奈良県の魅力再発見という記事を読んで | がいちのぶろぐ

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今日配信されていたダイヤモンド・オンライン誌で面白い記事と出会った。「大仏と鹿だけ?魅力度ランキング7位なのに敬遠される奈良の問題とは」と題された、ライターの橋長初代さんが書かれた記事である。

 

 

 

「『地域ブランド調査2020』では、奈良に対する『観光意欲度』は全国4位にランクイン」したけれど、『コロナ後に観光で行きたい都道府県ランキング』では、「京都が3位、大阪が4位だった一方で奈良は45位」だったというのだ。

 

このギャップについて取材し、考察された記事だった。橋長さん自身が奈良の出身だということだから、余計にこのギャップが気になったのだと思う。

 

「『地域ブランド調査2020』では、どの地域資源が魅力的かを問う項目『地域資源評価』」があり、『自然が豊か』『温泉やレジャー施設・公園がある』という評価が高いから、「北海道と沖縄は『コロナ後に行きたい』ランキングでも1位と2位を獲得した」とされる。

 

一方で、奈良はというと「『自然が豊か』は42位、『食事がおいしい』も44位」と予想以上に評価が低かったそうだ。確かに食に関しては、奈良のイメージは浮かんでこない。

 

私も大好きな柿の葉寿司があるし、三輪そうめんもある。奈良漬けも本家本元だ。だけど食に関してのイメージは弱い。これは筆者の橋長さんも認めている。

 

 

 

奈良市に行けばわかるが、夜、お店の閉まるのが異常に早い。奈良公園に近い近鉄奈良駅前の商店街など、夕暮れになれば軒並み店を閉める。

 

観光客は夕方になれば、宿泊地の大阪や京都に向かって引き揚げて行く。客足が途絶えるから店を開けていても意味がないので、夕方になれば商店街も閑散としてしまう。

 

ところが『自然が豊か』という点では、奈良市がある県の北部はともかく、奈良県の中・南部は飛鳥地域や、吉野山から大台ケ原山、曽爾高原など自然の宝庫なのだ。

 

奈良県でも中央部にあって、明日香村への入口でもあり、橿原神宮でも有名な橿原市より南の地域は、自然に満ちあふれた地域なのだがそのこと自体があまり知られていない。

 

 

(橿原神宮)

 

〝吉野山の千本桜〟と言えば、日本の桜を代表する絶景ポイントだろう。大台ケ原は日本でも有数の多雨地帯だけど、自然に恵まれた観光ポイントだ。

 

温泉だって、奈良県の南端には十津川温泉郷がある。その他にも、県の南部に絶好の観光ポイントが数多くある。こうしたことが、観光情報として十分に発信されているとは言えない。

 

結局は奈良公園の鹿や、東大寺の大仏や興福寺といった奈良市の観光ポイントと、西ノ京と呼ばれる、法隆寺や薬師寺などがある地域だけが、奈良の観光イメージを作り上げている。

 

 

(法隆寺夢殿)

 

だから〝奈良へ行ったことがある〟と言う人でも、奈良市周辺の国宝の寺々や、足を延ばしても飛鳥地域の史跡を訪れたことがある、ということになってしまうのだろう。

 

だから橋長さんもその点を、「歴史的遺産の保護とアピールに重点を置き、他の観光資源を生かせなかった」ことと、「日帰り客が圧倒的に多い」から結果的に、「奈良は大阪、京都観光の通過点に成り下がっている」と分析している。

 

 

(興福寺五重塔を遠望)

 

つまるところ、奈良県は宿泊施設が圧倒的に足りていなかったので、大阪や京都に宿泊して、〝ついでに〟奈良へも足を伸ばして観光するということになっていた。

 

これでは、奈良県の南部地域にいくら魅力的な観光ポイントが多くても、そこまで行くこと自体が難しいとなってしまう。これが一番の問題だったと思う。

 

その結果橋長さんも書いておられたが、奈良県に住む人自身が、しょせんは〝鹿と大仏〟だけの県という、自虐的な感想を持つようになっているのだ。

 

記事で奈良県庁の担当者にインタビューしたところ、「まずは県民に地元の魅力を再発見してもらい、その後、周辺エリア、国内へと段階的に観光誘客を図っていく」という戦略を考えているそうだ。

 

 

(室生寺五重塔)

 

記事の終わりで橋長さんも書いているけれど、「観光資源が身近にありすぎて、奈良県民こそが奈良の魅力に気づいていない」ということだと思う。

 

だから、まずは地元の人たちが自分たちの住んでいる奈良の魅力を発見することが、現在のコロナ禍の中では一つの考え方だと思う。

 

 

(東大寺大仏)

 

このブログでも何度か書いたけれど、〝マイクロ・ツーリズム〟という視点に立って、自分たちの周りにある素晴らしさを再発見することから始めることが重要だと思う。

 

国宝が身近にある奈良と、自然にあふれた奈良という、まったく異なった二つの顔を持っている奈良県の魅力は、大阪や京都ともまた違った素晴らしさだと思う。