今回は、残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。
(1)ア 原告は、原告の賃金の計算においては月の中途で入社又は退社した場合でも一か月分の賃金の全額が支払われると主張する。
イ しかし、仮に月の中途に入社又は退社した従業員について一か月分の賃金の全額が支給されるべきであるとすると、その従業員は入社又は退社した月の所定労働日の全部について労務を提供しなかったにもかかわらず一か月分の賃金が支払われることになるが、それはいわゆるノーワーク・ノーペイの原則(労働者が労働をしなかった場合にはその労働しなかった時間に対応する賃金は支払われないという原則)の例外をなすことになるから、月の中途に入社又は退社した従業員について一か月分の賃金の全額が支給されるべきであるといえるのは、労働者が使用者との間で月の中途に入社又は退社した場合でも一か月分の賃金の全額を支払うことを合意した場合に限られると解するのが相当である。
ところで、原告と被告は本件契約の締結の際に原告に固定給として一か月当たり金四〇万円を支払うことを合意しているが、原告の賃金が固定給であることを合意したというだけでは月の中途に入社又は退社した場合でも一か月分の賃金の全額を支払うことを合意したということはできない。かえって原告と被告は本件契約において被告の原告に対する賃金の支払は二〇日締めの月末払いであることを合意しており、これによれば、原告の一か月当たりの賃金の計算に当たっては原告が現実に何日稼働したかを勘案して原告の具体的な賃金額を決定することとされていたものと考えられる。そして、本件においては他に原告と被告が原告の賃金の計算において月の中途に入社又は退社した場合でも一か月分の賃金の全額を支払うことを合意したことを認めるに足りる証拠はない。
ウ そうすると、原告と被告が本件契約の締結の際に原告の賃金の計算において月の中途に入社又は退社した場合でも一か月分の賃金の全額を支払うことを合意したと認めることはできない。
(2)ア そこで、次に、月の中途に入社又は退社した場合の原告の賃金をどのような方法によって計算するのが本件契約の解釈として合理的であるかを検討する。
イ 原告と被告が本件契約の締結に当たって原告の賃金の計算方法についてノーワーク・ノーペイの原則に反するような計算方法を採用することを合意していないことは前記第三の一2(三)(1)イ、ウのとおりであるから、月の中途に入社又は退社した場合の原告の賃金の計算においてはノーワーク・ノーペイの原則に従って原告の一日当たりの賃金に原告の稼働日数を乗じた金額をもって原告が入社又は退社した月の原告の賃金とすることは本件契約の解釈としては一応合理性を有するというべきである。そして、被告は原告の賃金について日給金一万六〇〇〇円又は金一万六四〇〇円、月二五日計算として日給月給金四〇万円又は金四一万円であると主張していることからすれば、被告は月の中途に入社又は退社した原告の賃金の計算に当たっては原告の一か月当たりの賃金四〇万円又は金四一万円を月平均所定労働日数二五日で除した金一万六〇〇〇円又は金一万六四〇〇円をもって原告の一日当たりの賃金とすることにしたものと考えることができ、原告の一日当たりの賃金を金一万六〇〇〇円又は金一万六四〇〇円とすることには合理性があるといえる。なぜなら、原告の賃金はいわゆる月給制であるが、各月の所定労働日数の長短にかかわりなく、月額賃金は同一であること(前記第三の一2(二))、本件全証拠に照らしても、原告と被告が本件契約の締結の際に労働基準法三五条に規定する休日について賃金を支払うことを合意したことを認めるに足りる証拠はないことに照らせば、原告の一か月当たりの賃金の支給の対象となっているのは各月の所定労働日数ではなく月平均所定労働日数(労働基準法施行規則一九条一項四号を参照)であると解するのが相当であるところ、一年間を三六五日としてこれから労働基準法三五条に規定する休日として五二日を差し引いた残日数三一三日を一二か月で除すと、一か月当たり二六日(一日未満の端数は切捨て)となり、したがって、原告の一日当たりの賃金は金四〇万円又は金四一万円を二六日で除した金額ということになるが、被告は原告の月平均所定労働日数をそれよりも一日少ない二五日として原告の一日当たりの賃金を算出しているのであり、原告の賃金の日割り計算に当たっては原告に有利な取扱いをしているといえるからである。
そうすると、原告の一日当たりの賃金は九月分については金四〇万円を二五日で除した金一万六〇〇〇円であり、一〇月分以降については金四一万円を二五日で除した金一万六四〇〇円である。また、九月分の賃金の支給対象の期間内に原告が稼働した日数は一九日であり、一二月分の賃金と(ママ)支給対象の期間内に原告が稼働した日数は七日である(前記第三の一1(四))。したがって、九月分の賃金は金三〇万四〇〇〇円であり、一二月分の賃金は一一万四八〇〇円である。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談交渉、刑事事件や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
