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あたしはしばらくボー然としてたけど、ママの声で我に帰った。


「そんなわけないわよね、ポーク?」



ポークはあさっての方向を向いて口笛を吹いている。


だよね……ここで、俺じゃないって言い張ったら正が犯罪者だって太鼓判を押したようなもんだもん。ヤッパリポークはビーフのこと大切なんだ。



「分かるもんか!」


パパはポークに言い放った。いくらなんでもポークがかわいそうだよ……。


ポークは再びパパの襟首をつかんだ。瞬間、ママのビンタがポークのほっぺに飛んだ。



ペチーン!


あたしは息を飲んだ。


「何度言ったら分かるの!パパのシャツが伸びるでしょ!」


ママに厳しい目でにらまれ、ポークはリビングを飛び出した。あたしはよけるヒマもなくぶつかってしまった。


「くっそ~!何かっちゃ~正、正って…」


ポークはポロポロ涙を流しながらピカピカに磨かれたフローリングの床を拳で叩いた。あたしはいたたまれない気持ちでポークを見つめてた。


「あいつなんかパンツの山に埋もれてくたばっちまえばいいんだ!」


「ダメよ、ポーク。思っててもそんなこと言っちゃダメ」


ビーフの味方するわけじゃないけど、ビーフが下着ドロの真犯人だと決めつけるような発言にも同意はできない。だって二人ともあたしの大事なお兄ちゃんなんだもん。


ポークは泣きながら外へ飛び出して行った。


「12時までに帰んないと大家がギャーギャーうるさいから、俺、帰る!」




ポーク……。


悲しかった。家族みんな仲良くして欲しいよ。でも、あたしがパットを連れてきたコトにも原因はあるのかな。


パパはパットが気に入らないみたい。ううん、相手がパットじゃなくてもきっとパパは許してはくれないんだ。


あたしはパパの部屋に忍び込むと、パパがちびちびと楽しんでいる貴腐ワイン・トカイアスー6プットニョスをパッと手にしてラッパ飲みをした。




🐣🐣🐣



翌日。身支度をしてリビングに入るとパパがソファーでゴルフクラブを磨いていた。


「パパ、おはよう」


「……」



「パパったら!」


呼んだけど、返事がない。


「ムダよ、チャコ。パパ今日は耳が日曜日だから」


ママに言われて、あたしは仕方なく頷いた。



「パットさんとデートしてきます」


パタパタ……。


そのまま玄関に向かう。



「パパがこんなにイヤがってるのにまだ分からんか、真子」


パパが悲しそうにつぶやくのが聞こえた。チクッと胸が痛んだ。


「パパ……ごめんなさい。でもパットさんに会いたいの」


「パパが止めてもか」


「はい」


あたしはキッパリ言い切った。これだけは譲れない。



パパはあたしにつかつかと歩み寄ると右手を振り上げた。



パシッ!……パリーン!



左のほっぺがちぎれそうだった。さすが毎週末ゴルフで鍛えているだけのことはある。パパの腕の振りは力強く、的を得ていた。


ほっぺを打つ音に次いで、ガラスの砕ける音。メガネが飛んでレンズが片方割れていた。


あたしはメガネをつかむと、外に飛び出した。




🐭🐭🐭




メガネがないと何も見えないあたしはフラフラしながらポンプ場の前にたどり着いた。


そこにはパットがいた。パツパツのワイシャツとピチピチのスーツに身を包んだ彼が天使に見えた。


あたしがプレゼントした洋服、やっぱりパットには小さかったみたい……。


ボタンが弾け飛ばないように猫背気味で歩くパット。足も曲げにくいみたいでロボットのような動きだ。サイズが合わないのに文句も言わずにあたしのプレゼントを身につけてくれてる。



なんて優しいパット……。


傷ついた心にパットの優しさがジーンと染み渡った。




「サトマサ、ドウシタノ?」


「転んじゃって」


「エラク派手に転んだネ」


あたしはパットの胸に飛び込んで涙をこらえた。




🐨🐨🐨




「サトマサはドジだナァ」


パットはあたしのおでこをピン、と指で弾いた。あたしはペロリと舌をだした。


「ドウシテキミノメガネは今時ガラスナンダイ?」


好奇心たっぷりな様子で聞いてくるパット。



「兄がね……二人ともガラスのメガネなんだ。それで、ガラスはいいぞ~って説き伏せられて」


「ヘェ」


「父もガラスのメガネだから代々受け継がれてるみたいなカンジ」


「サトマサはホントにブラコンだナァ」



そうかも。そう思うと涙がポロリとこぼれた。


最近うちの家族はバラバラだ。パパも毎日プリプリしてるし。




「サトマサ。ゲンキだして」


「うん。パットはいつも元気だね」


「ムカついたトキ、パンチング・マシーンをパチパチするとスッキリスル!」


パットは立ち上がってパンチするポーズを取った。ボタンが勢いよく弾け飛び、ズボンのお尻がビリビリと破れた。


あたしはププッと吹き出した。



「ボタンつけてあげる」


腕を組むと家に向かって歩きだす。


「ノー!ノー!先にパンチング・マシーン」



パットはゲームセンターに向かって歩き出した。帰る頃には服はバラバラになってパットは裸同然になっちゃうかもしれない。



まぁいいか。お裁縫は得意だから。



「パットの得意な太鼓の達人もね」



あたしはパットの腕に飛びついた。



ゲームセンターでパットは注目の的だった。ヤッパリこんな素敵な彼、他にいないよね。


パパを説得する方法を考えなくちゃね♪



あたしは店員さんに何か話しかけられているパットに向かって笑顔でウインクした。

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💖Happy End💖


今回の作品で検証したかったこと。
真面目な恋愛ストーリーでも
半濁音(ぱぴぷぺぽ行)を多用することで、ちょっとオモロい感じになるんじゃないかという。
どうだった( * ॑꒳ ॑*)??

ここまで読んでくださって
ありがとうございます(*・ω・)*_ _)💕