犬のミステリー | 猫の島調査報告書

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月夜にささやかな酒宴 ことのは積み上げ十年目

「犬のミステリー傑作選」/編・鮎川哲也/河出文庫。 
 
「猫のミステリー傑作選」は既読だったのだが、この度「犬~」も入手したので感想なぞ。
犬があまり幸せじゃない結末が多いので、愛犬家のかたは注意。
 
 
 
 
●「放火した犬」/佐野洋。
流行らない喫茶店『黒鳩』が放火される。店内には犬の焼死体が在ったことから犯行時刻は絞られたのだが……というちょっとおかしな話。
犬、とばっちりに遭う。微妙にパズラーな流れだなぁ。
雑種
 
 
 
●「無能な奴」/樹下太郎。
現代社会の歪みが云々言いたくなる被害妄想サラリーマンの話。
他の収録作品とは少し変わった犬が出てくる。ショートショートっぽい。
犬種?
 
 
 
●「犬と剃刀」/香山滋。
海辺の別荘に軟禁されている妻と閉じ込めている夫と浜をうろつく犬の物語。
犬、とばっちりに遭う・其の2。
久しぶりの香山滋。うぇ、生々しい……。日常に有りそうで無さそうなライン上、血の色や粘り気が紙面から感じられる。
不快な顔つきの白犬
 
 
 
●「野犬と女優」/御手洗徹。
女優が夜道で何物かに襲われて死亡した。
奇妙な傷跡は、監察医の見立てどおり野犬の仕業なのか? という話。
 
12人の愛人の男w。愛人にはモデルがいるとかいないとか。
刑事が取り出すは、嗚呼懐かしの“新生”。(漢字表記珍しい)
野犬
 
 
 
●「蝋燭を持つ犬」/多岐川恭
女性ばかりのアパートで起きた奇妙な焼死事件の話。
 
これ、謎な題名だよね。最初丑の刻参りみたいな犬を想像したから、頭の中がカオスに。イヤだなぁ頭に火の点いた蝋燭があるマルチーズ(笑)
最後に予想通りのどんでん返しが。主人公の語りが読みやすい。
マルチーズ
 
 
 
●「タロの死」/竹村直伸。
最近父を亡くした母子家庭の子供が見知らぬ女性から犬をもらう。
それは前に飼っていた犬そっくりで、名前も同じタロと云った。
 
あ、これ好きだなぁ。
話自体はやりきれないと、しょうもない感が7:3ぐらいだが、変なタイミングで描写を入れるこの文章の癖が好きだ。
この作家の長編が読みたい。
ワイヤーテリヤ
 
 
 
●「赤い犬」/椿みち子。
タレント一家が自宅に帰ると、庭を真っ赤な犬が走っていた。
その翌日、一家の夫人には惨劇が……、というホラーチックな小道具の話。
 
あれ、バスカビル家?(違う)
スピッツ
 
 
 
●「虹色の犬」/仁木悦子。
幼いころに亡くなった母を想うと、思い出すことがある。
「奥様」と呼ぶ声と、虹色の犬。
 
美しい文章が奇妙な思い出を引き立てる。この動機はアリ?
スピッツ、雑種
 
 
 
以上。