が花芯の先端に触れた瞬間、 意識をプツリと途切れさせた。
※ すいません… こんなのばかりで。