わけが判らず、引っ張られた手にたどたどしくついていく。
慌てて2人入り込んだ狭いスペースでヒトラーはブリーフケースから
手際よく顔の皮を取り出す。覆面用だ。
そして2人はうまく老父と孫になりすました。
幸運なことにあちこち空席があり、その1つ、ちょうどいい老婆が眠っている横に座った。
ちょうどアテンダントたちが麻里らを探しながら、
せかせかと通りすぎていく直前だった。
「こんなに手早く覆面ができるなら、どうして最初からやってないのよ」
飛行機を降りた後、麻里が聞くと、
「おれ、こうなっちゃうんだよ」
ヒトラー、いや、速水さんは投げやりに微笑みながら覆面をはいだ。
顔がアレルギーで真っ赤だった。
「あっははははは」
久々に心の奥から笑った少女の声は、廃墟と化したTOKYOに高くこだました。