♪怒りゃ拗ねるし、打(ぶ)ちゃ泣くし、殺しゃ最後は化けて出る♪
などと、女性のことを悪しざまに言うのは、現在では、ジェンダーの問題から完全に否定されるものになっている。ところが、である。女性ということではなくて…。
最近は、会社で〝若い社員〟を強く𠮟れば、パワハラだという非難を浴びてしまう。だけど別の考え方として、「怒る」と「叱る」は違うのだ、という意見もある。
「怒る」とは、その場でのその瞬間の「怒り」の感情に任せて、強い語気で相手に向かって言葉を発する状態である。これには、教育的・建設的な何事も含んでいないだろう。
一方で「叱る」とは、感情に任せて強く発声しなくても、相手に対して正すべきポイントをきちんと指摘し、可能であれば解決策や対応策を指示することもあるだろう。
しかも相手の面子を考えれば、第三者の目の前で「叱る」のではなく、1対1の状態になってから、「叱る」という行為を行えば、より一層、相手を傷つけなくて済む。
元々、こうした配慮は常に必要だったし、「怒り」を覚えてもそれをコントロールできるように、「アンガー・マネジメント(怒りの制御)」という考え方も一般化している。
というようなことは、もう最近では常識になっているだろうと思う。ところが、さらにもう一歩考えを進めると、若者は「ゆるい職場」を去ってしまう現実がある、というのだ。
このブログで再々取り上げている経営雑誌「理念と経営」の7月号に、「なぜ、若者は『ゆるい職場』を去るのか」と題する、古屋星斗氏の寄稿が掲載されていた。
古屋氏は経済産業省のキャリア官僚から、リクルートワークス研究所に転職し、「若手人材研究」を専門とされていて、ご自身も30代半ば過ぎという方だ。
そこで寄稿の中では、「大手企業での上司と部下の関係は『褒めまくるマネジメント』が標準」となっている、と書いておられる。私などは〝ホンマかいな〟と思ってしまうのだが。
「会社内での付き合いなどの『関係負荷』がとても軽くなって」いるとも述べておられる。だから、「働きやすさは増している」という職場環境になってきているらしい。
これを裏返せば、若い社員は「はれ物」のように扱われている、ということも言えるのだろう。その結果若手の側が、「このままでいいのだろうか」と考えるようになってくる。
それはそうだと思う。いつまでたっても〝お客様扱い〟をされたのでは、かえって不安を感じて来るのも当然だろう。これが「ゆるい職場」という、「新しい問題」だそうだ。
昔は会社を辞めるとなれば、職場に対して何かしらの不満があって、それに耐えられなくなった時に辞めるという「不満型退職」だった。
それが今では「ゆるい職場」の場合、「他の会社でも通用する市場価値を得られるだろうか」という懸念を覚える、「キャリア不安」型の退職が起きているというのだ。
だからといって、過去のように「関係負荷」を大きく(飲みにケーションだとか)したり、「上司と部下という垂直関係の中で育成することが、非常に難しく」なっているという。
私などの通って来た昔を思い返せば、〝大変だねぇ〟としか言いようがない気持ちになる。だから、古屋氏は「新しい時代の育成の手法」を示しておられた。
(理念と経営7月号より拝借)
一つは「外を使って育てる」らしい。つまり、一度は外の空気を吸わせるというか、社外のプロジェクトなどに送り込んで、通常とは異なった経験をさせる。
もう一つは、「横の関係で育てる」という。自社の同期同士であったり、他社の同期も含めた「横のつながり」であったりという、横並びの関係の中で経験を積ませるというのだ。
こうすれば、通常の決まった関係性から少し離れた、異なる環境に置かれることによって、自分を見つめ直す機会が得られるだろう、ということになって来る。
さらに言えば、「自分の業務が社会的にどんな意味を持っているのか」とか、「今の経験が自分のキャリアにとってどんな利益」をもたらすかを実感させる必要があるという。
それはもう「働き方改革」などと称して、「はれ物」扱いで綺麗ごとを言っているだけでは、若手は伸びて来ないだろうし、そんな「ゆるい職場」では辞めてしまう、というのだ。
だから「働き方改革」を考えるならば、同時に「育て方改革」を行う必要がある、というのが、古屋氏の結論だった。
何しろ、現実は企業側も中途採用が増えているし、社員の側も一つの会社で勤め上げるという時代でもなくなったから。私などは、〝ホント、大変だねぇ〟という言葉しか出て来ない。
いつものことながら、この「理念と経営」誌は面白い記事が多い。ただ書店では入手しにくいので、興味があれば見本誌を申し込まれたらどうだろうか。
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