ダイバーシティ企業とナンチャッテダイバーシティ企業 | がいちのぶろぐ

がいちのぶろぐ

環境問題と経営の接点、中小企業の戦略やマーケティング活動,
観光・伝統産業関連などについて、「がいち」が考えたこと、思ったことを書きとめてゆきます。

今日配信されていたインターネット情報誌の記事で、はっとさせられる文章と出会った。

 

「『男女共用水着』に思わず拍手。LGBTQ当事者が評価するダイバーシティな企業」と題されていた。筆者はタイトルにあるように、LGBTQの当事者らしい。

 

まずは「男女で区別がある学用品のひとつに、スクール水着」があるという話で始まった。

 

「スクール水着を扱うフットマーク株式会社は今年、ジェンダーレスの水着ではなく『男女共用』の水着」の販売を開始したという。

 

フットマーク社の説明では、「男女同じ形にすることで性別による水着の選びにくさを払拭し、内面と外見で性の異なる生徒も迷わず選び着ることができる」とされているそうだ。

 

今までも、水着の形が男女の性別をあえて問わないことをベースに、「ジェンダーレス」の水着が発売されていた。だが今回は、ジェンダーレスとはコンセプトが異なっている。

 

「『男女共用』の水着」だから、全員が同じものを身に着けてプールの授業を受ける。それが「ジェンダーレスの水着ではなく『男女共用』の水着」ということだ。

 

これについて筆者は、「『ジェンダーレス』の水着を〝選ぶ〟ことは、クラスメイトに『私はセクシュアルマイノリティです』と間接的にカムアウトをすることになる」と言う。

 

「しかし『男女共用』ならば、間接的なカムアウトにはならない」ということだ。これを聞いた途端に、〝何を小うるさいことを〟と思う気持ちが、差別をはびこらせてきたのだ。

 

ジェンダーレスの水着と言いながら、それを選ぶことができる〟ということは、その時点で〝あえて選んだ人=少数者〟という〝レッテル貼り〟が可能になる。

 

ところが、全員が同じ形の「男女共用の水着」であれば、そこには少数者は存在しない。これが重要なのだ。しかも、誰もが納得できるデザインと着心地でなければならない。

 

だから、フットマーク社は〝それを開発した〟ということになる。この動きが広まって行けば、苦しまなくて済む人が少しでも現われるのなら、この水着を採用すればいい。

 

またこの記事の筆者は、このことを一歩進めて、「マイノリティに寄り添う企業と、寄り添っている〝風〟の企業」というところを言及している。

 

「セクシュアルマイノリティなどの弱い立場にいる人に寄り添う姿勢を見せたり、SDGsの考え方に賛同することで『私の会社はいい会社である』と見せたい」企業があるという。

 

 

 

確かに最近は、ビジネス街を歩いていると、上着の胸のところにSDGsバッジを着けている人をよく見かける。〝わが社は、積極的に取り組んでいます〟という証のためだ。

 

私もかねがね、このバッジを着けている人を見た時は、〝ホントかな〟と思っていた。このバッジを着けている全員が、SDGsの17項目をホントに読んだことがあるのかと。

 

今日の記事の筆者も、「『売り上げの一部を○○へ寄付します』といった商品」や、「共感できる取り組み」も多くなっていることは、肯定的に捉えている。

 

 

 

しかし筆者自身が、セクシュアルマイノリティの当事者として、「『いい企業』に見せるために寄り添うポーズをとられることは、たしかに不快だ」と言う。

 

例えば、「話題の歌舞伎町タワーに設置されているジェンダーレストイレが、LGBTQ+当事者からも『誰のためのトイレなのか』と言われている」と述べる。

 

「商品やサービスもしくは企業として発信していることが実情に即して」なかったり、「受け手がどう感じるのかという気持ちや感情の部分がズレてしまっている」ことがある。

 

この指摘は、まったくその通りだと思うが、私もそこまで言える確信が自分の中には無い。

 

ただ、本能的にそこに込められたニュアンスを嗅ぎ取って、「気持ちや感情の部分がズレてしまっている」と当事者から思われたなら、その意見には謙虚になるべきだと思う。

 

筆者も、「ナンチャッテダイバーシティ企業」とは、「本当に『寄り添いたい』と企業側が考えていても、そう見えてしまったら考えていないのと同じことになってしまう」と言う。

 

発信する企業の側からすれば、ここが辛いところだと思うが、「ナンチャッテダイバーシティ企業」かそうでないかは、発信された情報を受信する側が決めるのだ。

 

筆者は成功事例として、「ユニクロの店舗でメンズ服がウィメンズフロアに置かれはじめた」ことを挙げている。

 

これは、「男女ともに着ることができるというニーズに応えて」いるからであり、「フットマーク社」の「男女共用の水着」と、同じ発想のところにあるのだと思う。