やまない雨 | 文芸部

文芸部

ブログの説明を入力します。

ザァザァザァザァザァ 


京子「んー……蒸し暑いなあ」ゴローン 

結衣「今日は雨だもん、しょうがないだろ」 

ちなつ「はい、冷たいお茶ですよ~」 

あかり「うわあ、ちなつちゃん、ありがとう」 

京子「ちなちゅ、さんきゅっ♪」ゴクッ 

ちなつ「あ、一気に飲みすぎですよ、京子先輩、量少ないんですから」 

京子「だってー、暑いんだもん」プハー 

結衣「やれやれ……雨が止めばもう少し凄くやすくなるんだろうけど……」 


ザァザァザァザァザァ 


≪世界人口 7037023434人≫ 





2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 20:24:45.45 ID:M6dNCOXN0





『雨は、一年間降り続いた』 






3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 20:25:23.24 ID:M6dNCOXN0





≪世界人口 0000000004人≫ 






6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 20:30:14.07 ID:M6dNCOXN0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


あかり「ふあ…・…あれ、あかり、寝ちゃってた?」 

あかり「……うわあ、凄い霧、周りがほとんど見えないや……」 

あかり「みんな、何処に行っちゃったんだろ……」 


あかりー 


あかり「あれ、京子ちゃん?」 


あかりちゃーん 


あかり「ちなつちゃんも?」 

あかり「京子ちゃーん!ちなつちゃーん!何処ー!」 


ポーーーーーーー 


あかり「……あれ、この音、汽笛……?」 



7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 20:32:54.37 ID:M6dNCOXN0


あかり「あ……霧の中に、船が……船が見える」 


あかりー 

あかりちゃーん 


あかり「京子ちゃん?ちなつちゃん?船に乗ってるの?」 


ポーーーーー 


あかり「あ、あ、船が、行っちゃう……待って、待ってよぉっ」 

あかり「あかりを、あかりを置いてかないでっ! 

あかり「京子ちゃん!」 

あかり「ちなつちゃん!」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 20:39:20.31 ID:M6dNCOXN0


あかり「置いてかないでっ!」ガバッ 

あかり「……あ、あれ」ハァハア 

あかり(こ、ここは……) 

結衣「あかり、またうなされてたよ?大丈夫?」 

あかり「あ……結衣、ちゃん……」 

結衣「はい、お水……」 

あかり「……ありがとう、結衣ちゃん」 

あかり(そっか……ここは、ここは……) 

あかり(あの、狭い廃墟の中だった……) 


ザァザァザァザァザァザァザァザァザァ 



11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 20:42:07.64 ID:M6dNCOXN0


降り続いた雨は、大地を水没させた 

今、私達は、水没から免れた廃墟の上層階で過ごしている 

もう、何処にも行くことはできない 

だって 

だって 


ザァザァザァザァザァザァザァザァザァザァ 


この廃墟の周りは 

全部 

全部 

海だから 





12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 20:49:17.87 ID:M6dNCOXN0


結衣「また、あの夢見たの?」 

あかり「……うん」 

結衣「そっか……」 

あかり「あ、あのね……おっきなお船に、京子ちゃんと、ちなつちゃんが乗ってるの……」 

あかり「あかりは、それを追いかけるんだけど……だけど……」 

あかり「追いつけなくて……」 

あかり「それで、眼を覚ますの……」 

結衣「……あかり、京子とちなつちゃんは」 

あかり「う、うん、それは、判ってるんだ、判ってるの……」 

あかり「あの日、あかり達の目の前で、京子ちゃん達、死んじゃったし……」 

あかり「けど、けどどうしても、気になっちゃって……」 



16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:06:54.84 ID:M6dNCOXN0


あかり「けど、けど、あかり、何となく予感がするんだ」 

あかり「あの船は、きっと、あかり達の所に来てくれるって……」 

結衣「……うん」ナデナデ 

あかり「あ……」 

結衣「そうだね、来てくれるって、希望を持とう……」ナデナデ 

あかり「……結衣ちゃん」 

結衣「ほら、あかり、寒いでしょ、おいで」 

あかり「うん……」ギュッ 

結衣「……」ギューッ 



17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:10:24.60 ID:M6dNCOXN0


結衣「さっきね、あかりが寝てる間に、下の様子を見てきたんだ……」 

あかり「……下の階?」 

結衣「んー……まあ、そこまで行けなかったんだけどね」 

あかり「じゃあ、水位が、また上がってきてるんだ……」 

結衣「うん……もう、階段の所まで来てる」 

あかり「……」 

結衣「……」 

あかり「結衣ちゃん……あかりたち、あかりたち……どうなっちゃうの」グスッ 

結衣「もう、馬鹿だな、あかり、さっき言ったばかりじゃない……」ギュ 

結衣「希望を持とうって」ナデナデ 

あかり「けど、けどぉっ……」ヒック 

結衣「お船がさ、きっと何時か来てくれるよ……きっと……」 



18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:16:33.60 ID:M6dNCOXN0


結衣「さっ、落ち込んでても、仕方ない」ポンポン 

結衣「そろそろお昼時だし、ご飯食べよ?」 

あかり「……うん」 

結衣「あかりは、コーンビーフとサバ味噌とどっちがいい?」 

あかり「……さばみそ」 

結衣「ん、それじゃ開けたげるね」キコキコ 

あかり「……結衣ちゃん」 

結衣「んー?」キコキコ 

あかり「ありがとう……」 

結衣「……うん」 



20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:23:02.81 ID:M6dNCOXN0


あかり(結衣ちゃん、ずっとあかりを気遣ってくれてる……) 

