映像的に『ヴィレッジ』と近い映画なんだけどね、2015年の映画『ウィッチ』。

 

「魔女」をテーマに、赤子をさらわれた家族が次第に狂気の淵へと

転落していく姿を描き、

第31回サンダンス映画祭で監督賞に輝いたファンタジーホラー。

1630年、ニューイングランド。ウィリアムとキャサリンの夫婦は、

敬けんなキリスト教生活を送るために5人の子どもたちと

森の近くにある荒地へとやって来た。

しかし、赤ん坊のサムが何者かに連れ去られ、行方不明となってしまう。

家族が悲しみに沈む中、父ウィリアムは、娘のトマシンが魔女ではないか

との疑いを抱き、疑心暗鬼となった家族は、狂気の淵へと転がり落ちていく。

(映画COMよりあらすじ部分の抜粋)

 

 

キリスト教映画。←こういう括りはないかもだけど、

個人的に『ツリーオブライフ』『7つの贈り物』、エクソシスト系映画の一部、

ギリギリでブラピの『セブン』くらいまでをキリスト教映画に入れている。

 

言葉では説明しにくいもののいわゆる悪魔系を怖いと思うのは、

幼少期の教育のなせるわざなんだろう、と思う。

そして、キリスト教の教えは、宗教の中で一番洗練されてると思うのだが、

その一方で、キリスト教徒の方々は、あまり好きではない。

牧師とか神父とか、そういう連中はかなりの確率でOKだが、

キリスト教徒に限らず、「自分は〇〇教徒です」、と宣言することで、

何かを免除されようとしたり、何かを押し付けようとする人々が嫌いなのだ。

だから、敬虔なキリスト教徒とか、〇〇教徒が、

その宗教における悪魔に騙されて被害にあう映画は、

同情しないばかりか「だーからダメなんじゃん」という感想を持つ。

 

家長のポジションの人間の独断で、家族を隔離しても、

貧しさや、つつましさに納得しなくなったら、そこで崩壊するんだよ、

無理に収めようとすると、誰かのせいにしたり、

怒りの矛先を、家族の中から選んだ「生贄」に向けさせちゃったり、

そういう、本来の信心深さとはかけ離れたところに終着しちゃうわけだよ。

生贄ポジションになっちゃった長女が、ラストで

Sabbathで(←日本語訳を探したら「魔女あるいは悪魔崇拝の集会」となってた)

魔女に取り込まれてしまうのだが、「ほら見ろ」感がすごい。

両親狂ってるしな、それにすべてのストレスを彼女に向けてたしな。

悪魔の仲間になった方が、幸せだよ、きっと。

 

宗教のように、何かを盲目的に信じるってことは、

その分、自分で善悪を深く考えなくなることで、

その時点で何かが正常ではないんだと思う。

 

なお、主人公の少女、トマシンは処女性が高くて、清楚だけどもプチ妖艶で、

周りに女のいない兄弟の性欲の対象⇒彼らの罪悪感、につながってしまうのは、

ちょっとサロメっぽいと思ったり。

 

 

 

 

 

 

同じタイトルの邦画もあるのだが、これはシャラマン監督の古い映画の方。

ザ・ヴィレッジとか最近の邦画のやつとか、山ほど出てくるけども、

ヴィレッジ』は、ヴィレッジ2004と検索すると出てくる映画。

一度見たことはあったのだが、記録を書いていなかったのでここで。

 

「サイン」のM・ナイト・シャマラン監督の最新作。

1897年、米ペンシルバニアの小さな村。村の周囲を取り囲む森には

恐ろしい存在がいるため、村人が森に入ることはタブーとされていた。

だが、村で皮を剥いだ動物の死骸が発見され、

誰かがタブーを破ったのではないかという疑惑が持ち上がる。

(映画comよりあらすじ。wikiの説明はラストまでネタバレしてます)

 

 

ざっくり、戦う赤ずきん、ただしフードは頭巾の色は黄色。って映画。

 

 

あらすじは知っていたが、とても面白かった。

(以下、初見時の感想も交え)

B級ホラー映画が好きな私は、途中までホラーとして面白く観ていた。

赤いフードの森の化け物と、黄色い頭巾をまとった村人たちの対比、

何に襲われているからわからないものの、

皮を剝がれた羊がその辺に捨てられている様子、

極端に赤いものを嫌う古い風習など、厳しい掟に支配された村。

つつましく、幸せでもあるが、1800年代の不自由さがそこここに広がる。

当然、遠い町まで行かないと薬を得ることはできず。

その町に行くまでの間には、怪物のいる恐ろしい森がある。

 

