2020年初頭から中国の武漢で発生したと言われる新型コロナウィルス感染症が、その後世界中に拡大を続け、世界はコロナパンデミックとなりました。

 

そして、それによって死者、感染者などの被害が拡大していまだに収束の目処がたっていません。

日本は2020年4月と2021年1月、そして2021年4月と首都圏を中心に緊急事態宣言を既に3回発令しています。

 

感染状況が拡大すると今後も緊急事態宣言が発令されるかもしれません。

 

緊急事態宣言が発令された時も含めて、コロナ禍の社会で、経済活動は大幅に制限されました。

 

飲食店の営業時間の短縮、行楽地への旅行、大勢でのイベント開催の自粛など、感染拡大に悪影響があると思われる事は制限される事になりました。

 

その影響で非正規労働者を中心にシフトを削減されて手取り収入が減ったり、休職においこまれたり、最悪、仕事を失う人達も増加しました。

 

新型コロナウィルスが流行する前から、日本はデフレ傾向だったので、需要が上がらない状況がここ20年間続いていました。

 

そして、新型コロナの影響で、失業や所得の減少で、さらに需要を失ってしまったので、経済にとっては大打撃です。

 

当然日本経済にとっては大きな問題なのですが、日経平均株価はコロナ禍でも、徐々に上昇を続け2021年2月に30年ぶりに3万円台にのりました。

 

なぜ経済は大きな打撃を受けたのにこのように株は上がるのでしょうか?

 

疑問に思った方は多いと思います。

 

よく言われるのは、

 

「株価は実体経済を反映していない」

「マネーゲームと経済実態はもはや関連していない」

「現在の株高はバブルだ」

 

などです。

 

どれもけっして間違っていないのですが、しかし、経済の本質的な部分を隠して正確な解説をしているようには思えません。

 

そこで、なぜコロナ禍で株は上がるのか、についてサラッと解説してみたいと思います。

 

まず、日本銀行(日銀)が金融緩和政策をとっているのが大きな理由です。

 

日銀は国債を買って日本の財政を支えています。

そして、それだけでなく、現在、ETF(上場投資信託)という金融商品を買っています。

 

ETFとは日本の上場企業の株をごちゃ混ぜにした金融商品で、簡単にいうと、いろんな会社の株が含まれているのです。

 

どの会社の株がどの程度含まれているかは、わりませんが、とにかく色々な会社の株が含まれている金融商品です。

なので、間接的に日銀は会社の株を買っている事になります。

 

このETFというのは日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)に連動するように運用されています。

つまり、通常時であれば、上場企業の株があがれば、日経平均株価も上がります。

 

なので景気の良い時期であれば日経平均株価は上昇するので、ETFの価格も上がっていきます。

 

個別企業の株を選んで買うよりも、リスクが小さいので金融市場では安定資産とみなされ、株初心者には購入しやすい金融商品と言われています。

 

現在日銀のとっている金融政策はこれを逆手にとって、ETFを購入する事で日本の上場企業の株価を下支えしているのです。

 

だから日経平均株価は上がり、個別企業の株も大きく下がる事はないのです。

 

 

直接日銀が個別の会社の株を買う事は出来ません。

しかし、日銀の役目は金融市場の安定化が最大の使命です。

 

現在のように需要がかなり減少している状況で、なにもせず放っておいたら各企業の株が暴落して金融市場が大混乱します。

 

株が暴落したら、企業の資金繰りが悪化してしまいます。

資金繰りの悪化が原因で企業が倒産して失業者が増加します。

 

そして、失業者の増加はさらに需要の低下を招き、最終的には日本の経済は破綻してしまいます。

 

日銀のETF購入は、このような自体になることを防ぐための、ある意味セーフティーネットのような役目を果たしているといえるでしょう。

 

日銀が間接的に株を買っているので、株が暴落する心配はありません。

その安心感から個人投資家も株買いに走り株価をさらに下支えする効果も期待出来ます。

 

また、民間の金融機関も「日銀がETFを買ってくれるなら」、と思って個別企業の株を買って、その株を運用してETFとして売り出します。

 

 

企業は事業を運営する為の資金を主に金融市場から調達します。

 

資金調達の手段は、借入、社債発行、増資などがあります。

銀行からの借り入れ、社債発行、増資など様々な事をして資金繰りを安定させます。

 

それによって会社の倒産を防ぎ、労働者の雇用を守る事が出来ます。

 

現在は主に借入金で資金調達している企業が多いようですが、借入金を自己資本とみなすことができる「資本性劣後ローン」などで資金調達している企業もあります。

 

今後のコロナ禍が長引けば、借入金によって悪化した財務状況の改善の為に「資本性劣後ローン」を利用する企業も増えていくかもしれません。

 

 

「日銀が株を買うなんて日本はもはや社会主義国家じゃないか」

 

ともっともらしい事をいう評論家がいますが、それは政治において左翼右翼などとレッテル貼りする事と同じで間違った考えです。

 

むしろ、そういった批判は、世界の支配者層からみれば喜ばしい批判です。

 

この非常事態時に日銀がなにもしなければ、世界大恐慌になってしまいます。

 

実際に100年前、世界大恐慌が起こりました。

その時のFRBをはじめ世界の中央銀行の金融政策の誤りによって、世界は大混乱しました。

 

その結果過激思想が台頭して第二次世界大戦が引き起こされてしまったのです。

 

そして戦争で大儲けをしたのは、国際金融資本家です。

紛争が起これば兵器・武器など沢山売れるので紛争はかれらにとってまさに飯の種と言えるでしょう。

 

こういったことは歴史上ごく当たり前のように起こってきました。

 

しかし、今は庶民の生活水準も向上し、経済に対する知識も豊富にあるので、100年前のように大恐慌を起こすことは難しいでしょう。

 

庶民の経済や金融の知識の向上がこういった間違った考えを一掃して、大損害を避けることに繋がると思います。

 

 

※参考文献