桜の記憶  prayer 17





つくしの「願い」を受け、類はつくしの泉に向かい、緩やかに腰を沈めた。


『… は… んっ…』


… つくしの口からは、甘美の声が漏れる。

類と繋がりを持てたコトに幸福を感じ… そして、快楽を得て。
遠回りしてきた「想い」の成就に、瞳には涙が溢れる。


… 類もまた、似た思いを抱いていた。

これまで封印してきた「想い」。
つくしが幸せであることは、自分の幸せであると思い込もうとしてきた。

しかし、歳を重ねる毎に募る「愛しさ」。
時の経過と共に忘れられると思っていた「心」は、逆に増幅していく彼女への「想い」で占められている。

… 男として欲情を感じるのは、つくしに対してだけで。
類にとっての「今日」… そして此の「瞬間」は「未来」への希望に繋がっていた。


… それが百万分の一の確率だとしても、信じたい。

桜の下で交わした別れのキス… 光溢れる場所での別離。
あの時の絶望を思えば、こんな幸福な時間を持てるコト自体、奇跡なのだ。


… 今は、この余韻に浸っていたい。  
… 先のコトなど、考えずに。

二人で居られる此の時間を… 此れからの「糧」に、出来るよう。   

… 「二人で紡ぐ」未来の為に…。



… 類はゆっくりと、腰を動かし始めた。

つくしの中から溢れ出る蜜は熱く… また、其の襞は小刻みな痙攣を起こして、類の半身を刺激し続ける。
快感に堪え切れず、つくしの上に覆い被さるようにして身体を倒した。
… 類の表情がつくしの瞳に映り込む。

表情… 唇を噛み締め、眉間に苦悶の色を漂わせて。

そんな類の表情(かお)を見止めたつくしは、自身も喘ぎを繰り返す状態でありながらも、そっと類の頬に両掌を寄せ、囁きをかけた。


『… 類…? ねぇ… 苦しいの…?
 つらそうな顔… してる…』


類は腰の動きを止めずに一度大きく息を継ぐと、微笑を浮かべ応えを返した。


『… そう? … そうかも。
 あんたの中… キツい。
 すげー… 締め付けてくる…』


呟きながら、唇を重ねてくる。
二人… どちらからともなく舌を絡め、口腔を弄りあい。

繋がる口元… そして、身体。
… ひとつに溶け合ってしまいたいという想いが、二人の昂揚感を煽ってゆく。


類はつくしの片膝を裏から持ち上げ、更に挿入を深くした。


『あぁっ!』


つくしの一番奥の場所にまで、類の半身が到達する。
激しい刺激が、つくしを襲った。


『くっ…!』


それと共に、つくしの中の収縮が一段と増し、類を締め付ける。

… 類の呼吸が、荒くなってゆく。
つくしの… 絶えず発せられる、甘い喘ぎ声。

二人の「生きた声」だけが響く、琥珀色の部屋は… まるで現実味が無く。

…「異空間」の様相を感じさせる。


… 此れは…… 夢?…


今… 結ばれている相手は。
互いに一番欲していながらも、一番手の届かない… 遠い存在だった者。

それが今、掌が触れるところに… また自分の下に、存在している。


『……。 類… だよね?』


息を切らせながら類の髪を軽く掴み、つくしが問う。
其の問いかけに、類は徐に腰の動きを止めると、つくしの黒髪を梳きながら、額へのキスと共に囁きを返した。


『… きっと同じコト… 考えてた。
 あんたを抱けるなんて… 奇跡だって。
 夢なんじゃないか…ってさ…?』


頬に触れるつくしの掌を握り、口付けをする。
そして、そのまま其の掌を頬摺りしながら、言葉を続けた。


『俺は此の奇跡を… あんたとの未来に繋げたい。
 今夜、あんたが俺の所に来たコト。
 こうして抱いているコト… 全てが必然なんだって。
 今は… そう、思ってる』

『……』


突然、繋がった状態のまま、類の左腕がつくしの腰の下に回された。


『きゃぁっ!』


急な振動に、つくしの嬌声があがる。
類は右腕でつくしの肩を抱えると、そのままカラダごと抱き起こし、膝の上に座らせた。


『… んっ…』


つくしの秘部から、蜜が溢れる。
類の体を跨ぐように座らされ… 初めて経験する体位に、つくしの羞恥心が増していく。

… しかし其れ以上に、腹部に溜まる「緊張」が、つくしの心を掻き乱した。


『… 牧野? つらい…?』


類は覗き込むように、つくしの瞳を見つめる。

漆黒の瞳は、滲む涙で潤み…。
ベッドの傍らに置かれたルームライトの灯りが映り込み、其の煌めきを更に増していた。


『ううん… 大丈夫…。
 こんな風に抱かれるの、初めてで…。
 な… んか… 変な感じなの… んっ…!』


類が少し体勢をずらしただけでも、つくしの体は反応し、震えを起こす。
それでも尚、息を途切れさせながら類の耳元に唇を寄せ、囁きを続けた。


『類が、あたしの中にいるって… 凄く幸せだよ。
 繋がるコトで… こんなに想いを感じあえるなんて。
 あたし… 知らなかった…』

『……』


其れ以上は言葉に出来なくなったのか、つくしは類の肩にもたれかかり、悦声をこらえるかのように類の肌に軽く歯をたててくる。

類はつくしの体を抱き寄せ、しっとりとした黒髪を指に絡めて梳きながら、何度も頭を撫でた。
… そして間も無く、黒髪に唇を押し付けるようにして、呟く。


『… 牧野、此のまま自分で動いてみて…?』

『え…?』


つくしは首を傾け、キスする寸前というくらい、直ぐ傍にある類の顔を見つめた。

… 薄茶の瞳が光を通したビー玉のように輝き、つくしの瞳を映し出している。


『… 自分で動いて… 俺を感じて?
 あんたの思うままに…』





※  ふたりとも「経験者」なので…色々させてみたくて(何を?)ラブ すいません、嫌悪感を懐かれてしまったら直ぐにスルーしてくださいねえーん 感想コメント・いいねポチ、よろしくお願いいたしますおねがい