あかり(心配ばかりかけちゃ、駄目だよね……) 

あかり(こんな事じゃ、結衣ちゃんのことを大好きだった京子ちゃんやちなつちゃんに、怒られちゃうよね) 

あかり「……」ゴシゴシ 

あかり「わ、わーい、あかり、さばみそ大好き!」 

あかり「結衣ちゃん、いただきます、しよっ?」 

結衣「あかりは現金だなあ、ご飯を貰ったら突然元気になって」クスクス 

あかり「も、もう、ちがうよぉ!」プンプン 


ザァザァザァザァザァザァザァザァザァザァ 



23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:27:05.26 ID:M6dNCOXN0


あかり「いただきますっ」 

結衣「……いただきます」 


モグモグモグ 


あかり「結衣ちゃん、今日は何して過ごすの?」モグモグ 

結衣「んー、本はもう全部読み終えちゃったし、ボードゲームとか、する?」モグモグ 

あかり「うん、やろやろっ」 

結衣「よし、それじゃ……」 


コンッコンッ 


あかり「……!」 

結衣「……!」 



25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:30:28.96 ID:M6dNCOXN0


あかり「……結衣ちゃん、いま、何か音立てた?」 

結衣「ううん、私は何も……というか、扉の方から聞こえたような……」 

あかり「……」 

結衣「……」 

あかり「お、お客さん、かな……」 

結衣「そ、そんな訳ないよ……」 

あかり「けど、けど、もしかしたら、私達以外に生き残ってる人が居たのかも……」 

結衣「……仮にそうだとして……扉の向こうは、階段なんだよ?」 

あかり「う、うん……」 

結衣「階段は、もう水没してるんだ、だから……」 

あかり「あ……」 



26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:34:05.75 ID:M6dNCOXN0


あかり「……」 

結衣「……」 

あかり「……」 

結衣「……よし」 

あかり「ゆ、結衣ちゃん?」 

結衣「こうしてても、仕方ない……扉を開いて、見てみようよ」 

あかり「……けど、けど、お化けとかだったら」 

結衣「もう、あかりは怖がりだなあ……」ナデナデ 

あかり「ふあ……」 

結衣「もし、お化けだったら、私が守ってあげるから」 

あかり「結衣ちゃん……」 



28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:38:34.90 ID:M6dNCOXN0


あかり「あ、あかりも、手伝うっ」 

結衣「え、けど……」 

あかり「あかりだって、あかりだって結衣ちゃんを守ってあげたいもん!」 

結衣「あかり……」 

あかり「だ、だめかな?」オドオド 

結衣「……ううん、嬉しいよ、あかり」ニコ 

あかり「あ……」 

あかり(結衣ちゃん、ちゃんと笑ってくれるの久しぶりだな……) 

あかり(何時もは、クスクスくらいしか笑ってくれないし……) 

あかり(嬉しいな……) 



29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:39:42.39 ID:M6dNCOXN0


結衣「じゃ、あかり、モップは持った?」 

あかり「う、うんっ!」 

結衣「じゃあ、開けるね?」 

あかり「……」ドキドキ 

結衣「……」カチャッ 


キィィィッ 



32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:42:36.04 ID:M6dNCOXN0


あかり「……」 

結衣「……」 

あかり「だ、誰も居ないね……」 

結衣「うん……」 

あかり「き、気のせいだったのかな?」 

結衣「そうかも……」カチャッ 

結衣「……あれ」 

あかり「え、ど、どうしたの?」 

結衣「いや……階段側のドアノブに……何かくっついてる」 

結衣「これ、なんだろ……濡れた髪の毛?」 

あかり「……え」ゾクッ 

結衣「いや、違う、これ、海草だ」 

あかり「な、なぁんだ……びっくりしたよぉ」ホッ 

結衣「……」 



33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:44:17.54 ID:M6dNCOXN0


あかり「結衣ちゃん、どうしたの?」 

結衣「あ、うん……何でも無い」 

結衣「扉、閉めるね?」 

あかり「う、うん」 


キィィィッ 


カチャッ 



34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:45:28.96 ID:M6dNCOXN0


あかり「結衣ちゃん、じゃあ、ボードゲームしようよっ」 

結衣「あ、うん、そうだね」 



この日は、何事も無く終わった 

けど 

次の日も 

次の日も 

ノックは続いた 


扉の向こうには誰も居ないのに 



37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:50:20.85 ID:M6dNCOXN0



コンッコンッ 


あかり「……結衣ちゃん」 

結衣「もういいよ、どうせ誰も居ないし……」 

あかり「う、うん……」 

結衣「……あかり」 

あかり「なあに?」 

結衣「私思うんだ……あのノックは」 

あかり「うん」 

結衣「私達を、呼んでるんじゃないかって……」 

あかり「え、あ、うん、ノックだし、そうだと思うけど……」 

結衣「……違うんだ、違うんだよ、あかり」 

あかり「ゆ、結衣ちゃん?」 



38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:53:53.92 ID:M6dNCOXN0


結衣「海は、海はもともと、死者が帰る場所だったんだ」 

結衣「だから、死者と一番近い場所でもあるんだ」 

あかり「ゆ、結衣ちゃん?落ち着いて……」 

結衣「だから、だからさ」 

あかり「結衣ちゃんっ……」ギュッ 

結衣「だから、だから……死んだ、京子達が」 



39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします2012/05/05(土) 21:54:19.57 ID:M6dNCOXN0






結衣「きっと、私達を呼んでるんだ、早く来いって」