バトラーは小冊子「War is a racket」(戦争はいかがわしい商売だ)の中で、

 

"戦争は、もっとも古い悪質な商売"

 

と述べています。

 

「戦争はラケット、すなわちいかがわしい商売だ。これまで、いつもそうだった。

戦争は、おそらくもっとも古く、何にもましてもっとも金になり、はっきり言ってもっとも悪質な行為だ。

唯一、国際的な広がりをもつ。そして、儲けをドルで、損失を命で勘定する唯一のものだ。

 

第1次世界大戦では、一握りの人が戦いの儲けに沿した。

この戦争(第1次世界大戦)で、少なくとも2万1000人の百万長者や億万長者が新たに誕生した。」

 

バトラーの主張は率直です。そのような現実を間近で見てきたから言えるストレートな物言いです。

 

バトラーは具体的に誰が儲けにあずかったのかについても言及しています。

 

"儲かったのは誰だ"

 

「米国企業の利潤は、通常、6%、8%、10%、あるときには12%といったところだ。

ところが、戦時の利潤ときたら、なんと、20%、60%、100%、300%、ときには1800%にまで跳ね上がる。

まさに青天井だ。商売に限度はない。

 

ある爆薬メーカーは1910年から1914年までの平均収益は年間600万ドルであった。

それでは、1914年から1918年までの戦時中の平均利潤を見てみよう。(第1次世界大戦の期間:1914年から1918年)

なんと、年間5800万ドルの利潤をあげている。

通常の10倍近くというわけだ。950%以上も増えたのだ。

 

戦時中、戦需品の製造に切り替えた小さな鉄鋼会社の場合はどうだろうか。

1910年から1914年までの、ある鉄鋼会社の年間利潤は平均600万ドルであった。

そして戦争がやってきた。同社は忠誠なる市民と同じく、ただちに武器製造に取り組んだ。

1914年から18年までの利潤は年間4900万ドルに達したのである。

 

これは、鉄鋼や爆薬からの利潤の一部だ。ほかにもある。

たとえば銅。戦時にはこれもいい商売になる。

 

米国のある産銅会社の戦前(1910年から14年)の利潤は年間1000万ドル。それが戦争期(1914年から18年)には3400万ドルに増えた。

 

戦争は儲かる?これらの企業にとってはね。だけど、儲かったのは彼らだけではない。

ほかにもあった。たとえば皮革産業だ。

ある皮革会社の戦前3年間の利益総額は350万ドルだった。

年間およそ116万ドルということになる。

 

ところが、1916年になると同社の収益は1550万ドルにふくれた。

つまり1100%増というわけだ。

 

ニッケルなしの戦争はありえない。

そこで、あるニッケル会社の年間収益はわずか400万ドルから7350万ドルに跳ね上がった。

悪くない。1700%以上の増収だ。

 

もちろんこの大戦に融資した銀行家たちを忘れてはならない。

最大の収益をあげたのがいたとしたら、それは銀行家たちだったのだから。

収益は巨大で、しかも秘密だ。銀行がいかにして何百万ドル、何億万ドルもの大儲けをしたのか、私には分らない。なぜなら秘密が公表されることはないからだ。」

 

バトラーは、ほかにも製靴業者、飛行機やエンジンの製造業者、造船業者など数々の産業が大きな儲けを得たと主張しています。

 

そしてこれらの儲けを得るために戦争を煽っていると主張するのです。

 

この小冊子は1935年に書かれました。

日本とアメリカが戦争する6年ほど前の事です。

小冊子の中に以下のように記述されています。

 

「ロシアと日本が戦った1904年、われわれは旧友・ロシアを蹴って、日本を支持した。当時、きわめて寛容なわれらが銀行家たちは日本を財政的に応援した。ところが、今は反日感情をかきたてようという流れになっている。

 

われわれは日本への憎しみをかきたてられ、戦争をやれとかきたてられるのだ。何千億ドルかかるか、何万人もの米国人が命を失い、何万人もの人が身体に障害をきたすか精神のバランスを失うかも知れないのに。

 

もちろん、この損失と引き換えに、利益もあるだろう。何百万ドル、何億万ドルものお金がふところに入るだろう。

ごく少数の人々のふところに。

 

武器メーカー、銀行家、造船業者、製造業者、精肉業者、投機家。彼らはうまみにありつけるだろう。

彼らは、次の戦争への用意ができている。そうでないはずがないではないか。

戦争はいい儲けになるのだから」

 

"ツケを払うのは誰だ"

バトラーは戦争のツケが誰に払わされるのかについても具体的に言及しています。

 

「あの20%、100%、300%、1500%、1800%というどでかい収益は、誰が負担するのだろうか。

われわれみんなだ。

最大のツケを払うのは兵隊だ。

ウソだと思ったら、海外の戦場の米国人墓地を訪れてみたらよい。

あるいは国内の在郷軍人病院へ行ってみたらよい。

これらの病院にずたずたになった人間がおよそ5万人も収容されている。

 

インディアナ州マリオンの政府病院では、1800人の青年たちが独房のような部屋に入れられていた。

そのうち500人は、周囲とポーチのところに鉄条網をめぐらした、鉄格子つきの兵舎に。

 

すでに精神が破壊された彼らは、もはや人間のようにさえ見えない。

彼らの顔の何とひどいこと!

体はしっかりしているが、心はいかれているのだ。

 

こういうケースは何万、何十万といる。そして、今も増加の一途をたどっている。

戦争のものすごい興奮、その興奮からの突然の断絶。

若い青年たちには、耐えられない衝撃だ。」

 

バトラーは戦争がどういうカラクリで起こり、何の目的で行われているのかを、小冊子の中で詳細に暴いているのです。

 

この戦争が起こるカラクリを知らなければ本質が見えず意味のない批判合戦だけが盛り上がり余計対立が激化していくことになるでしょう。

 

バトラーが1番主張したかった事はおそらくそれではないでしょうか?

その為に自分自身が見てきた現実をそのまま伝えて人々に知ってもらいたかったのだと思います。

 

 

※参考文献