今回は、不当解雇(リストラ)に関する判例を紹介します(つづき)。 
(2)当審における控訴人の主張に対する判断
ア 控訴人は、軍隊においては厳重に規律ないし秩序を維持することが必要であるから、原判決のように制裁解雇事由を限定的に解釈することは相当ではないと主張する。
 被控訴人が所属していたMCCS自動車輸送課は福利厚生部の一般車両の整備等を担当する部署であって、軍事行動や兵器の管理に直接関与する部署ではないから、その職務が民間の自動車整備工場と本質的に異なるものとは認め難い。本件全証拠をもってしても、上記部署において殊更に厳重な規律ないし秩序の維持が必要であると認めるに足りない。
 諸機関労務協約には「秩序を乱す行為」「重」に加えて「軽」(業務、規律または士気に悪影響をあたえる乱暴な騒がしい遊び。無礼な、下品なまたは挑発的な言葉を用いること。喧嘩(けんか)または喧嘩を煽動(せんどう)すること)が規定されているところ、控訴人の主張するように「重」を広く解すると「軽」の存在意義が失われ、制裁解雇事由のうち「秩序を乱す行為」に2段階を設けた諸機関労務協約の趣旨に反することとなるのは被控訴人において指摘するとおりである。
イ 控訴人は、N2の原審供述は全面的に信用することができるものであると主張する。
 原判決が適切に説示するとおり、N2の原審供述は具体性及び迫真性に富むものではあるものの、被控訴人を制裁解雇しようとする海兵隊人事部の意向に沿い、その上司であるP2とともに被控訴人に不利な虚偽供述を行うおそれを否定することができない。
 さらに付言すると、証拠(乙17、N2の原審供述)によれば、本件発言の当日、被控訴人はまずN2に対して注意書やカウンセリング記録のすべてのコピーを要求し、その必要性についてQ2が被控訴人を馘首しようとしているのに備えて資料を集めると説明していたこと、本件発言はその直後であったとされているところ、N2がいうようなQ2殺害の確定的な意思を窺わせる本件発言の内容と上記資料交付の請求目的とは両立し難いように思われる。また、控訴人は、本件発言の内容は直ちにQ2を殺害し又はこれに準ずるような深刻な打撃を加えるという切迫した危険を感じさせるものであった旨主張するところ、仮にN2においてそのように感じるようなものであったとすると、本件発言は殺人ないし強度の暴行の予告であり得るから、直ちに当局にその旨連絡し、被控訴人をも対象として事実の存否・経緯や重大性の有無について速やかな調査ないし捜査や必要に応じて身柄の確保等が行われるべきところ、実際には翌日から被控訴人を休業手当支給身分としたにとどまり、また海兵隊人事部による被控訴人に対する調査が開始されたのが1か月以上経過した後である平成19年2月27日であることはいずれも控訴人において自認するところである。前認定事実にこれらの対応等を総合すると、少なくともN2は本件発言をもって実際に殺人等の犯罪行為が行われる可能性が高いとは受け止めていなかったことが推認されるのであって、結局N2のいう本件発言の内容の真実性は疑わしいといわねばならない。
ウ 控訴人は、被控訴人の原審供述は不自然なものである上に客観的事実と符合しないから信用することができないと主張する。控訴人の主張は、被控訴人が平成19年1月17日午後3時40分ころ、メンテナンス事務所付近でたばこを吸っているN2を見たとの原審供述につき、〔1〕N2は当時禁煙していたこと、〔2〕N2は同日午後3時19分ころ給油所でブレーキクリーナーを購入していたことという2つの客観的事実と矛盾するとするものである。
 N2は平成19年1月17日当時に禁煙していたと原審において供述するところ、その裏付けとなる客観的な証拠は何ら存しない。証拠(乙46、47、N2の原審供述)によれば、N2が同日午後3時19分ころに給油所にてブレーキクリーナーを購入した事実が認められるところ、当該給油所はメンテナンス事務所から約1km(自動車で2、3分程度)にあったのであるから、N2が同日午後3時40分ころにメンテナンス事務所付近にいたことと何ら矛盾するものではない。
 また、原判決が適切に説示するとおり、被控訴人の原審供述にはあいまいな部分があるにせよ、上司であるQ2に不満を抱くN2に対して、同感であることを表わすためにQ2に対する被控訴人の否定的評価を明らかにしたものであると解するのが自然であることは原判決において説示するとおりであり、また、被控訴人が突然Q2に殺意を抱く動機は何ら窺われないのであって、Q2を殺害し又は何らかの物理的攻撃に出ることを高い蓋然性で予見させるような発言をしなかったという限度では信用することができる。
なお、不当解雇(リストラ)についてお悩みの方は、専門家である不当解雇(リストラ)を扱う弁護士に相談してください。また、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料金やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉オフィスや店舗の敷金返却請求(原状回復義務)多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。