(1)ア 原告は、原告の賃金の計算においては月の中途で入社又は退社した場合でも一か月分の賃金の全額が支払われると主張する。
イ しかし、仮に月の中途に入社又は退社した従業員について一か月分の賃金の全額が支給されるべきであるとすると、その従業員は入社又は退社した月の所定労働日の全部について労務を提供しなかったにもかかわらず一か月分の賃金が支払われることになるが、それはいわゆるノーワーク・ノーペイの原則(労働者が労働をしなかった場合にはその労働しなかった時間に対応する賃金は支払われないという原則)の例外をなすことになるから、月の中途に入社又は退社した従業員について一か月分の賃金の全額が支給されるべきであるといえるのは、労働者が使用者との間で月の中途に入社又は退社した場合でも一か月分の賃金の全額を支払うことを合意した場合に限られると解するのが相当である。
ところで、原告と被告は本件契約の締結の際に原告に固定給として一か月当たり金四〇万円を支払うことを合意しているが、原告の賃金が固定給であることを合意したというだけでは月の中途に入社又は退社した場合でも一か月分の賃金の全額を支払うことを合意したということはできない。かえって原告と被告は本件契約において被告の原告に対する賃金の支払は二〇日締めの月末払いであることを合意しており、これによれば、原告の一か月当たりの賃金の計算に当たっては原告が現実に何日稼働したかを勘案して原告の具体的な賃金額を決定することとされていたものと考えられる。そして、本件においては他に原告と被告が原告の賃金の計算において月の中途に入社又は退社した場合でも一か月分の賃金の全額を支払うことを合意したことを認めるに足りる証拠はない。
ウ そうすると、原告と被告が本件契約の締結の際に原告の賃金の計算において月の中途に入社又は退社した場合でも一か月分の賃金の全額を支払うことを合意したと認めることはできない。
(2)ア そこで、次に、月の中途に入社又は退社した場合の原告の賃金をどのような方法によって計算するのが本件契約の解釈として合理的であるかを検討する。
イ 原告と被告が本件契約の締結に当たって原告の賃金の計算方法についてノーワーク・ノーペイの原則に反するような計算方法を採用することを合意していないことは前記第三の一2(三)(1)イ、ウのとおりであるから、月の中途に入社又は退社した場合の原告の賃金の計算においてはノーワーク・ノーペイの原則に従って原告の一日当たりの賃金に原告の稼働日数を乗じた金額をもって原告が入社又は退社した月の原告の賃金とすることは本件契約の解釈としては一応合理性を有するというべきである。そして、被告は原告の賃金について日給金一万六〇〇〇円又は金一万六四〇〇円、月二五日計算として日給月給金四〇万円又は金四一万円であると主張していることからすれば、被告は月の中途に入社又は退社した原告の賃金の計算に当たっては原告の一か月当たりの賃金四〇万円又は金四一万円を月平均所定労働日数二五日で除した金一万六〇〇〇円又は金一万六四〇〇円をもって原告の一日当たりの賃金とすることにしたものと考えることができ、原告の一日当たりの賃金を金一万六〇〇〇円又は金一万六四〇〇円とすることには合理性があるといえる。なぜなら、原告の賃金はいわゆる月給制であるが、各月の所定労働日数の長短にかかわりなく、月額賃金は同一であること(前記第三の一2(二))、本件全証拠に照らしても、原告と被告が本件契約の締結の際に労働基準法三五条に規定する休日について賃金を支払うことを合意したことを認めるに足りる証拠はないことに照らせば、原告の一か月当たりの賃金の支給の対象となっているのは各月の所定労働日数ではなく月平均所定労働日数(労働基準法施行規則一九条一項四号を参照)であると解するのが相当であるところ、一年間を三六五日としてこれから労働基準法三五条に規定する休日として五二日を差し引いた残日数三一三日を一二か月で除すと、一か月当たり二六日(一日未満の端数は切捨て)となり、したがって、原告の一日当たりの賃金は金四〇万円又は金四一万円を二六日で除した金額ということになるが、被告は原告の月平均所定労働日数をそれよりも一日少ない二五日として原告の一日当たりの賃金を算出しているのであり、原告の賃金の日割り計算に当たっては原告に有利な取扱いをしているといえるからである。
そうすると、原告の一日当たりの賃金は九月分については金四〇万円を二五日で除した金一万六〇〇〇円であり、一〇月分以降については金四一万円を二五日で除した金一万六四〇〇円である。また、九月分の賃金の支給対象の期間内に原告が稼働した日数は一九日であり、一二月分の賃金と(ママ)支給対象の期間内に原告が稼働した日数は七日である(前記第三の一1(四))。したがって、九月分の賃金は金三〇万四〇〇〇円であり、一二月分の賃金は一一万四八〇〇円である。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談交渉、刑事事件や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。