ドグラ・マグロの惨劇 | 猫の島調査報告書

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月夜にささやかな酒宴 ことのは積み上げ十年目

「暗号の研究」/有栖川有栖/角川ビーンズ文庫

久しぶりに読む作品ばかりで、これはこれで面白かったです。

以下、
ちょっこっと我が儘で辛口感想も多分に含まれます。




前の「密室の研究」でも薄々感じてはいたのですが、
今回の短編集シリーズの作品チョイスが、どうしても合わないらしいと判明。
 

〈収録作品〉
「ジャバウォッキー」 
  
予想通り。
 
 意外かもしれませんが、有栖川短編作品では現在進行形の動きのある事件を描いているものに良作が多く(終わった所に火村准教授が招かれる一般パターン化から外れるからか?)、「ジャバウォッキー」は軽めながら小道具の巧さとカタルシスを感じられる佳い作品です。
 巻頭にこの作品があるのも普段と読み心地が違って面白いですね。


「英国庭園の謎」
  
予想通り。
  
 後味は良くないのですが、初読でも暗号を解きながら読めるのが良いところです。
 富豪の邸宅にある英国庭園というシチュエーションは往年のミステリを彷彿とさせ、なかなか趣があって好きです。


「暗号を撒く男」
  
ふーん。
 
 極々軽めだが、中間の口直しと思えばいいか。
 朝井先生も出演で華を添えてる。
 しかし、もう少し別のものでも良かったような。


「あるYの悲劇」
  
何故入れたし!

 前にも書きましたが、硲の中の有栖川ワースト3に入っている作品です。暗号もの? っていう気もする。
 今読むと、そこまで毛嫌いする程酷くはないのですが(最近慣れてきたかw)、やっぱり何となく薄い。且つ、強引に造った感は否めないです。



「比類のない神々しいような瞬間」 
  
盲点。
 
 まぁ、盲点というかダイイング・メッセージを暗号ものと解釈するか否かで、自分は基本否定派な為「あるY~」共々ここで採られるとは思っていなかったてぇのが理由。作品としては、一点ネタの割に何故か好き。
 初出ジャーロ掲載ということで、2002年は既にジャーロだったことに驚きを隠せません。


「英国庭園~」と「比類のない~」を同時収録ということで、ビーンズ文庫の紙質と相俟って可成の厚みに仕上がっています。
「比類のない~」を手軽に読めるのは好いなぁ。