社名とロゴ ⑥

 

うちの会社の正式名称は、次のとおりです。

 

「合名会社 山口製菓舗」

 

合名会社、なのです。

 

 

合名会社と聞くと、株式会社でもなく、有限会社でもない、その他の、なんか「合」で始まる組織、くらいの感覚でいる方が多いのではないでしょうか?

 

実際に、「合」で始まる会社は、合同会社、合資会社、合名会社があります。

 

会社の形態の違いについては、ご興味のある方は、ネット検索すると簡単にわかります。

 

私は、さんざん合名会社で苦い経験をしましたので、「合」で始まる会社を3つ並べた時、「合名会社」の文字だけ、ひねくれ者に見えて仕方ありません。

 

ざっくり言いますと、合名会社は株主の全員が無限責任者であるという事です。

 

無限責任者とは、株式会社や有限会社の有限責任者と違い、「責任に限りが無い」という事です。

 

もっと簡単に言いますと、社長を含めた9名の株主の全員が連帯保証人のようなものです。

 

もしも、山口製菓舗が倒産した場合、全員で負債を負うことになります。

 

例えば、社長が責任を取れない場合は、他の株主が責任を取ることになります。

 
この時、債権者は、9名の株主のうち、誰のところに「お金を返して下さい」と行ってもよく、言われた株主は、それを断ることはできません。おもしろいゲームのようでしょう。

 

私は、このしくみを知った時、「合名会社のどこを切っても、叔父や叔母が出てくる。合名会社とは、金太郎飴のような会社だ。」と言ったら、銀行の方が笑った事があります。

 

「合名会社の株主になるという事の恐ろしさを、叔父や叔母達は理解しているのだろうか?こんな怖いしくみの会社の株主になるなんて信じられない。しかも、経営に携わっていないのに、不安にならないのだろうか?」

私は、不思議でなりませんでした。

 

また、経営者にとっても、合名会社とは、ややこしい大きな理由がありました。

 

それは、なにをするのにも、株主全員の印鑑が要る、ということです。

遠方であろうが、株主9名全員の印鑑をもらわないと前に進めないのです。

 

私は、これには一番悩まされました。

 

さすがに、私が今日、何の菓子を作る、という事には印鑑は必要ありませんが、例えば、公的な書類(金融機関関係とか)を作る時には、一人でも反対者が出ると、もうその話は中断、なかったことに、という事になります。

 

ねじれ国会ならぬ、ねじれ菓子屋です。

 
昔の私は、本業の菓子、パン屋の他に、頭の中には、いつもこれらの事がモヤモヤしていました。

 

すべては、タイミングが大事であるのに、何度がチャンスを逃しました。

 

私は、家族に言いました。

「合名会社は、前進できない。経営者にとっては停滞の要素でしかなく、こんな不毛な形態では営利目的の会社として成立しない。」

 

合名会社は、ややこしいのです。

 

また、合名会社は認知度が低い為、初めての取引先様の経理担当の方からは必ずと言っていいほど、再確認の電話が入ります。

 

というのは、

株式会社だと、代表取締役社長となるのが、

合名会社だと、代表社員、となるのです。

 

合名会社の株主は、「社員」という名称なのです。

 

ですから、

会社の代表者蘭に記入する際は、

 

山口製菓舗 代表社員 山口佳郎 となるのですが、

 

これを知らない方から、

「あの、代表社員とありますが間違いありませんか????」

という確認がとても多いのです。

 

代表社員という文字だけ見ると、やる気にあふれた社員が社長を務めているような、微笑ましい雰囲気に感じませんか?爆  笑

 

しかも、もっとおもしろいのは、

株主が社長一人となった現在では、どう書くかというと、

 

山口製菓舗 社員 山口佳郎 となります。

 

ただの「社員」になったのです。笑い泣きさみしー

 

最初、笑ってしまいましたが、これが正式名称なのです。

 

 

 

話は株主総会に戻りまして、

 

そんなこんなで、何をするにも足かせとなり身動きできない体制を、一日も早く、シンプルで身軽な山口製菓舗にすべきだと考えていました。

 

そして、初めて株主総会に同席させて頂いたある年、いつものように会議が混乱して収拾がつかなくなった時、

私は「口を出さない」という約束を破り、話し出しました。

 

ていねいに、心をこめて、誰の味方、誰の敵など関係なく、正直に話しました。

 

何が起きたんだ?という、家族や親せきの驚いた顔は今でも忘れません。

 

最初は眉をひそめて聞いていた叔父、叔母達も、途中から真剣に話を聞いてくれるようになりました。

 

すると、一番厳しかった一人の叔父が、驚きの発言をされたのです。

 

「とても話が理解できた。俺はこの嫁さんを信頼する。自分の株のすべてを嫁さんに贈与する。」

 

すると、他の叔父や叔母達も、

 

「俺も。」

「私も。」・・・・・。

 

旦那と両親は、顔をあげて、とても驚いた眼で私を見たり、叔父達を見たりしていました。

 

ドラマのシーンのようでした。

 

 
 

と、こういう訳で、現在は、たった一人の株主からなる、身軽な山口製菓舗となりました。

ですから、社長は「代表社員」ではなく、ただの「社員」なのです。

 

 

 

で、「そろそろ株式会社にしたい。」という話です。

 

実際、簡単な手続きで、合名会社から、株式会社にすることはできます。

 

ですが、手続きの途中での、ある会計士さんの一言で、それは取り止める事にしました。

 

「合名会社の方が、昔から続く老舗です。家族でしっかり会社を守っています。という感じがするけどね。それに、漢字の名前の方が、ほにゃららコーポレーションとかより、山口さんには似合っている。」

 

 

「・・・・・・・・・ですね。」ラブキラキラ

私も、そう思いました。

 

それに、あれだけ憎らしかった合名会社も今では大切に思える理由があります。

 

前にも金太郎飴話で書きましたが、合名会社の社長を含める株主は全員、無限責任者ですから、出資金以上に債務が大きくなれば、自分の個人財産での弁済義務が発生します。

 

株式会社の資本金が1円でもよくなった時代に、わざわざあえて合名会社にするメリットはどこにもありません。

 

無限責任者である合名会社は、銀行から融資を受ける時は信頼を得やすい、と聞きますが、実際はわかりません。連帯保証人を付ければ同じことですし。

 

とにかく、経営者にとってはデメリットでしかないため、合名会社の数がどんどん減っています。

 

約10年前、日本に合名会社は約6,000社ありました。

その時でも、やっぱ少ないな~と感じていましたが、現在は4,000社を切っています。

 

絶滅危惧社なのです。びっくり

 

いっときは、ねじれねじれで身動きができませんでしたが、今では身軽にもなりましたし、希少な存在である「合名会社」を、もうしばらく大切に温存させてみようと思います。

 

 

時々、「合名会社」の会社を見かけると、外国で日本人に出逢ったような嬉しさを味わえます。

 

若い人達には、合名会社のいぶし銀の良さがわかってもらえないかもしれませんが・・・

 

 

社名とロゴ 

やっと終わります。

ありがとうございました。