老いと向き合う | 人生は旅 

老いと向き合う

ショップから歩いて10分程の団地に暮らすWさん。御年88歳になる。散歩がてらブラブラ商店街まで来て、行きつけの飲食店で酎ハイを一杯呑んで帰る。ほろ酔い気分で、店にも寄ってくれる。父親みたいな存在のWさん。年が明けてから随分とその姿を見ることがなかった。


昨日、窓越しにこちらをみているひとりの老人。良く見るとWさん。元気そうだった。声を掛けて聞いたところ、数ヶ月前に家を出た際、迷子になって大騒ぎになったと言う。家族から外出禁止令が出て、家に閉じこもっていたそうだ。今日は我慢が出来ず出て来たと言う。


私の父も、晩年、上京した際「東京駅に着いたからこれから向かう」と言ってから、2時間近く経っても着かないことがあり大騒ぎをしたことがあった。しょっちゅう青森から出てきてはひとりであちこち自由に歩きまわっていたので、まさかとは思っていたのだが、認知症がじわじわ始まっていたのだ。その後も妹の家に向かった際も警察に保護されるなど、トラブルがあり、以来上京は適わなくなった。70代後半のことだ。


最近、お客様のお顔やお名前など、思いだすことが出来ないシーンが増えて来た。気になる方については、特徴的な事をメモにしてガラス窓に貼っておく。いたるところメモだらけだ。失礼の無いよう気をつけているつもりだが、思いだせない。ああこうやって人間は年を取ってくのだと実感する。


あと20年もすると、私もこうなるのだろう。嫌なこともすぐ忘れるが、必要なことも忘れる。自分自身の中で、どう折り合いをつけながら生きていくか、少しずつ考えなければいけない。