知恵活かす ファシリ託すは 若き才  | がいちのぶろぐ

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昨日私が参加した、同志社大学大学院「ソーシャルイノベーション研究プロジェクト」の、参加メンバーが主催した「チョコ菓子の制作体験教室」のことは、すでにこのブログに書いた。

 

今日からダイヤモンド・オンライン誌に連載が開始されたあるテーマと、昨日の体験教室での出来事が、実はオーバーラップしていることを発見した。

 

今日から連載が開始されたのは、博報堂ブランドデザインの岡田庄生氏が書いておられる「価値創造を実現する『ファシリテーション型リーダーシップ』とは」というタイトルである。

 

この「ファシリテーション(Facilitation)」という言葉は、まだ耳新しい言葉のような気がする。ファシリテーションの単語の意味は、「(活動を)容易にすること」などと和訳・説明されている。

 

つまり、「何事かを容易にする」ための方法論なのである。何を、容易にするのか。

 

例えば、多くの人間が集まれば、初対面同士の顔合わせということも当然に起こる。そんな時に、なるだけ早く打ち解けあい、話し易くすることも、ファシリテーションの技法を用いれば可能になる。

 

また、会社で会議を進めるとき、つい周囲の雰囲気を読んで発言を控えたり、声の大きな上司の意見に押し切られたりして、結局は自分の考えを言い出せなかった、ということが起ることもある。

 

そこで、そんな誰にとっても不本意な会議とならないために、会議をうまくリードして、全員ができるだけ納得できるような結論にたどり着くように議論を誘導する、いわば“司会進行術”というものも、ファシリテーションの技法の一つとなる。

 

昨日の体験教室では、参加を申し込まれた親子連れなどは、大学院のプロジェクトメンバーとは、当然ながら初対面である。ましてや、小さいお子さんも一緒である。そんなお子さんが、周りの大人たちとどうしたら馴染みやすくなるか。

 

 

昨日は、参加者の親父族や爺さん(私)も、「エプロン掛け」の姿だった。チョコレート菓子の制作体験なので、エプロンを着けているのだけれど、最初からそのスタイルを要求することで、子どもから見れば若干の滑稽感が生じている。クスッと笑えるのである。

 

これで、少し胸襟を開きやすくなる。次に、胸に「今日一日限り」の自分の名前を貼り付けた。例えば、「今日、私を呼ぶときは『がいち』さんでも、お爺ちゃんと呼んでくれてもいいですよ」という、意思表示をする。

 

 

自己紹介では、必ずその胸に張った名前で自己紹介する。世間的な肩書は無用である。「がいち爺さん」がそこに存在する。子どもにとっては、また少しだけ距離が縮まってくる。

 

これも、ファシリテーションの初歩的な技法である。こうして、初対面の堅苦しさを少しでもほぐすのである。同じような場面に出会ったことがある。

 

お手伝いしているある高校の「総合学習」のメンバーが、他の高校の生徒たちと交流会を持った。当然、周りはすべて初対面ばかりである。この時、「ファシリテーター」は、色々な色の風船を各自が膨らませて、そこに自己紹介を書きこんで、それを室内で飛ばさせた。

 

 

それぞれは、キャッチした風船に書かれた名前の生徒を探し出して、それを渡す。渡された方は、渡してくれた相手に対して、風船に書いてあることをベースに自己紹介する。渡した方は、今度は誰かから探されているので、自分の風船を受け取って、その相手に自己紹介する。

 

その瞬間に、相手を探してワイワイガヤガヤしてくる。誰かが自分の名前を呼べば、手を挙げて“はーい、○○ですっ!”と、否応なしに声を出して返事をする。これが、全員が自分の風船を手にできるまで続く。そして、次には、風船の色ごとに、その色の指定されたテーブルに着く。

 

 

その時には、学校もバラバラになっている。ここで改めて、風船を見せながらもう一度自己紹介をする。すでに大きな声を出したり、室内をうろついたりしているので、おずおずと声を出すような雰囲気ではなくなっている。

 

こうした、道具を用いた交流のための技法も、ファシリテーションの一つの技法である。

 

つまり、ファシリテーションとは、何か「固まってしまいがち」な場を解きほぐして、展開をスムーズにし、議論の方向付けを行い、議論を整理し、拡散したり行き詰ったりした場合には、修正するように仕向けて行く「会議進行」のための技法のことである。

 

時には、ホワイトボードや模造紙を利用して議論の内容を書き出したり、ポストイットに書かれたものを貼りつけて、皆で並べ替えをしたりと、色々とその場に応じた技法を用いるが、つまるところは、究極の目的に到達するために、知恵を絞って誘導することなのである。

 

だから、今日の岡田氏の記事の中でも事例が紹介されていて、ファシリテーションの初歩を教えられた若手社員がファシリテーターとなって議論を進めたチームが、最も成果が上がったと説明されていた。

 

岡田氏も指摘しておられるように、最近の業務は「プロジェクト」化しているケースが多い。そのため、普段一緒に仕事をしている仲間ではない、他の部門や他の業務のメンバーと顔を合わせて、議論をすることが増えてきている。

 

こうしたケースにおいて、議論の進行役を務める人間が、ファシリテーションの技法を身に着けている場合と、そうでない場合では、成果が全く変わってくることも考えられるということだ。

 

ましてや、そのプロジェクト業務全体の進捗を司っているプロジェクト・リーダーにとっては、こうしたファシリテーションの技法の重要さを理解しているかどうかは、プロジェクトの結果を左右するくらいに重要な要因となっている。

 

今では、このファシリテーションの重要性が認識され、「図でわかる!すぐに役立つ!ファシリテーターの道具箱」(森時彦・ファシリテーターの道具箱研究会著、ダイヤモンド社)といった、解りやすい解説書まで出ている。

 

 

私自身がこの2年間、同志社大学大学院の研究プロジェクトに参加して、こうしたことを実感としてわかってきたと感じている。

 

これからも、「プロジェクト」という形式での、業務横断型の会議形式が増えることだろう。ルーティーン・ワークは機械に任せて、人間でなければ進められない部分に注力するためにも、ファシリテーションの重要性を是非理解して、技法を少しでも身に付けられたら良いと思う。