別府温泉で、大型ホテルが倒産したというニュースが流れていた。このホテルは、外国人観光客が主体のホテルだったらしい。
それが4年前の熊本地震で別府温泉も被害が出たし、何よりもその時点でいったんは外国人観光客が大幅に減少し、経営が苦しくなっていたということだ。
それが、ようやく客足が戻ってきたトタンにこのコロナ禍だ。その結果、とうとう立ち行かなくなってしまい、倒産に追い込まれたと説明されていた。
さらにニュースでは、「衣・食・泊」事業は「日銭」が入る代わりに「固定費」が高いから、客足が落ち込むと資金繰りが一気に苦しくなる、とも解説がなされていた。
たしかにそうだろうと思う。記事でも、「泊」関連では固定費の割合が70%、「食」で60%、「衣」でも45%程度を占めていると書かれていた。一方で製造業などは、こうした固定費の割合が40%を下回っている。
だから、「衣・食・泊」事業がいかに〝日銭商売〟という現金の回転率が良い事業であっても、客数が下がり、売り上げが落ち込めば一挙に固定費が重荷となる。
こうした業態の事業は、基本的に人が接客することで成り立っている。だから製造業のように、簡単には省力化を進めることがやりにくい。
これは辛い事業構造だと思う。お金の回転が早くて、貸し倒れる心配が少ない事業ではあっても、お客が減り収入が減った状態でも、固定費としての人件費は出て行く。
サービス産業、特に観光関連のサービス産業では、こうしたことは起こり得ることだ。特に今回は、コロナ禍といういわば〝災厄〟によって、客足が極端に落ち込んでいる。
しかし、今回のような「まさか」という要因がなくても、同業の他の事業者との競争の中で、競争に勝ち抜くためには、やはりお客を引き着けることが絶対に必要になる。
そのためにどの事業者も努力を重ねている。しかし売上げが落ちた時に固定費の割合を下げようと思えば、一番動かしやすいのが人件費に見えてしまう。
だから、苦しくなればついここに手を付ける。機械化などによる省力化が困難であるからこそ、人を雇用するのだけれど、その維持が苦しくなってくると人を減らさざるを得ない。
それが今度は、サービス品質の低下につながる。それでお客の満足感が低下するという悪循環に陥ってしまう。だから、簡単に人を減らすことはためらってしまう。
これが「衣・食・泊」事業、特に「食・泊」事業の泣き所になっている。今回立ち行かなくなった別府温泉のホテルも、きっとこのあたりで苦しんだのだろう。
だからこその「Go Toキャンペーン」だということになるが、精神的に委縮している状況の中だけに、このキャンペーンは思ったほどの効果を上げていないように見える。
9月19日(土)から22日(火)まで、敬老の日と秋分の日があって、4連休が控えている。観光地などは、この機会にせめてもの人出を期待しているかも知れない。
それでもやはり、ウィズ・コロナとして「付き合っていく」という考え方よりも、まだまだウィルスに感染したくないという心理の方が強いから、どれほどの人出になるだろう。
今までは耐えてきたけれど、コロナ禍に収束の目途が立たない状態では、この先を期待して耐えるくらいなら、商売をあきらめようかという心理になってくることもあるだろう。
昨日も、京都市内の小さな商店街の組合の理事で、町おこしと取り組んでいる方とお話をする機会があったけれど、地元の方が中心の商店街でもやはり客足が遠のいているそうだ。
経済を回すということは、人出を促すことだけしか対応策がないのだろうか。何か方策を立てられないものだろうかと思うが、私にその知恵があるわけでもない。
さて、世の中は総理の交代劇一色になってしまっているが、毎日の仕事をしている方にとっては、それよりも客足の回復の方がよっぽど重要だろう。
今は、政治的な空白を作っていられるような時期ではない。と言ってみても、誰が総理になろうと急に対策が出て来るものでもない。何とも歯がゆい状態になっている。
コロナ禍が収束する目途が、一日も早く立ってほしいとしか言いようがない状況だ。