「鍵の掛かった男」感想メモ3 ※ネタバレあり | 猫の島調査報告書

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月夜にささやかな酒宴 ことのは積み上げ十年目

「鍵の掛かった男」/有栖川有栖/幻冬舎。

ネタバレありの感想&メモ。

メモが長いため以下のように3分割。
感想1……第一章~第三章
感想2……第四章~第六章
感想3……第七章~終章

※紹介記事として書いていないため、文章は纏めていない。メモと心の叫び。
※(P.xx)は、根拠となる描写のあるページ数。


話の切れ目的に、このように分けたんだが、
実はこの後のメモは少なかった。
最後の事実と解決編であるから、感想の比率のが高い。




■時間軸(本編続き)
2/12(木) 火村と有栖、美菜絵の体調のことを知る
     萬貴和子、新たな証言をする

2/13(金) 鷹史と梨田の親子鑑定結果が出る
     梨田の手紙、銀星ホテルに着く
     火村、犯人に気付く

2/14(土) 有栖、チェックアウト

2/15(日) 影浦、事件の顛末を知る

2/16(月) 火村と有栖、天満署にて面会

3/ 3(火) 梨田の四十九日法要


■位置情報
G)2/12 昼ご飯の蕎麦を食べた店
ホテルの近くで蕎麦(P.429)

→Google先生的に一番近いのは、銀星ホテル位置の南にある「吉々」。所謂サラリーマン御用達な街のお蕎麦屋さんという雰囲気。
その次はホテルより北のダイビル内にある「三間堂」かな。
ただ昼食後、中之島を一巡りした後に、ダイビルの丸福珈琲店に入ってるので、二度続けては行かないのではないかということと、より近い方で吉々を推します。


■梨田の手紙
・梨田からの手紙は何故2/12に投函されたのか(P.468)

・手紙文中に、(夏子の写真は)「アルバムの一番後ろのページに貼ってあります」(P.474)の文章
→梨田が手紙を書いた時点では、写真は普通の状態だった。つまりアルバムの写真を剥がしたのは梨田ではなく、2/12に手紙を再送した人物で、しかも手紙を読んだから剥がしている。

→アルバムから剥がしたのは殺害後、でないと毎日写真を見ている梨田が気が付く。またすぐに捜査で物証確保されているはずなのでアルバムに触る機会の有った人物。よって九分九厘、犯人。

→何故手紙と写真を戻して来たのか?
簡単に言えば、隠す必要が無くなったで良いはず。逆に、明るみに出す必要が有った、でもいいか。
この手紙の内容は「梨田と鷹史は親子」以上の情報を齎さないのだが、そのことで恩恵を受けるのは?

明示されてメリットが有るのは、遺産や人間関係から鷹史。
遺産だけなら美菜絵やホテルを守りたい丹羽あたり。
でもそしたら最初から隠さないよな。

→犯人の指紋は付いてないのか?
→梨田が使った外封筒(備え付け3枚の内の1枚)には、もしかしたら付いていたかも。殺害直後ならば、手袋をしていたはず(腕時計の指紋無いあたり) なので、あまり関係ないか。
あ、手袋確定じゃないな。腕時計は拭いたかも知れないんだった。
 
■その他
・自殺幇助説(P.426)かー。
 女性はそんなにロマンティストじゃないだろう。美菜絵が親子関係に気が付いて遺産目当てなんてのならともかく。

・ハウスキーパーたち(P.427)
 →このあたりの曖昧なところは本筋に関係ないんだろうな。部屋位置も、多分。

・「IT企業の社長さんとか(P.437)」
 →またヒムヒムに新しい形容がwww


・美菜絵が妊娠している(P.443)
 →色々狭まるじゃないですか。
  これ重要情報なんだろうな。知っていたのは鷹史、露口、丹羽、梨田

 →ほほう、なるほどなるほど。
  梨田の心理は僕じゃ気が付かないかもしれんな。


・1/14 3:10amごろ四階に続く階段に人がいるような気配(貴和子、P.457)
 →んんん?
  実は遺体引きずり説だと、影浦先生は無理じゃないかと思うんだよなー。妊娠中の美菜絵も。
  重たい楽器を持ち慣れている鹿内、看護士経験の有る露口ならともかく、人の体って重いじゃん。 

 →というか、この証言を信じるとして、そこにいた人は何をしてたんだ?
  部屋に帰ろうとしてただけ?

・P.500あたり、フィクションゆわれても一寸緩いかな、というところもあるなあ。
 手紙の説明はつくので、物理的な謎の突破はロジックだからいいのか?

・え、その動機でこんな面倒くさいことすんの!?(P.505、513)

・捜査が鍵孔で、あの手紙が鍵(P.481)
 もいっちょ。

・「彼の目は異様に輝いていた」(P.327)
 「その目は熱帯の太陽のごとくギラギラと輝いていた」(P.524)
 →火村と影浦。
  影浦先生の持論を深読みしたい。また登場しないか期待。

・あとがきを読んで少し安心した。一応。


■全体の感想
やはり長編は良い!
一気読みのしがいが有った。その分リアルタイムで手紙の考察が深く出来なかったのが、硲の謎が解けなかった理由。メモまで取ってたのにな……。

前半の有栖の活躍や、情景の新鮮さは素晴らしい。
対して後半、推論に推論を重ねてる気もする。
犯人は手紙の件で絞れるとしても、ちょっと納得感が少なくなってしまうのはその所為か。
勿論あの手紙のところは流石にキラッよりもギラッとしていて好きだが。久しぶりに唸った。満足というか充足感たっぷり。
余裕で技を繰り出された感。

終章の幕引きは、また春の哀しさと美しさに心揺らされた。


1月は文楽劇場の近場ホテルのつもりだったのだが、中之島に泊まりに行くべきなんだろうか。メモを纏めていたらそんな思いも出てきた。ステルスなんちゃらどころじゃないw。これは二泊三日コースだよ。
奇しくも丸1年後。

(そうそう、文楽劇場のホームページ掘り返してたら、有栖川有栖のコラムがちょいちょい読めたりして、ただの一挙両得というか俺得だったり。
上方芸能とかなー。また雑誌も追わないと。)
 


結論として、

この本が好きだ。




以上。
 









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