丸川珠代五輪担当大臣が、オリンピック終了後に行った記者会見の場での発言に対して、批判が止まらないらしい。
〝オリンピックが感染拡大に寄与したとは思わない〟という発言は、寄与したと認めることは絶対にできないという、ご自身の立場からすれば有り得る発言だろう。
そのことについての当否や正確性など、反論は山ほど行い得るだろうということは、この際いったん横に置いておく。
横に置いておくならば、五輪担当大臣という立場上、オリンピックの運営面では感染拡大を上手く抑えこむことに成功した、と評価せざるを得ないだろう。
オリンピックの〝本当の中の人〟である、選手やコーチングスタッフ、サポートスタッフといった人々は、万一にも陽性反応が出れば出場不可能になるという危険性があった。
そうなれば、長年の苦労も全部水の泡となってしまう。有力選手のほとんどが、何らかの形でプロフェッショナルであり、出場と活躍が自分の商品価値を高めると知っている。
だからこそ出場不可能となれば、商品価値を下げてしまうことになる。そんなことは、プロである以上は許されないことだ。その結果、抑え込むことに成功した、となる。
海外からの観客がなくなったから、まずは大量の一般人の入国はなくなった。さらに、マスコミなど関係者という名の参加者を絞り込んだ。
しかも、こうした人たちの行動規制をした。規制のルールが100％守られたとは思わないが、それでもやはり一定の抑止効果はあったと思う。
また、競技のほとんどを無観客にした。それでも、テレビ画面を通して映し出されていた状況を見る限りでは、わけのわからない〝関係者〟風の観衆が多かったとは思う。
しかし、収容人員が数千人レベルの会場でも、まず1千人にも満たない人数だっただろう。だから、無観客でなくても〝ごく少数〟観客化はできていたと思う。
つまり丸川大臣が言うように、オリンピックが感染拡大に寄与したかどうかという判断では、基本的に〝中の人〟が大きく寄与したということにはならなかったと思う。
ただそんなポイントが問題なのではなく、〝オリンピックを開催している〟という事実が、多くの国民に気分的な面での緩みをもたらしたことは否めないだろう。
だからと言って、これが直接的な政府の失態なのかという判断になれば、間接的なものであることは間違いない。ただ、国民へのメッセージ性は高いと思われる。
だからオリンピックを行った以上、国民にも一定の気の緩みをもたらしたことは間違いない。もちろん自分の身が大事だと思う人は、この間も行動を自重しただろうけれど。
だから、こうしたことのすべてを踏まえた上で、担当大臣からの発言となれば、丁寧かつ慎重に行われなければならない。そこを甘く見た発言となれば、批判されるのは当然だ。
丸川大臣の発言は彼女の性格に由来することなのか、大筋において説明不足になりがちであり、かつ〝軽く〟なりやすく、論理的整合性に欠けることも多い。
それが今回の会見で如実に現れた事例が、ＩＯＣのバッハ会長が銀座周辺の散歩というか観光を楽しんだと思われる行動への、評価を巡る発言だった。
「不要不急の外出かどうかは、ご本人が判断されること」と言ってしまった。つまり国民には帰省自粛など、行動の自制を政府が強く要請する一方で、シレッとこんな発言をする。
これは、言ってはいけない発言である。もし言うとすれば「確認はできていないけれど、観光目的の外出なら遺憾に思う。その場合は、強く注意喚起を行いたい」となるべきだ。
それなら国民も〝そうだ〟と納得する。この間のＩＯＣとバッハ会長の言動が、国民にどのように捉えられ、怨嗟の的となっているかはわかっているはずなのだ。
それを判断できないのは､政治家として無能だと言わざるを得ない。いや政治家としての資質以前に、人間として何かが欠落していると思わざるを得ない。
この人はテレビ朝日のアナウンサー時代から、どこかで〝目立ちたがり〟の軽さが見えていたし、その反面で学歴などへの〝おごり〟のようなものが鼻に付く気がしていた。
それが現在は立場が立場だから、結果的に悪い方へ、悪い方へと出てしまっているような気がする。つまり役職遂行の能力としては、〝不適格〟だと言わざるを得ない。
『所詮は口舌（くぜつ）の徒』という言葉がある。良く考えもせず思い付きだけで語る人であり、口先だけの人と受け取ってもいいだろう。そんな気がする。
それにしても、これほどまでに自民党は人物が払底してしまっているのか。