「半径3kmの旅」が目指していること再考 | がいちのぶろぐ

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環境問題と経営の接点、中小企業の戦略やマーケティング活動,
観光・伝統産業関連などについて、「がいち」が考えたこと、思ったことを書きとめてゆきます。

昨日からは、この1年間私が参加していた同志社大学院「ソーシャルイノベーション研究プロジェクト」の、私たちのグループのテーマについて書き始めている。

 

テーマは「半径3kmの旅」という。早い話が「遠くに行きたい」とは正反対の、近場の旅で今まで知らなかった〝地域の面白さ〟を自分が発見しよう、というコンセプトである。

 

いや、〝というコンセプトだと思っていた〟というのが正しいだろう。そういうコンセプトだと思いながら、1年間の議論と向きあってきたつもりだった。

 

 

 

しかし私は、昨年末に突然の診断結果が出て、正月明けには即入院という身になってしまった。だから最後の最後で、メンバーの議論に参加することができなくなった。

 

そして最終発表では、従来型の「町歩きツアー」の中でもガイドの質として比較的良質なものを含めて、「半径3kmの旅」をかなり幅広く捉えるような内容になってしまった。

 

従来型の「町歩きツアー」でも王道の、『人柄もユニークで地元(地域)愛に溢れ、その地域に関して深い知識を持つガイド』が案内する、ということは決して悪いものではない。

 

ただしその場合、対象とする顧客=参加者はあくまでも〝知的好奇心を持つ中高年齢層〟が中心となる、という限定が付くように思われるのだ。

 

マーケティングという面から、「顧客は誰なのか」「その顧客に、どんな価値が提供できるのか」という視点で考えるなら、昨日も提示した図の中の〝右上のブロック〟に当たる。

 

 

 

つまりこの右上のブロックのような「町歩き」の最高点に存在するのが、NHKの「ブラタモリ」という番組だということになる。

 

この場合、対象地域に関して「何を伝えるべきか」というテーマが厳選され深掘りされていて、しかもそのテーマに精通した人物が案内と解説を行う、という番組構成なっている。

 

 

 

これほどのレベルの「町歩き」は、通常はなかなか行うことができない。その「ブラタモリ」で、京都の何かを紹介する場合にガイド役を務める何名かの人たちがいる。

 

その人たちが組織している「町歩き」ツアーは、京都案内の「町歩き」としては老舗であり、かつ最高レベルのものだと言っても良いだろう。これまで、実施回数も多かった。

 

そして私たちのプロジェクトのメンバーの中に、この「町歩き」のガイドとして登録している方がおられた。だからこの方は、「ブラタモリ」的な志向が強くなる。

 

しかもこの方は、町興しのイベントなどとも積極的に関わって来られた方であり、これまで長年の実績には頭が下がる方である。

 

その方が「ブラタモリ」的な「町歩き」に留まらず、さらに〝ひとひねり〟加えて、「フォト・ロゲーニング」の要素を持ち込めばどうだろう、というところまで考えて来られた。

 

「ロゲーニング」とは、オーストラリアの若者から始まった、地図に通過すべきポイントを指示して、最終的にゴール地点に到達するというゲーム要素を持っている。

 

「オリエンテーリング」と似たようなゲームと言っても良いだろう。さらに、日本の方がこれを発展させて、「フォト・ロゲーニング」という形式を提案し、商標化されている。

 

通過すべきポイントをその場所を表す図像に置き換え、これを地図に明示して、参加者にはそれらを撮影して来てもらう。最終のゴール地点では、その撮影画像に評価点を与える。

 

こうしてロゲーニングをさらに発展させたゲーム要素を、「フォト・ロゲーニング」としている。ただ知的財産として商標化されているので、実施するには相応のことが求められる。

 

 

 

その対価を支払ってまで、「ブラタモリ」的町歩きから発展させる必要性があるかどうか、ということになる。これは分類図の右下に当たっている。つまり目的が少し変わるのだ。

 

こうしたゲーム要素を加えれば、確かに従来型のガイドが案内する「町歩き」とは一線を画するものになるだろう。

 

では〝図の右上と右下〟を同時に行う意味は何なのか。これを十分な説明もなく同時に行えば、参加者が混乱することにもなり兼ねない。

 

つまり元々は両立しにくい要素を、あえて両立させることには、あまり意味がないように思われる。

 

だから私が考える「半径3kmの旅」とは、図の左上に当たるタイプだと思っている。対象とする参加者や目的に基いて、「コーチング」的要素が強い「町歩き」ツアーだと考えた。

 

対象とする地域に関する情報、例えば出会うことができれば面白いと思われる人、行ってみたら面白いと思われる店やポイントなど、も含めてスタート時点で与えられる。

 

もちろん、その日の「町歩き」のテーマと地域は事前に明確にされていて、参加者はそれを前提として集まる。そして出発時に地域情報を得た上で、各自が「町歩き」を行う。

 

こうしたタイプの、参加者が自ら何かを見つけ出す「町歩き」こそが、次世代の旅に向かう新しい試みだと考える。この場合の、『顧客が参加できる余白』こそが売り物だと思う。

 

だからこの点を同意してくれる人たちと、考え方をきちんと整理した上で、あらためて「半径3kmの旅」をブランド化して行くための構想を練りたいと思う。