九月の恋 | 猫の島調査報告書

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月夜にささやかな酒宴 ことのは積み上げ十年目


あの後、1時間ほど
腹痛でのたうちまわってみました。
何事も無かったかのように感想記事いきます。


「九月の恋と出会うまで」/松尾由美/新潮文庫。


ちょっとお洒落な古いマンションに引っ越してきた主人公。

ある日部屋の片隅から、
知らない男の声が聞こえてきて彼女に頼みごとをする。
幽霊?
いや、声の主は自分のことをマンションの隣室にいる住人だと言う。
しかも、彼は1年後の世界にいると。



著者はSFの人だと再認識。
ミステリーの人なんだけど、こういう設定をぽんと持ってくるのが面白かった。
途中である現象を大江戸線に例えるところなんかも。

しかし大江戸線て。ローカルな(笑)
ゆりかもめとか、外苑前から銀座線とかご当地もののような感覚でした。
表参道の同潤会アパートのくだりは懐かしかったな。


ミステリー分は、微妙。
うん、一応物語全体を通した謎とネタばらしがあるし、辻褄も合っているから広義ミステリーの内か?
SFっぽい面に気を取られるので、その謎の正解がどーでもよくなっていた、というのが正直なところ。

登場人物はそこそこ個性的で好感も持てる。
主人公が普通にのOLなのに突拍子ない行動に出たり、隣人・平野や倉がウザかったり、マンションのオーナーである画家が偏屈だったり。ちょっとおかしいところが、逆に普通の人間でいい。
しかし、ラストはあの人が濃すぎて駄目だった。恋愛ものが得意なかたには美味しいのかもしれない。


生きてるなーって実感したいかた
ゴドーを待ちながら暇なかた
ご都合主義が大好きなかたにオススメ。