「ボロディン弦楽四重奏団創立者は語る」を読みました。

著者は楽団創立者でファーストバイオリンを担当していたロスティスラフ・ドゥビンスキー。

 

 

ボロディン弦楽四重奏団は1945年に旧ソ連邦で結成されたロシアの弦楽四重奏団で、メンバーが入れ替わりながら現在でも続いている楽団です。

 

第2次世界大戦中から戦後にかけて結成された楽団の創立時のストーリーは、当時の社会背景を含めて、とてもドラマチック。

 

大戦終了前後のソ連(現在のロシア)と言えば、共産主義が権力をますます広げていて、共産党員以外の一般市民の生活はかなり窮屈になっていった時期でした。

 

しかも設立メンバーはユダヤ人だったことから、余計に社会的に困難な状況に置かれていたようです。

 

ちなみに近現代史は、学校でも簡単かほとんど教えていないので、戦後の世界の状況がどのような感じだったのかは、なかなか想像できない人が多いのではないでしょうか。

 

この頃のソ連は共産党以外は認められず、思想統制など行われていたので、一般市民の自由な行動は制限されることも多かったようです。

 

楽団創立者でファーストバイオリンを担当していたドゥビンスキーが書いた回想録は、ソ連音楽界の実態やユダヤ人差別、ショスタコービッチなどの著名な音楽家との交流など、当時の雰囲気や登場人物の感情を細やかに描写していて、読者に戦後のソ連社会を追体験させてくれます。