前回に引き続き、12月FOMC(連邦公開市場委員会)を解説してみます。

 

政策金利(FFレート)は今回も予想通り据え置かれました。

 

また今回のFOMCでは、9月に公開したFRBの経済見通しに若干の修正が加えられました。

前回お話ししたように、FRBの経済見通しは3ヶ月たって変化したわけです。

 

市場関係者もそこは折込んでいるので、変化したのはそれ程驚きではないのですが、以前に比べるとFRB理事のコメントがハト派寄りになった印象を与えました。

 

その影響でFRBの利上げサイクルが事実上終了したと市場は受け止めたようです。

アメリカ国債の利回りは軒並み下落し始めました。

 

そして当然金利が下がったのですから株価は上昇し始めNYダウは史上最高値を記録しました。

 

以下に12月FOMCで示された経済見通しの一覧をまとめてみました。

 

 

 

 

 

 

上記のポイントは、前回9月には、年内あと1回の政策金利の利上げを検討していたFRBは、予定に反して金利を据え置いた事です。

 

つまり予定通り金利を上げたなかったのです。

この大きな理由はインフレ率の予想より早い低下にあると言えます。

 

前回のFOMC発表時で確認できたインフレ率(PCEコア)は4.2%(前年同月比)でした。

しかし、現在の最新データで見るインフレ率(PCEコア)は3.5%です。

 

既に9月の時点で予想していた3.7%のインフレ率(PCEコア)を下回る程低下しています。

その結果、利上げする必要がないと判断して政策金利(FFレート)は据え置かれました。

 

そして、既に予想より早いインフレ率の低下傾向を見て事実上利上げサイクルの終了を宣言した事になります。

 

次の市場の関心は、いつ利下げに入るのかという事です。

実際にFOMCでは利下げ時期について言及する発言があったそうです。

 

これ以上の利上げはないと確信のとれた市場は一気に株価上昇ムードに包まれました。

そしてNYダウの史上最高値の更新に至ったわけです。

 

今まではFRBの理事は表だってハト派的なコメントは避けてきました。

必要であればいつでも利上げの準備がある、などと言って市場を牽制していました。

 

しかし、足下ではインフレ率低下を示すデータはかなり以前からありました。

それらの分析から前回9月のFOMCで発表された経済見通しは余りにタカ派過ぎると解釈されました。

 

ここ2,3ヶ月長期金利を中心に上昇していたのはその影響だったのですが、ようやくここにきてFRB理事もインフレ率の低下を認めざるえない格好となりました。

 

ようやく実際の経済データ通りの発言をするようになったと言うのが正直なところでしょう。

 

アメリカ10年国債の利回りは4%を切るところまで下落しました。

10年国債が5%に近い金利水準はやはり高すぎるので正常値まで下がったわけです。

 

 

そして来年の利下げ回数は3回という見通しも示されました。

前回9月のFOMCでは利下げは2回と示されていましたがここでも修正がありました。

 

予想以上に早いインフレ率の低下を見て、今の金利水準では景気後退(リセッション)を起こしかねないと判断された為です。

 

ある意味では当然の修正だと考えられます。

ここまでFRBは景気後退なくインフレを抑える事を至上命題としていました。

ここで過度に引締め過ぎて景気後退を招いてしまっては今までの苦労が水の泡となってしまいます。

 

失業率は今後上昇する可能性があるので、そのあたりを意識して早めの利下げを考え始めたと思います。

来年の実質金利は2.2%と9月発表時よりも低い設定を立てました。

 

やはりアメリカ経済は多少の減速傾向にあるのが見て取れるので、前回発表時の金利水準ではオーバーキルとなってしまう恐れがあります。

 

このあたりの修正もあった事で市場は安心して、FRBが主張する軟着陸(リセッション無くインフレを抑える)の実現性が高くなったと判断したと考えられます。

 

今後、再びインフレが再加熱する可能性が完全に無くなったわけではありません。

またリセッション懸念も完全に払拭されたわけではないです。

 

しかし、現状の経済データが示す範囲においては無難な修正が加えられて市場関係者を安心させたのが今回のFOMCの結果だったのではないかと思います。