前回の続きです。
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アスカは安堵した。
大学に行けば学校行事の事で先輩と一緒に呼び出されたり、母親の強制的な“お願い”で駅前まで行けばド金髪の日本語が流暢なハーフと合流する羽目になったとしても、今マンションの前で自分とほぼほぼ反対の性格の同じ顔に出会えた事に純粋に安堵したのだ。
むこうもアスカに気付いたのか掛けてきたがアラタをただの通行人ではないと認識した途端若干だが速度が落ちる。しかしそこは物怖じしては恥ずかしいという長兄としてのプライドか、はたまた人付き合いを得意とするアスマの人間性か、最後まで笑顔で二人のもとに近付いた。
「アスカお疲れ。君も長旅だったかどうかは判らないけど取り敢えずお疲れ様」
「アスマもお疲れ。こちらが夏期集中下宿する」
「古谷新です。よろしくお願いします!」
ヘドバンではないが勢い良く頭を下げるアラタ。180もある身長を腰から90度に折り曲げるものだから危うくアスマとぶつかる所だった。アスマは驚きながらも悪い人間じゃないという事は伝わったようで「背ぇ高いねぇ」と笑う。
「フルヤ アラタっていうんだ。シンって読んでたよ。まぁ宜しくシン君」
「アラタです。宜しくお願いします。あの、アスカさんとは…どのようなご関係で」
その質問にはアスマは顔を顰め、アスカは肩を竦めた。しかしアラタの質問はもっともとだ。アラタとあってから数分だが彼はずっと笑顔だったし、悪い印象は受けない。対して―というと変だが―アスカはアスマのように笑顔をずっと浮かべるという事が無く、眼鏡の影響もあってかほぼほぼ無表情に近い。初見でも人を近付けさせない雰囲気を感じ取れる。それは駅からマンションまでの道中も同じで会話という会話が無かった。アラタも声を掛けていいのか判らず黙って付いて来たのだ。
「こっちはアスマ。うちの兄弟だよ」
アスカが答えるとアラタは驚きながらも納得はした。雰囲気は別として顔つきは似ていたからだ。
「おかしいよね、こんなに俺達似ているのに」
「顔はね。まぁ眼鏡でよくわからないと思うけど。それより、中入らない?」
先程からマンションの出入り口前、つまり外で話しているが、如何せん夕方とはいえ暑いものは暑い。半袖のアスマとアラタはいいとして、アスカは基本的に年中室内に居る事が多い為今日も長袖だ。首筋に汗が浮かんでいた。
「ごめんごめんアスカ!早く中入ろう、シン君の部屋も何処か聞かないとだし」
アスマは慌ててオートロックを解除しエントランスに入る。室内という事と、空調のお陰で適度な涼しさだ。エントランスといっても病院の待合室のようで向かい合わせのベンチが4脚とそれらに挟まれたテーブルが2席。そして奥には庭があるのか大きなガラス張りになっていた。全体的に閑散としている。アスカはそのまま管理人が居るであろう管理人室の窓を叩かず通り過ぎ、回り込んで管理人室の中に入っていってしまった。アスマもそれに続いていく。アラタも戸惑いながら続いた。
「桜さーん、ただいまです」
「はーい、お帰りなさい。アスマさんアスカさん」
奥からは青いエプロンをはめ、栗色の長い髪を三つ編みにした30代―20代でも通じる―であろう女性が出てきた。彼女―アスマが桜さんと呼んでいた―はアラタを見て少し考えた後、「あぁ奥様が言っていた」と納得する。どうやらサクラには連絡が入っているようだ。アラタは少し安心して肩を撫で下ろす。
「はじめまして。お世話になります、古谷アラタです」
「ようこそ。管理人です。なにか用事がある時はお二人のように室内に入らず窓を叩いてくださいね」
やはり駄目なのか。アスマもアスカも軽く肩を竦めただけだった。サクラは管理人呼び出し窓の下、室内側につけられているカウンターの引き出しから封筒を取り出す。そこから数枚の紙を取り出し契約書類の控えと必要事項が書かれたものをアラタに渡した。
「奥様と交わされた契約書の控えですね。お持ちください。それと部屋なのですが…」
そこで彼女は言いにくそうにアスマ達を見た。二人に悪い予感が過ぎる。
「お二人のお部屋を、と奥様が…。寝食は共にし、勉強はお二人…というかここに書かれているのは『アスカの方が部屋にいるでしょう?先生頑張って。お土産好きなの買ってくるから』だそうで」
「アスカどんまい」
「アスマはげろ」
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以上です。
思ったほど書けないしタイピングが遅くなっていてこまりますね。
自己責任だけどな。