にのあい妄想です。

お気をつけて。


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あいばさんが、近くのコンビニまでビールを買いに行ってくれた。


待ってて


って言ってもらえて、正直ほっとした。

いやほんとは今日で最後なんだし。

片時も離れたくはないって気持ちはおっきいんだけど。

なにせもう、足が限界。


ちらっと見ると親指と人差し指の間とか。

土踏まずの上あたりとか。

皮がむけて血が滲んでる。


あーあ。

やっぱりこうなるよねぇ。知ってた。


絆創膏だってちゃんと持ってきてるし。


でも。なんだか貼る気になれない。

じんじん痛いのが、今のこの夢みたいな状況が嘘じゃないって教えてくれてるみたいで。


あいばさんと出会って、時間的には短いけど、密度は濃くて。

今までのは恋じゃなかったのかもしれないって思ってしまうほど、心動かされた。

この先、あいばさん以上に好きになれる人を見つけられないかもしれない、って思うほど、好きで大事。


たぶん。


おれ自身のことより、あいばさんのことが大事だと思ってる。


だからこそ。

離れるんだ。


空がほんのりと薄暗くなってきて、いよいよ花火が上がる時間が近くなってきたんだな、なんて思う。


まだ暗くならないでよ。

まだ今日が終わらないといい。


なんてことをぼんやりと考えていたら、

「カズ!!」

ってあいばさんの焦ったような声がして、ふわりと後ろから腕の中に包み込まれた。


「!!!」


頬をくすぐるあいばさんのさらさらの髪と耳元で聴こえる息遣いにキュンとする。


「…ちょっと、誰か見るから…」


なんて言ってみるけど、やっぱり離してほしくなくて、おれの前に回ったあいばさんの腕をそっと握った。


「うん。」

って言って離れていく温もりに寂しさを感じていたら、


「カズ、いい匂いすんね。」

って不意に言われてめちゃくちゃ恥ずかしくなる。

浴衣、意外と暑いし、いっぱい歩いて、普段汗をあんまりかかないおれだけど、今日はそれなりに汗かいてんじゃないの!?


「はぁ!? 何言ってんの? たこ焼きの匂いじゃないの?」

って言うおれを、あいばさんが優しい目で見る。

ますます照れくさい。



「はい、ビール。」

「ありがと。買いに行ってくれて。」

「どういたしまして。あと。絆創膏。買ってきた。」

「あ…。」


あいばさん、気がついてたの? おれの足が若干傷だらけなこと。


「貼ってあげる。」


って言ったあいばさんが、絆創膏の箱を開けながらおれの前に膝をついて座って、おれの足に手をかけた。


「!!! まぁくん、自分で貼れるって! しかもちゃんと持ってきてるし、絆創膏!」

「いいからおとなしくしろって。」


優しい言い方なのに、言われた通りにしたくなる。おとなしくあいばさんの手に足を委ねた。


「………」

「わ、これ、痛かったんじゃない?」

「……痛くないとは言わないけど。こうなるの、分かってて履いてきたし。」

「ありがとね。俺が浴衣姿見たい、なんて言ったこと、覚えててくれたんでしょ?」


ずばりと言い当てられて、ああ、あいばさん、おれのことちゃんと分かってくれてんだなぁ、って嬉しくなるのと同時に、そんな心の内が筒抜けなのがすごく恥ずかしくて。


「!!! そうだっけ? せっかく花火大会だから、着てみたかっただけだよ。」

って言ってみる。


「…ふふ。そっか。」

って優しく微笑みながら、おれの足の傷に次々と絆創膏を貼っていく。

おれがいくら可愛くないことを言ってみても、あいばさんはふわりと受け止めてくれて、その裏にあるほんとのことを感じてくれる。


そんなのも、ほんとは嬉しいよ。

素直じゃなくてごめんね。


そして。


その絆創膏を操る長い指に、おれは簡単に欲情するんだ。

その手で、その指で、触って欲しいって思う。


そんなこと思ってるなんて、あいばさんは知らないでしょう??