桜の記憶  prayer 19





『あんたが他人といるなんて… もう考えたくない。
 あんたが笑顔でいる時も、悩みにぶつかった時も… 涙を流さずにいられないコト、あった時でも。
 俺があんたの傍に居て、あんたを見ていたい… ずっと。
 共に想い… 分かち合いたい』

『……』

『… 笑顔で居てくれるなら其れでいいって、思ってた。
 でも、もう、他人(ひと)任せにはしたくないんだ… 
あんただけは』

『… る… い…』

『… 俺達はもう、子供じゃない。
 今、あんたを攫うコトは簡単だけど、そういう訳にいかないコト… わかるね?
 でも… 誓うよ。
 迎えに行く… 必ず。 
だから… 待ってて?』

『……』


類はつくしの瞳をしっかりと見つめながら、囁きを続ける。
そして最後に… 涙が溜まるつくしの目尻に啄むようなキスを落として、耳元に其の唇を寄せた。


『待ってて… くれる?』


類の問いかけが、つくしの鼓膜を震わせる。

… つくしの答えは「ひとつ」だ…。


『… うん… 待つよ。
 何時まででも、待ってる…』


再び視線が絡む、薄茶と漆黒の瞳…。


… あたしたちは、互いに導ける者… 補える者。
 
共に居ることは、必然で。
 
互いが無くてはならない…「半身」なのだから…。


つくしの応えに、類は笑った。

少年のような笑顔を魅せながら、額をコツンとつくしに当てて。
今度は冗談を話すように、呟く。


『今は… さ?
 … 受け入れて欲しいんだけど、俺を』

『え?』

『… やっぱり忘れてる。
 ホントに、あんたの一部になってるかもね。
 俺… 動いていい?』

『あ… やだ…』


つくしの頬が、急激に紅く染まる。
類はクスクスと、笑い続けて。


『かわいい… 牧野。 … 愛してるよ…』


そう言って、唇に深い口づけを落とした。


類の左掌が、つくしの足元に移る。
其の掌は膝裏にそっと添えられ、ゆっくりとつくしの脚を持ち上げた。


『… あっ… ん…!』


類の「半身」の位置が変わり、つくしの胎内… 新たな場所を刺激する。
突然の愛撫の再開に、つくしは強烈な官能を感じ、また、激しい感応の姿を示した。

… 類を包み込む襞が、急速に緊縮する。


『… っつ!』


其の締め付けに、思わず類は喘声を漏らした。
類自身が動かずとも、つくしの内部の襞が細かな痙攣を起こし続け、類の半身に絶えず刺激を与えるのだ。

… ヤバ… 「良すぎ」。
此んなの、俺が保たない…!

類は焦燥にも似た思いを抱きながら、腰を動かし始めた。


… 何故、こんなにも感じるのか?
俗な話ではあるが、こんな「快感」を知ってしまったら、尚更こいつから離れられるわけがない。

…「男」として、心と身体が求める「女」は…。

… 此の世で「つくし」… ただひとり、だけなのだから…。


挿入と抽出を繰り返しながら、類の昂揚感は更に増幅してゆく。

己の五感全てが「半身」に集中していく感覚。
… 余りの刺激に、鳥肌がたち。
全身がつくしに包まれ、愛撫されているかのような… そんな錯覚すら、起きてくる。


受け入れるつくしにもまた、「波」が打ち寄せて来ていた。

類の半身に触れる、襞から伝う振動。
腹部に溜まる、圧迫感。
声に出して、緊張を発散させてしまいたいのに。
其の昂奮に、喉元まで締め付けられているようで…。
 
… 声が出せない。

… いや、出ているのかもしれない。

そんな自分の状態すら解らなくなるほど、脳にまで繰り返し押し寄せてくる快楽に、つくしはただただ溺れるしかなくて。


間もなく、瞳の中… 眩い光が幾重にも射し込んでくる。
頭の中が其の光で満たされ… 真白の煌めく世界に、飲み込まれたような、放り出されたような… そんな感覚。

何も、考えられない… 考えたくない。
心地よくて… ずっと此の世界… 漂っていたくなる。

……。


『… 牧野?』


類は、突然意識を手放したつくしを、心配気に呼んだ。

… 類の動きに合わせて、身を捩りながら享楽に耐えていた、つくし。

類の半身は、つくしから溢れ出る蜜… 発せられる熱に包まれ、自身でも驚く程の昂りを魅せて。
更につくしの一番深い場所を探り其処から得る快感を知ると、何度となく其の場所に向かい半身をぶつけ、快楽を享受し続けた。

… つくしは其の都度、激しく悶え、叫びにも似た嬌声をあげ。
類の動きが緩やかになった後も、薄紅色に染まった身体を小刻みに震えさせ、荒い息使いを残し続けて…。

… そして、終焉の時。


『… 類、体が熱い…。  
 足の感覚が… 無くなってる…』


そう呟きながら、爪先を硬直させ。
類の腕を握る掌の力が強まってゆく… 肌にはキツく、爪が立てられ。
息使いも一段と激しく… 喘ぎの声も、途切れるコト無く発せられて…。


『… あっ… ああっ…!』


そして、最後… 何かを求めるような声をあげ、大きく体を震わせながら、つくしは達した。

急激な脱力… 類の腕を握りしめていた掌が、力無くベッドに落ちる。
息はあがり、身体は無防備に投げ出され…。

それでも類を包む場所だけは、未だに半身を締め付け続け、一際沢山の蜜を溢れ出させていた。


……。


… 類の呼びかけに、つくしは瞼をあける。
涙で滲み、焦点が合わないでいる瞳…。


『類… ごめん…。
 力… 入んないよ…』


呟きながら、類の身体の下… 小さな身震いを起こした。

… 未だ類の動きに、感応し続けるつくしの身体。

類は、顔にかかる汗と髪を拭ってやりながら、囁く。





※  すいませんガーン すいませんえーん すいませんガーンえーん そしてやはり、つくしちゃん羨ましい…おねがい
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