ネタバレしてしまうと、現代(2000年代)の暴力沙汰で身内をなくし、

現代に絶望した人々が村を作り、

富豪の財力で外社会との接触を断って暮らしているというのが真相。

それを知らない子供世代が、町(保護区エリア外)に行かないように、

あれこれ掟を作っていただけ――なのだが。

 

ディックの『時は乱れて』も似た感じの村が出てくるんだけど、

『ヴィレッジ』は村の存在意義の説得力が幾分弱いかな、とは思う。

大富豪が「文明は敵だ」と、文明を捨てた保護区を作るにしても、

そしていくら有志だけがその村に住むことにしても、

次世代や子孫が生まれた後にも村内だけで終始するには、

何かと無理がありそうに思う。 

てか、それで綻んでこの映画みたいになった、って話か。

                   (↑↑ 自己完結)

 

ディックは、「マリリンモンローのいる世界」vs「いない世界」で

自分たちのものでない歴史が並行しているブキミがゾワゾワするのだが。

もっともその代わりにシャラマン映画では、町や文明を捨てた親・老人世代と、

何も知らずに1800年代の暮らしをしていた子供世代とのギャップがある。

SFっぽいその不安定感を楽しむか、シャラマン映画の設定を楽しむか、

個人的にはディック派なんだけど、それでもとても面白かったです。

 

ところで。

わき役として、村の老人の一人にシガニー=ウィーバーがいて、

その息子がホアキン=フェニックスなんだよ。最強の親子って気がする。

 

 

 

 

 

 

昨年、2023年の映画『ブラックデーモン絶体絶命』。

WOWOWのサメ映画特集の一本で、怒りくまさんのところで知って、

観たいと思っていたやつ。

 

伝説の超巨大ザメに襲われる家族の極限状態を描いた、海洋サバイバルスリラー。
海底油田の視察とバカンスを兼ね、家族とメキシコを訪れたポール。

しかし、町はかつての活気を失い、存在感を放っているのは、

悪魔から守ってくれると言われるアステカの彫刻だけという状態だった。

油田にも人気はなく、見知らぬ男が怯えた顔で海を見つめている。

そんな時、突然、油田が巨大な揺れに襲われ、アステカに語り継がれる

伝説の超巨大ザメ「ブラック・デーモン」が出現する。

ボートが損壊し、通信手段もないという状況下で、

崩壊寸前の油田に取り残されたポールと彼の家族。さらに、

油田の下には何者かが仕掛けた大型爆弾が見つかり、

爆発までのタイムリミットは残り59分となっていた。
         (映画comよりあらすじ部分の抜粋)

 


 

ネタバレ感想になるが……主役でちゃんとした人だと思っていた父親が

話が進むにつれ、諸悪の根源で、悪魔(?)を復活させた張本人になっていて、

でも、悪役で終わらないのが、この映画の新しいところなんだと思う。

オタク風ゴタクで語ると、人間は善で宇宙人は悪みたいなシンプルな構造から、

ガンダムあたりから敵にも見方にも正義がり、どちらにも善人と悪人がいて、

誰でも心変わり(善から悪も悪から善も)の余地のある

というアニメが増えたように、この映画も話がシンプルではない。

強引にまとめると、初代ジョーズの悪徳市長が主人公で、

改心してサメ退治しちゃうような流れの映画だ。

 

映画の種類を言うなら、閉じ込められ系、館系ホラーと、

悪魔というか復活してしまった怪異のゾワゾワした感じとか、

そこにサメ映画の、人体ガブガブが加わる。

サメ(メガロドン?)は多少おとなしめだけども、食い残や破片は華々しい。

(不要ではないかとも思うが)アステカの伝説なども絡めたおかげで、

動物系ホラーと、悪魔系ホラーと、パニック物が混ざった映画になっている。

その上、大手企業と、環境破壊をされた挙句見捨てられた街の人との対立や、

企業内で、環境破壊や、原油流出のもみ消しなど、不正がわかっていても

(金だの圧力だのに負けて)黙認せざるを得なかった組織人の苦悩まで描く。

この辺は、サメパニックだけでなく、主張ある映画にしたのだろうが

盛り込みすぎな感じは否めない。

 

B級映画を観始めたつもりだったのだが――予想外に、というより

絶対値としてちゃんと(?)している。

B級を期待して臨むとなんだけど、おすすめ映画ですわ。ええ。