いまから10年前。
突然自分の人生のレールが外的圧力によって強制的に切り替えられた。僕には全く力の及ばない「外からの力」。僕はなすすべもない「被害者」。そんなふうに思っていた。けれど、結局は自分の選択してきたことの積み重ねの結果として、このような場所に居合わせてしまったと言えなくもない。
だから、因果応報。
因果はめぐる。
僕はそれまで積み上げてきた人生から転落し、たくさんのリセットを受け容れるしかなかった。リセットのあとはまた選択。
いや、選択なんて言えるものではない。一択。
長いようで一瞬のような10年。
その間に登場した君は、余りに都合がいい存在だった。
あるはずのないシチュエーション。それを裏付けるかのような現実感のなさ。ほんとうは君なんて実在しない。そう考えれば、いろいろと辻褄はあう。
そして半覚醒の僕を過去のしがらみから時間をかけて解き放ち、君はいつのまにか姿を消した。
やがて僕は夢から覚める。
そのとき、命を削るほどの傷も、
君のことと共に忘れているのだろう。