2010年代後半から経済学の貨幣理論で、MMT(現代貨幣理論)という理論がよく知られるようになりました。

 

きっかけはMMTの権威と言われるアメリカのステファニー・ケルトン教授が2019年に来日したことです。

 

ニュースや国会でもMMTについて取り上げられ、私も初めてこの理論を知りました。

 

初めて聞いたときの感想は、

 

「こんな都合のよい理論がホントにあるのか。こんな怪しげな理論をまともに聞いていたら、絶対、日本は欺されるから気を付けた方がよい」

 

と思いました。

 

しかし、よくよく考えてみると、すごく当たり前の事を言っている理論だと言うことがわかりました。

 

貨幣の本質が理解出来れば、ごく当たり前に受け入れることが出来る理論、だというのが今の感想です。

 

ただ、理論の言っていることがあまりに革命的な考えで、言ってみれば、天動説から地動説へ変わったくらいの大きな考え方の変化が必要なので、多くの人に浸透するには時間がかかると思います。

 

地動説もほんの400年前までは、異端とされていました。

 

現代人には当たり前の地動説も、400年前まではむしろ少数派で、「地球が丸くて太陽の周りを回っている」などと言ったら変人扱いされていました。

 

 

MMTが言ってる事をまとめると以下になります。

 

「①変動相場制の通貨で、②自国通貨建ての国債は、③インフレ率が許す限りにおいて(おおむね2%程度を上限)、④いくら国債を発行しても、⑤経済になんら問題はない」

 

簡単にいうと

 

「インフレ率が2%超えない限り国債をいくら発行しても大丈夫」

 

という事です。

 

 

これらの事がホントに正しいのか検証する際、最もわかりやすい実験場がまさに日本です。

 

この20年間の日本の経済状況を見ればMMTがほんとに正しいのかがよくわかります。

以下、日本の経済状況を参考にしながら解説してみたいと思います。

 

 

①日本の円は変動相場制の通貨なのでこれは正しいといえます。

 

②日本国債は自国通貨建ての国債なのでこれも正しいといえます。

 

③日本はこの20年間インフレ率は一度も2%を超えていないのでこれも正しいと言えます。

 

④日本の国債発行額はGDPの2倍の1000兆円を超えています。GDP比で世界最大の国債発行をしているので、これも正しいと言えます。

 

⑤最後の経済になんら問題はない、というのは、いくつかの数値を実際に見て検証してみます。

 

まず、金利ですが、国債を多額に発行すると、いわゆるクラウディングアウトという現象が起こって市中の金利が上昇すると言われてきました。

 

それによって民間の需要が抑えられるので国債発行は需要創出に繋がらないと言われてきました。

 

が、金利は低いままです。

 

つまり国債発行は需要抑制にならないので問題ありません。

 

次にマンデルフレミングモデルと言われる、金利上昇に伴い通貨の価値が上がって、輸出にマイナスになるので、国債発行しても需要回復に繋がらないと言われてきました。

 

が、そもそも金利が上がってないのでこのモデルは誤りであると言えます。

 

国債が暴落して日本の財政が破綻する危険があるかどうか、見ると、国債の値段は安定しています。

国債の金利も低いままなので、日本の財政に問題はないと言えます。

 

最後に日本は債務不履行の危険があるかどうか見ると、国債は日銀が買っているのでその心配はありません。

 

つまり、日本経済に問題らしい問題はないので、⑤も正しいと言えます。

 

 

日本はこの20年間、

 

「①変動相場制の通貨で、②自国通貨建ての国債は、③インフレ率が許す限りにおいて(おおむね2%程度を上限)、④いくら国債を発行しても、⑤経済になんら問題はない」

 

を実践してきたのです。

 

だからMMTは正しいと言わざる得ないのです。

 

これを覆す事象が1つでも見つかれば、MMTは間違いと言えますが、今のところ私は見つけていません。

 

MMTは地動説と一緒で、ただの事実を言っているに過ぎません。

 

保守的な言論人は左翼の思想だと言って批判しますが、MMTは思想でなく事実なのです。

 

地球が丸いという事実を誰も否定出来ない事と同じで事実なのだから仕方ないのです。

現代の経済においては正しい認識と言わざる得ないのです。

 

この事実を受け入れた上で、経済を考えなければ、そもそも正しく経済を理解する事が出来なくなります。

 

MMTが正しいからどうなんだ、と言われると困りますが、それは地球が丸いからなんなんだ、と聞くのと同じようなもので、要は認識の違い、と言えます。

 

正しい認識の上に立って、考えないと経済学にしても天文学にしても発展していきません。

 

いつまでも天動説が正しいと思っていたら、天文学のその後の進歩について行けなくなります。

 

なので正しいものは正しいと認識して、その視点で経済を考える事が大事だと思います。

 

 

※参考文献