〈 永遠の愛を誓って1/2 〉
日菜子
君は僕をオジサンだって言うけれど
30歳って君が思ってるほど
大人じゃないんだ
君もこの年になればわかるよ
今の君はまだ若すぎる
願わくば、来世では
君より年下に生まれたい
そしたら、君を引き止められるだろう
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で
行かないでって君を追いかけるんだ
あっ、でも
先に死んだら
また先に生まれてきちゃうのかな
僕は永遠に君を失い続けるのかーー
笑えてくる
今度、出逢えたなら
僕は絶対に君を行かせたりはしない
ずっと僕の隣に…
僕は、そこで意識を手放したーー
「…ちゃん、…ここよ」
声が聴こえる
「輝ちゃん、あたしはここよ。嫌な予感がして、戻ってきたの…そしたら…こんな…」
ぼんやりした視界の中で
あの子が、泣いている
誰だ
日菜子を泣かせたのは誰だ
僕は腕を伸ばして
日菜子の頬を伝う涙を指で拭った
「輝ちゃん、ごめんなさい」
違う、謝るのは僕の方だ。
日菜子が高校2年生だったあの日、彼女を迎えに行った僕は、車を停めて放課後の校舎へと向かった。
そこで偶然聞いてしまった。
“輝ちゃんがあたしに嫌われるようなことでもしてくれたらな"
君を長いこと縛りつけてしまっていたことに気がついた。
高校生になった君は、年相応に、ひとつ上の先輩に憧れて…でもただの憧れじゃなくて、僕がいるから、彼のことあきらめようとしていたね。
僕は、君との別れを決めた。
最初は、倫子さんへの一目惚れで始まった僕らの関係
間違いからのスタートだったけど
僕は日毎に君に惹かれていった
日菜子ーー
今は、日菜子の幸せ
ただそれだけを心から願っている。
「輝ちゃん、死んじゃやだ…」
ああ、僕はまだ生きているのか?
それともこれは夢なのかーー
病院の白すぎる天井
窓から射す柔らかい光
日菜子の涙が僕の頬に落ちて
僕はその涙を拭えたのか
日菜子、愛している
意識は、そこで再び途絶えたーー