にのあい妄想です。
お気をつけて。
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23時半を回った頃、相葉さんがお腹をさすりながら言った。
めちゃくちゃ楽しかったんなら、良かったなぁ。
一方おれは、まだそんなに飲みなれてないビールと、いつもよりも明らかに量が多い食事に、ちょっと気持ち悪いかも…。
「にのちゃん、明日もあるし。そろそろ帰った方がいいよね?」
「…そうだね。じゃあ帰ろうか。」
おれはどうでもいいけど、相葉さん、明日出発だもんな。
「…あの。相葉さんは、もう明日は店には来ないんでしょ?」
「ん?ううん、行くよ。ただ、夕方の飛行機だからそんなにいられないけど。昼くらいまで…かな。」
「あ、そうなんだ。」
…あ、やべ、嬉しそうな声、出た。
だって、だって、もうこの席を立ったら、もうバイバイなのかと思ったら、椅子におしりがくっついてんのかと思うくらい、立ち上がれなくなったから。
「1時間くらいだけど。にのちゃんとケーキ売るよ。」
「…ほんと? ……ねぇ、明日朝の準備、最初から手伝ってもいい?」
「え? …でもそしたら、一日がめちゃくちゃ長くなるよ? 疲れちゃうよ。 毎年俺一人でやってるし。」
「長くなっても疲れてもいいんだ。だめ?」
「……ありがとう、にのちゃん。じゃあ、明日朝9時半に待ってるね?」
「うん! ありがとう、相葉さん。」
「…ん。」
相葉さんが鼻の下に手を当てて、照れたような顔を見せるから、ちょっとどきどきする。
…もし、その顔をさせたのがおれなら、めちゃくちゃ嬉しいんだけどな。
おれが手伝うの、迷惑じゃなきゃ、いいんだけどな。
「じゃあお会計してくんね。」
「え、ねぇ、俺もやっぱり払うよ。」
「なんで?」
「だって、ラーメンだけの約束なのに、ビールと餃子も食べちゃって、プレゼントまで…」
「いいじゃん。誕生日だもん。おれにもたまにはカッコつけさせてよね。」
「……ありがと。にのちゃん」
って相葉さんが嬉しそうに笑ってくれる。
もうそれだけでおれは財布の紐がゆるゆるだよ。
お会計して、相葉さんと一緒に外へ出る。
さっきまで止んでた雪が、またちらちらと降っていて、頬に感じる冷えきった空気が気持ちよく感じる。
「ホワイトバースデーだね。相葉さん。」
「くふふ。そんな言葉、初めて聞いたかも。なんか、嬉しいな。」
かして、と、おれが手に持っていた折りたたみ傘を相葉さんが手に取って傘を広げる。
「また入れて?」
なんて、おれの顔を覗き込む。
「……どうぞ」
傘に二人で入って歩き出すと、当たり前みたいにおれが傘からはみ出さないように相葉さんの手が背中に回る。
…きっとちっともわかっちゃいない。
その手が、おれをどれだけどきどきさせるのか。
なんてこと。
「雪、ひどくならないといいけど。」
って相葉さんがつぶやく。
…明日、積もるほどだと確かに困る。
電車が動かないと相葉さんとこにいけないもん。
でも。
夕方の飛行機が飛ばないくらい、明日はたくさん降ればいいのに。なんて思っちゃうよ。
ちら、っとおれの左にいる相葉さんを見る。
目に焼き付けとくんだ。
こんな距離で相葉さんを見るのは、今がきっと最後だから。
雪がちらつく道を見ているだろうその瞳は、やっぱり優しくて、好きだなぁって思う。
覚えとくんだ。今見えてる相葉さんを。
まつ毛、長いんだな。
あ、ほくろがあるんだ。
眉尻、すこし薄い。
横顔、きれいだな。
耳、薄めなんだ。
……そのぜんぶ、おれのもんなら、いいのにな。