にのあい妄想です。
お気をつけて。

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休憩室の椅子に座って、ゲームをたちあげる。

全然集中できなくて、失敗ばっかりだ。
「…あ。またやられた。」

はぁ…。
とりあえず。
バイト中天気が持って良かったな…。
なんて、ぼんやりと違うことを考えてみる。

それでもやっぱり、考えは元に戻ってしまって、おれは今日、どうしたいんだろ…なんて考える。

相葉さんのことが、好き。

そんなの、もう今すぐにだって口から溢れそうなくらい好きなんだよ。

今まで、告白した後、おれがどうなるのかってことしか考えなかった。
でも。
さっき、相葉さんがどんな想いをするのかって考えたら、自分のことしか考えてなかった時より、もっと怖くなった。

溢れそうな自分の想いと、相葉さんのその後の想いを天秤にかけたら。

一体どっちに傾くんだろう。

わかんない
わかんない

「…あ、やべ、またやられた」

考えすぎて、指が止まっちゃうよ。


作業場の方からばたばたと音がして、休憩室の入口がばん、と開く。振り向くと

「にのちゃん!」
とコックコートの相葉さんが顔を出した。

「相葉さん。」
「いま、今終わったから!着替えてくるね!?待っててよ!?」
「ふふ、ゆっくりでいーよ。」

またばたばたと音を立てて今度は更衣室の方へ向かう相葉さん。

…さっきまであんなに重苦しかったおれの胸の中が、相葉さんを見ただけでふわりと軽くなるのが不思議。

好きって

伝えるかどうかは別として。



おれにとってはこれからデートだもん。
まずは、相葉さんとおれが一緒に楽しむことを考えよう。って決めた。


「にのちゃん、お待たせ! 行こう?」
「うん。相葉さん、お腹は?なんか食べた?」
「めーちゃくちゃ空いてる。はらぺこよ。」
「…だよね。じゃあ早く行こう?」

店にはまだ残ってる人もいて、お疲れ様でした、と挨拶して店を出ると。

「…わ、雪!?」

外はちらちらと雪が降っていた。

「ついに降ってきたね。」
「俺傘持ってきてねーわ。」
「あ、おれもってるよ。」

天気予報見てきたからね。ちゃんと折りたたみ傘を持ってきてあった。 リュックを少し開けて手を突っ込んで傘を取り出す。

………言ってみても、いいかな。

「一緒に、入る?」

…やっぱ、イヤかな、男と相合傘なんてさ。
イヤだって言われたら、傘はしまってしまおう。

「え、いいの? 入れてくれる?」
「も、もちろん。」

まじで?
こっちこそ、一緒に入ってくれんの?なんて思いながら傘を広げて、相葉さんに差しかけると

「かして。」
って相葉さんの手がおれの傘を握る手に伸びる。

「え」
「俺の方がちょっとでかいから。俺が持った方がいいでしょ。」

って傘を奪われた。

「…ありがと…」


小さな折りたたみ傘の中にふたりでおさまると、すごく距離が近くて。
相葉さんの腕とおれの肩が触れ合って、どきどきしすぎて、少し距離をとる。

だって、どきどきが伝わりそうなんだもん。

なのに。

「…あ、ちょっとにのちゃん、濡れるよ?」
って相葉さんが傘をわざわざ持ち替えて、おれの肩に手を回して引き寄せた。

ひっ…

せっかく取った距離がゼロになる。

「相葉さんこそ、ちゃんと入ってないじゃん。そっちの肩、濡れてるよ? おれは大丈夫だから。」
「何言ってんの。にのちゃんの傘でしょ。」
「…そう、だけど…」

人通りは昼間に比べれば少ないけど。
肩を抱かれてるこの状況。
見る人は変に思うんじゃないの?

…それとも。こんなに意識してるのはおれだけで、やっぱり相葉さんにとっては、わんこを面倒見てるみたいなもんなんだろうか。



………でも。
誰が見てどう思おうが。
相葉さんがおれのことをわんこだと思ってようが。

もう、そんなのどうだっていいや。

おれの肩にのる相葉さんの手の温もりが、重さが、嬉しすぎて幸せすぎて、駅までの道がずっとずっと続けばいいのにって思った。