BG、あるいは | 猫の島調査報告書

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月夜にささやかな酒宴 ことのは積み上げ十年目

 
 
「BG、あるいは死せるカイニス」/石持浅海/創元推理文庫。
 
 
いい特殊設定ミステリだった。
非常にブラックだが、後味もいいね。
 
 
<あらすじ>
普通の女子高生・遙が主人公。
同じ学校に通う大好きな姉・優子が、ある夜、学校の天体観測に行き、殺されてしまった。
遺体にはレイプ未遂の跡があったが
犯人は、本当に通り魔なのか。
 
怒りに立った遙は、級友達と一緒に事件の真相をつかむと誓う。
←この辺が"学園ミステリ"
 
 
<特殊設定>
昨日も書いたが、
人間が全員女性で生まれる世界です。
しかし、単性生殖ではないんだ。
 
硲の頭の混乱を解消するために、
主人公の女子高生・遙の家族を例に取って説明する。
 
 
 遙の父は元々、女性として生まれる。
 男性Aと結婚して、優子を出産。
 ↓
 男性化。
 ↓
 今度は女性Bと結婚。
 そのBが遙を出産。
 
 
∴ 遙にとっては父だが、優子にとっては母親なんだ。
 
 
その辺りが面白いよね。
この世界の人間は生存本能が強い。
人口の4分の1しか男性化しないとか、
(の割に、殆ど男は登場しない)
だから一夫多妻で子づくりに力を注げるとか、
女性多数でも、殆どレズビアンにならないとか。
男であるのが辛いかもしれん。
 
 
 
<感想 ほか>
事件の真相は、なんとなく途中予想が当たってしまったので驚いた。
ファジーに結末がつけられそうだったので、正統派解にびっくり。素直に思ったとおりの展開。
あと、伏線が殆ど隠れてない。
 
 
1番の謎は、
男性が男言葉を使っていたことだ。
 
元々丁寧な話言葉の人が男性化したからって、そのままの言葉使いだと周囲から違和感を持たれるというのが解せない。
あの世界観で、言葉使いを変えるような社会の要請があるとは思えないんだが。
男性の方の歪みなのか。
 
 
 
最後の最後、
解説でのオススメ作品の殆どが、
既読かつ大好きな部類の作品で笑う。
山口雅也西澤保彦も、柄刀一アシモフも大好きだ!
浅羽莢子氏も大好きだ!
 
 
 
 
以下、読み途中時のネタバレ感想。
 
今回は実にネタバレ。
 
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170ページ やはり遙が突然男性化しかけてる? いやいや、そんなご都合主義はないだろう。
 
185ページ ちょ、先生「辛いそうだが」って、他人事みたいに言ってるし。やっぱり男性体じゃない? 両性かな?
優子の衣服が剥がれてたのは、男性化しかけているか確認するためだと思っていたが、ハイ消えた。そんなに急激に変わったら服着てようがバレるわな。
 
つか、そしたらアレか?
しかし、となると校長か。動機ないけど。
大穴は岡部刑事(笑)、研究者とも繋がってないわけないだろうし。岡部のアリバイ発言あったかな。確認。
 
まぁ学校で殺す理由は校長のが強いな。だが、他に行方不明者を匂わす記述がない。もうちょっと根深いよなー。校長の秘密がわからん。佐々木と繋がってもないみたいだし。
父親は圏外。
 
 
279ページ キタ━(゜Д゜)━!!
GはGIRLじゃないのか、つまらん。
 
 
336ページ やっぱりGIRLなのか。
孤独な人、ね。
 
 
結末。
これは、つまり
今我々のいる世界と同じになる訳だよね。超皮肉やん。
しかし遙の清々しさが良かった。